シリーズ・哲学のエッセンス という副題を見るべきでした。著者の方はハイデガーを理解しているのかもしれませんが、あまりにも平易に大衆迎合した書き方をしているので、逆に全然わからないという。
哲学と人生論はどう結びつくか
「存在そのもの」は、長く哲学研究の対象でした。実体、つまり、真に存在するものは何か。ただ偶然に存在するものと、必然的に存在するものとはどのように区別されるだろうか。絶対的な存在とはなんだろうか。神のような絶対的な存在と、存在するもの全体との関係とはどのようであろうか、といった問題が様々な形で考えられ、様々な可能性が議論されてきました。そこでアリストテレス「形而上学」を端緒として、これまでの存在論的な哲学理論を研究することで存在論を論じることが可能です。「存在」についてどのように考えられてきたか比較考察することで、「存在そのもの」がについてどのような解明が行われてきたか見ることができます。哲学とは別にもうひとつ、「存在そのもの」が非常に具体的で切実な問題となる場面があります。たとえば、自分が深刻な病にかかった場合や、身近に死を体験した場合などです。このように哲学理論と人生論という二つの側面があります。存在論とはそのどちらでもある、そのどちらでもなければならない、つまり、哲学と人生論という二つの側面を必然的に結びつけたところに、存在論の意味があるのです。