ロシアの資源の保有と生産で圧倒的優位に立つわけであるが、大きな難題を抱えていることもまた事実である。ロシアの原油及び天然ガス生産の大部分を担っている西シベリア(原油の75%、天然ガスの88%)はロシア経済の中心であるヨーロッパ部から非常に遠く、開発条件と自然環境は共に大変厳しい。そのため石油・ガスの開発・輸送コストが著しく高まるという難題があり、現実に生産が減少し始めている。とくに原油生産の落ち込みが大きく、全ロシア的問題になっている。炭田開発も同じような難局下にあり、資源埋蔵量はあっても、商業的生産が可能な炭田は限られている。ロシアには西シベリア意外にもかなり有力なウラル・ボルガ油田地帯があるが、その中心に位置するのがタタールスタンやバシキールスタンで、両国とも共和国宣言を行って半モスクワ色を強めているのである。ロシア政府は両国の石油生産と販売をよく管理できなくなってしまった。カフカーズ山脈北麓のダゲスタン、チェチェン、イングーシでも少量であるが原油を産出している。しかし、この原油についてもロシアは管理権を失っている。ロシアのもう一つの大きな弱点は農業生産にある。ロシア農業の生産性は旧ソ連の中でも低く、ロシアは15共和国の中で最大の食糧移入国であり、外国からも大量の食糧を輸入していた。モスクワやサンクト・ペテルブルグのような大都市、シベリアの工業都市が北方に偏在しているため1年のうち半年は周辺農業に何も頼ることができないという難しさがある。旧ソ連において、主要農産物の一人当たり生産高が大きかったのはウクライナとモルドバで、穀物の単位面積当たり収穫量も高く、穀倉の名に恥じない。バルト三国は食肉、乳製品、ジャガイモの重要生産国で他の共和国への移出国であった。一方カザフスタンは穀物と畜産品、キルギスタンは羊毛、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタンおよびアゼルバイジャンは綿花栽培にかなり特化していた。
1993年発行の本、当時の資源価格ではこういう認識だったんですね。今じゃ中央アジアもカフカスもオイルと天然ガスのパイプラインが中国に向って走っているんだもんなぁ。