マリーナ・ベイ・サンズは単なるリゾートホテルではない。このホテルの中にあるカジノでは、ギャンブラーたちが大金を手にするべく、日夜しのぎを削っていた。なぜ私がこのゴージャスなホテルで20億円分ものチップを積んで勝負に挑まなければならなかったのか、それには理由がある。10年5月以来、私は大王製紙社長としてグループ企業から巨額の資金を借り入れる裏技を常態化させていた。その大半は、すでにマカオのカジノ「ギャラクシー」や「ウィン・マカオ」で失ってしまっている。11年5月の時点で、グループ企業から借り入れたカネの総額は実に50億円を超えていた。
「バカラで5時間かけて勝負した結果、500万円が1000万円に膨らんだ。ならば10時間かければ1000万円を2000万円にまで増やせるはずだ。運とツキさえ回ってくれば、500万円を5億円に増やすことだってできる。現に150万円を4時間半で22億円にしたことだってあるじゃないか。目の前にある20億円を30億円、40億円にまで増やし、今までの借金をすべて取り返すことだってできるはずだ-」
運と偶然性のみが支配するバカラの勝負に、私は全生命をかけて挑んだ。目の前に積まれた20億円によって、カジノ史上誰も成功させたことがない奇跡を呼び起こすのだ。そして私は伝説を作る。目の前で開きかけた地獄の釜を、わが強運によって轟音高らかに閉じてみせる。だがひとたび開いてしまった地獄の釜の蓋は、二度と閉じることはなかった。48時間の死闘が終わったとき、私は煮えたぎる溶鉱炉のごとき奈落で溶解していた。
確かに伝説の男にはなりましたけどね…。カジノ史上誰も成功させたことがない奇跡は来ないんですwだってご自身で書いている通り、20億円の勝ちを手に入れるまで100億円かかったでしょ?