トランプ大統領当選は2016年11月のアジア時間だった。その時のことを覚えているかね? 周囲が笑顔と拍手で当選を祝う中、トランプに笑顔はなかった。「うわっ、本当に当選しちまったよ、こりゃこれから大変なことになる」とでも言いたげな表情だった。

米国市場の夜間だったが、トランプ当選を受けての日本市場の動き11月9日のOpen to Close、一方、米国市場は11月8日から9日にかけてのClose to Openが、そのニュースを株価が織り込みに行った結果なのだが比較してみよう。

「トランプが大統領になってしまったーーー!これから大変なことになるーー!」と激しく動揺して下げたのは日本市場が一番だった。当のアメリカはほとんど変動なしで始まっているのにだ。実に情けないと思わんかね? Brexitの時もそうだった。この株価の動き、田舎臭いと思わんかね? 俺、田舎と田舎者、狭く愚かな世界での意思決定の中に、身を置きたいと思わない。

日本のように政策が不明確な状態の選挙で、民主党政権に何かを期待して株価が上がるなど田舎市場の極み。政策が明確だったとしても、従来は分配を変えるだけなので、軍需セクター売りの、医薬品買いで全体には影響ないというのが通例だ。ただ、トランプは法人税減税、これは官から民への所得移転なので全体にも影響する「政策」で、「法人税減税」で米国市場の株価は上がったと言っても過言ではない。

日銀がどう動くか?なんてのが株式市場の主たる話題とは、市場原理を無視した汚らわしい状態以外の何物でもない。製造業はまだ良い、日本の非製造業のドメっぷりは実に情けない。例えばソフトバンクG、あれだけ海外の子会社を持ち、相当積極的に海外事業もやっているという印象だろうが、「ソフトバンク」なんて企業名、誰が知ってる?バンクだから銀行なの?と思う奴もいるくらいだぞw また、製薬、通信、銀行をはじめとする金融機関、世界の誰でも知ってるブランドがない。しかしブランド力がある日本の製造業も先行きは暗い。今や中国でさえ、製造現場は他の東南アジアに奪われている。衣料品などの軽工業は中国でもMade In バングラデッシュなどが主流だ。早い所アップルのようにソフトウェアなどに転換しないと先進国の産業として維持するのは難しいだろう。

私が最も嫌悪をしているのは日本のIT系企業。そもそも時価総額のトップランキングにほとんど入っていないのも問題だが、日本国外での認知はゼロにも等しい。老舗の日立は聞いたことがあるが、ITというよりBtoBの重厚長大産業、日立を含め、ソニー、富士通、パナ、東芝、NECの製品を日本以外の家電量販店で見かけることはほとんどない。新興の楽天、LINE、サイバーエージェント、何してんの?って感じでしょ?

さて、「政策や選挙は株式市場全体には影響しない」とまで言っておいて何なんだが、米国市場、S&P500のオプション市場のImplied Volatilityのタームストラクチャーがどんな形をしているか知っているかね? 現在のところ11月や12月までのIVが高い。コンタンゴでもバックワーデーションでもない、6Mが一番高いいびつな構造である。すなわち、11月の米国大統領選の行方を不安視している、というマーケットコンセンサスだということだ。