私はリラが警察の仲介でつとめたと証言した銀座の十里という焼肉店を訪ねた。昭和通りに近いビルの中にあるその店を訪ねて、私は二つの奇妙な事実に驚かされた。一つはそのビルの持ち主でもあり、当該の焼肉店の経営者でもある会社が、トルコ風呂のはしりをつくった東京温泉だということがわかったことである。もう一つは、そのビルの地下に東電不動産管理という東京電力の子会社が入っていたことである。1951年、銀座・松坂屋裏んいマッサージ嬢を配した一大ヘルスセンターの東京温泉を開業した許斐氏利が、戦時中、許斐機関と呼ばれる特務機関を率いて、アヘン工作などに深くかかわっていたことは知る人ぞ知る話である。その許斐一族が経営する焼肉店で不法滞在のネパール人が警察の仲介で働き、しかもそのビル内には殺された泰子がつとめていた東電の子会社が入っている。東京温泉が古くから風俗営業の看板をかけている以上、警察とのつながりは相当に深いはずだった。
事件当時空き地だった喜寿荘のすぐ裏手の土地はかなり大きな6階建てのマンションが建ち、入居を待つばかりとなっていた。このマンションは渋谷に本部を置く巨大パチンコチェーン店従業員社宅になるという。喜寿荘に隣接したスタンド形式のソバ屋は洒落た洋風居酒屋にかわり、井の頭線神泉駅の踏み切りをはさんで現場と反対側にあった戦前の花街の名残をとどめた検番の古びた建物は潰されていた。跡地には7階建ての分譲マンションが急ピッチで工事中だった。やはり踏み切りの反対側にあり、泰子がよく100円玉を千円札に、千円札を一万円札に「逆両替」したコンビニは、店を閉め改装工事に入っていた。泰子が人生で最後の客を取ったクリスタルはいかにも若者受けしそうなファッション感覚溢れた付近のラブホテルとは違い、ラブホテルというよりは連れ込み旅館といった方がぴったりきそうな、くすんだ建物だった。料金も休憩2時間で3000円と周囲のラブホテルに比べ、かなりの安値だった。クリスタルはすでに閉じられ、新しいラブホテルの建設が始まっていた。
渋谷のラブホ街はすごいよね。あんなに広い範囲、全部ラブホなのに金曜の夜は全部満室になるからね。恐ろしき人間の発情。安いホテルもあったねぇ。かなり市場原理が綺麗に働いていて、当時の俺でも、「ぇっ?」というくらい狭くて古い感じだったね。
被疑者ゴビンダが現場となった喜寿荘101号室の鍵を3月10日まで所持していることがわかったこと、被害者の女生と顔見知りで、事件前年の平成八年暮に被害者の女性とセックスしたことが被疑者の同居人のネパール人の証言からわかったこと、現場の便器内から発見されたコンドーム内の残留精液の血液型が被疑者と同じB型でDNAの型も一致することなど、被疑者を犯人とするのに合理的だった。
マハラジャからの帰り円山町のラブホテル街の道路に立っていました。彼女は私に会釈をして「セックスしませんか。1回5000円です」といってきました。ホテル代がないといったら彼女は「どこでも構わない」といいました。そこで私の部屋に行きました。粕谷ビルの401号室です。部屋にはドルガとリラが居ました。ドルガは彼女を見ると「この人とは前に何度もセックスしたことがある」といいました。ドルガが関係したことがあるというので私は先にやってくださいとドルガにすすめました。しかしドルガはリラに「お前が先にやれ」といったのでリラ、ドルガ、私の順でセックスしました。
ゴビンダは空室となっていて喜寿荘101号の鍵を丸井健から借りていた。ゴビンダが渡邊泰子と3度目の遭遇をしたのはそんな状況下だった。「1万円でお釣りをもらおうと思いましたが、渡邊さんがお釣りはないといったので、小銭で払いました。4500円くらいでした。」
渡辺さんはそれでOKしたのか?
「次に清算してくれればいいから、といってそれで許してくれました。」
この証言、本当かな? かなり厳しい人のように思えるがなぁ。どこでとかうるさくないのは理解できるが金額に対する妥協はありえんと思うがね。検察もこの点は裁判でついたようだな。なるほど。
弁護団の主張
第一に、101号室に捨てられていたコンドーム内の精液は被告人のものである可能性が強いことは弁護人も争いませんが、被害者の殺害とは何の関係も無い時に被告人が捨てたものであり、精子の状況は、被告人の供述に合致するが明らかです。第二に、被害者が所有していたショルダーバッグから検出されたB型の血液物質は裁判上の鑑定と呼べるようなものでなく、現場には被告人以外のものであることが明らかなB型の陰毛などがあり、B型であるから被告人のものであるとは言えない。第三に101号室のカギは唯一の根拠とも言える丸井供述が信用できないものであること。第四に、動機で金に困っていて401号室の賃料を支払いができない状態であったという点も、被告人はお金に困っていませんでした。第五に、被告人が犯行時間に間に合ったかどうかという問題も、検察官自身が唯一の目撃証人である杉田供述を信用していないこと。第六に被告人の事件発覚前後の言動もなんら不自然ではないし、特に口裏を合わせにいたっては、検察側が作り出した虚構であります。
東電OL殺人事件 (新潮文庫) 佐野 眞一 新潮社 2003-08 |
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