ウィンホテルのロレックスショップでド派手な時計(1個300万円もした)を10個一気に購入した。お代は締めて3000万円也。ロレックス10個を質屋にもっていけば3000万円弱の現金になるかと思いきやなんと引取りの歩合は商品価格の45%だという。つまり1350万円だ。おそらくジャンケットがいくらか中抜きしているに違いないと思いつつ、バクチに狂っていた私は「最終的に全部取り返せばいいのだ」と深く追求はしなかった。
ブラックカードでこしらえた1350万円の種銭をもとに、私はバカラの大勝負に出た。借金3000万円をすべて取り返した上に、大幅な黒字に持っていくことができたのだ。そこで困ったのが質屋に持っていった時価3000万円のロレックスだ。こちらは勝負に勝って気をよくしているし、ギラギラのド派手なロレックスなど何の興味もない。ジャンケットのK氏には質流れにしてもらってかまわないと伝えた。買値が3000万円なのに私は1350万円しか受け取っていないわけだ。いくら何でも差額の1650万円がもったいなさすぎるということで、K氏から質流れに猛反対された。質屋からロレックスを10個回収してきてくれたK氏は、その中のピンクゴールドの時計に興味を惹かれたようだ。もともと質流れにしようとしていた時計の代金をいちいち徴収するのもせせこましい。彼にピンクゴールドのロレックスをポンとプレゼントした。残ったロレックスの時計はどうしたかと言うと、仕方が無いので日本に持ち帰ってきた。当然のことながらこれは税関で引っかかる。だが意外なことに2000万以上もの時計にかかった関税は10万円程度だった。このロレックスはマカオと日本を行ったり来たりしながら最終的に質屋へと還流していった。
無用の長物となったアメックスのチタンカード ブラックカードと言うとVIPや大金持ちの象徴としてあこがれの対象とされる。世の中にはブラックカードを超えるさらにVIPなカードがある。あるとき私はアメックスからチタンでできたクレジットカードを支給された。チタンでできているだけに金づちで叩いたくらいではこのカードはびくともしない。必要なくなったとしても、ハサミを入れることもできない。カードの後ろには磁気テープがついているのだが、なにしろチタンだけにATMで使うことすらできないのだ。「これは何のためにあるカードですか。キャッシングや買い物の枠が増えるとか、グレードアップされるのでしょうか?」と尋ねてみたところブラックカードと機能は変わりないという。カード会社の担当者が少々困った口調で、「お客様の中にはウォレットをズボンのお尻のポケットに入れているときにカードが折れてしまうという方もいるものですから…」と答えたのには笑ってしまった。本当はステイタスとしてこういうものをありがたがる者がいるため、カネ持ちの権威付けとして存在するのだと思う。
11年9月7日、大王製紙の連結子会社7社から資金を借り続けていた事実が社内メールの告発によって発覚してしまったのだ。就任からわずか数ヵ月後の9月16日、私は大王製紙会長を引責辞任した。大王製紙の連結子会社は海外に2社、国内には全部で37社ある。これら連結子会社のうち、7社から資金借り入れを行った(大王製紙本体からは資金は借り入れていない)。これらの7社ではいずれも私が代表取締役を務めていた。国内の連結子会社37社のうち、31社までは井川家、ならびに井川家の個人会社が過半数の株を所有している。その中でも特に私や井川家の持ち株比率が高い会社を選び、以下の1~7から借り入れを進めていった。合計106億8000万円。巨額の資金は「LVSインターナショナルジャパン」というカジノ会社に直接送金した8億5000万円を除き、すべて私個人名義の預金口座に振り込まれ続けた。