矢板玄
昭和電工に入社し、昭和10年頃に陸軍の電機技師として中国大陸に渡り、満州鉄道の開発に従事。後に児玉誉士夫の誘いを受けて軍属となり「矢板機関」を組織。上海、香港、南方戦線における物資調達に奔走した。昭和15年には支那事変における功績により、弱冠25歳で勲六等瑞宝章を受章。翌年帰国し、「聖戦技術協会アジア産業」(後の亜細亜産業)を設立した。戦後はGHQ顧問として民生に参画。後に三菱化成重役顧問。
矢板機関は児玉誉士夫が後見人となって設立したと聞いているが。
「児玉誉士夫? 冗談言うなよ。あの頃、児玉は、親父の仲間じゃ一番下っ端だったんだ。俺の後見人は、三浦義一。知ってるか? それに東条英機だ。だいたい児玉は日本人じゃない。」
親父(矢板玄蕃)と三浦義一が、大蔵省の迫水と組んで金銀運営会というのをやっていたんだ。その事務所がライカビルの4階にあった。戦時中に国が国民から指輪やネックレスなんかの貴金属を供出させたのは知ってるだろう。それを潰して金の延べ棒にして全部打ちに集まってくるわけさ。」
その金やダイヤモンドは何に使ったのか?
「金は戦時中は物資調達だ。ダイヤ以外は俺達の小遣いだよ。ダイヤは別にしてとっていた。あれは粉にして大砲の砲身の中を磨くんで貴重だったんだよ。ところがいきなり終戦で親父のところに山ほどダイヤが残っちまった。どうしようかと思っているところに今度は児玉誉士夫が大陸からごっそりダイヤとプラチナをもってかえってきた。そのダイヤを朝日新聞の飛行機で運ばせたと自慢していた。ある日、いきなり自分でトラックを運転してきて、これを隠しといてくれってプラチナを何本かとダイヤを一袋置いていった。残りはGHQと辻嘉六に渡すとか言ってたな。それでそのダイヤとうちのとを混ぜちゃったんだよ。一時は井鉢に三杯くらいはあったんじゃないか」
なぜダイヤを混ぜたのか?
「そのほうが都合が良かったんだ。どうせ最後には国に返すか、アメリカに取られるかだろう。だから一度混ぜて、いいのと悪いのを分けて、悪いほうをウィロビーに持って行った。いいのはとっておいて黒磯(栃木県黒磯市)の山の中に埋めたんだ。後でそれを児玉と山分けにした」
鹿地亘事件とキャノン
キャノン機関を有名にした一つの事件がある。昭和26年11月25日夕刻、藤沢市鵠沼で一人の日本人が数人のGHQ関係者に拉致された。男はそのまま車で東京に移送され、本郷の岩崎別邸に監禁。その後11月29日に川崎市丸子の東川クラブ(東京銀行の施設、戦後GHQが接収)に身柄を移され、さらに茅ヶ崎のC31号館、渋谷区猿楽町のUS660号館などを転々としながらおよそ1年を囚われの身として過ごすことになる。男の名は鹿地亘、当時48歳。一般にはプロレタリア文学の作家として知られ、戦時中は共産党の思想家として治安維持法違反で服役。その後、上海に渡り内山完造、魯迅などと交流した。また近年はCIC(対敵諜報部隊)の機密文書により、戦時中から大陸でアメリカ当局に協力し、OSS(米戦略情報局)に雇われていたことが明らかになった。(春名幹男著『秘密のファイル』)
 いわゆる「鹿地亘事件」である。後に事件はキャノン中佐の横浜の自宅のハウスボーイだった山田善二郎の証言により明らかになり、政界を巻き込む騒動となった。主謀者はキャノン中佐とビクター・松井准尉を含むキャノン機関のメンバーで、当時ソビエトに太いパイプを持っていた鹿地をダブル・エージェント(二重スパイ)に仕立てることが目的だった。キャノン中佐は、謎の多い人物だった。本名はジャック・C・キャノン。1914年、ドイツ系移民の子としてテキサス州に生まれた。父親は保険の外交員だった。
対ソ戦時下の国鉄輸送
国鉄利権 「戦後、国鉄の民営化という話を耳にしたことなかったかな・・・」「まあ、そういう議論はいつの世にもあったよ。造船業界や亜細亜産業でもよくそんなことを話してた。田中清玄とか四元義隆なんかは民営化論者だったね・・・」
四元義隆、1908年鹿児島県生まれ、東大法学部卒。学生右翼組織「七生社」を経て「金鶏学院」に入り、昭和7年2月9日の「血盟団事件」に参画した。海烈号事件の三上卓らが犬養首相を暗殺した「5・15事件」が起きている。吉田茂から細川護煕に至る戦後の歴代の首相、政権に絶大な影響力を誇った人物だ。
 四元が寵愛した政治家の一人に、中曽根康弘元首相がいる。ロッキード事件で中曽根の関与が取り沙汰された時、稲葉修法相に圧力をかけてもみ消したことを自ら認めている。国鉄が民営化されてJRに生まれ変わったのは、その中曽根が首相を務めた昭和62年のことだった。
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