ソクラテスの弁明がプライム・リーディングで無料だったから、適当に読んでいたら意外に面白かったので、2400年前と旧約聖書並みに古いが、「プラトンの国家」でも読んでみるかと、さっそくアマゾンでポチってみました。アマゾンの戦略通りの動き? 僕の印象ではアマゾンやYoutubeの「あなたへのお薦め」の精度は本好きの友人が一人増えたと思うほどに、的確なアドバイスで、とても気に入っています。

例えば、適当にYoutubeのあなたへのお薦めに従っていただけなのに、「ダン・アリエリーの行動経済学」の講義であったり、ヨーロッパで美術館が異様に安かったので美術館巡りをしていて、そこで飾ってあった絵は一体なんだったのか?とふと思いを巡らせただけで

ドラクロワ=絵画における3つの革命
https://www.youtube.com/watch?v=FrvWy61XOdE&t=1371s

こんなのに辿り着き、さらにそのお薦めを見ていくとさらに拡大し、それらを参考にしながら今度はアマゾンで「美術史」などのキーワードで本が出てきて…と無限に拡大できる。

ただ、アマゾンは、ほんの出来心で「エッチな漫画」を一度でもクリックしてしまうと、お薦めが、それ一色になってしまうので、言動には注意しなければならない繊細なお友達ですが。

「国家」全篇の構成

正義の定義-国家と個人における-(第2~4巻)
理想国家のあり方と条件、とくに哲学の役割について(第5~7巻)
哲人統治者のための知的教育
不完全国家とそれに対応する人間の諸形態(第8~9巻)
 理想国家(優秀者支配制)から名誉支配制への変動
 寡頭制国家と寡頭制的人間
 民主制国家と …同様…
 僭主独裁制国家と …同様…

概要のさらに抜粋だが、どう? これだけ見ても、ちょっと面白そうでしょ? 2400年前に民主制国家語るかね? ちょっと聞いてみようではないか。

ソクラテスの弁明では、ソクラテスが神々を否定し、ダイモーンなる邪教の推奨や若者の堕落の原因となったから…と処刑の理由が述べられているが、それが何なのかが、どうもわかりにくい。国家の方がより具体的でわかりやすいと思う。

老いについて

我々の大部分の者(ソクラテスと同じくらいの年寄り)は、悲嘆にくれるのが常なのだ。若いころの快楽が今はないことを嘆き、女と交わったり、酒を飲んだり、陽気に騒いだり、その他それに類することをあれこれやったのを思い出しながらね、そして彼らは何か重大なものが奪き去られてしまったかのように、かつては幸福に生きていたが今は生きてさえいないかのように嘆き悲しむ。老年が自分たちにとってどれほど不幸の原因になっていることかと、めんめんと訴えるのだ。

しかし、ソクラテス、どうもこの私には、そういう人たちは、ほんとうの原因でないものを原因だと考えているように思えるのだよ。なぜって老年が本当にそういったことの原因だとすれば、この私とてもその限りでは同じ経験を味わったはずだし、私だけでなくおよそこの年齢に達した人なら、みな同じことだろうからね。こういった事柄にしても、身内の者たちとの関係がどうのこうのということにしても、その原因はただ一つしかない。それは、ソクラテス、老年ではなくて、人間の性格なのだ。端正で自足することを知る人間でありさえすれば、老年もまたそれほど苦になるものではない。が、もしその逆であればそういう人間にとっては、ソクラテス、老年であろうが青春であろうが、いずれにしろ、つらいものとなるのだ。

民はいつの時代も、「老い」や「金欠」の”せい”にしているものだ。ちなみに全部は書かないが、このケバロスの意見に対して、ソクラテスが反論する。

「あなたがそのように言われましても、多くの人々はあなたのおっしゃることをそのままには受け取らないでしょう。あなたが老年を楽に堪えておられるのは、べつに性格のおかげなどではなくて、あなたがたくさんの財産を持っているからこそなのだと、こう考える事でしょう。」

と続いていく…面白いでしょう? 
ここでは「端正と自足することを知る」という非常に短い表現にとどめているが、この後の展開まで読んだ上ならば、この表現は、

後の「マズローの段階欲求説」の第5欲求、自己実現欲求を満たした者と、現在から遡れば拡大解釈できる。

もちろん、「マズローの言ってることは2400年前にプラトンが言っていた」とまでは言わない。だが、似たようなこと、その原型になるようなこと、今でも議論されているようなことと同じことを2400年前に議論していた、とは言えるだろう。今後、

「後のマズローである」

というような表現を多発していく。原始的な議論故に、現代の議論をいくつかかいつまんで読んだ後で、プラトンの「国家」を読むと、意外に広くカバーしていて面白い。マックス・ウェーバーの社会学、宗教観と経済学を同時に捉える見方を2400年前にしているのは「さすがはプラトン」だ。