現行の監査役制度は、いわゆるクソの役にも立たない代物の制度であるといってよい。どこに問題点があるのか、それは一口に言って、監査役人選の人事権が社長にあるからである。なるほど法律上は株主総会の決議で選任されることとなっているがこれはあくまで建前であって、株主総会で社長が提案した監査役候補が否決されることなど、今だかつてなく、社長が人選した者が、当然のように監査役となるのが現実の姿なのである。
確かに、ガバナンスもクソもないんだよね。株主によって選ばれるなんて意識がある社長居る?
昭和57年の商法改正の主たる目的は、それまで株主総会が、いわゆる総会屋に蹂躙され一般の善良な株主が、年一回しか開かれない会社の最高の決議機関である株主総会で質問したくても、とてもじゃないが質問などできる雰囲気ではなく、残念ながら株主総会は総会屋の活躍の場であった。その一方策として、総会屋を排除すべく、利益を与えた会社側にも罪を問う利益供与の禁止と、従来一株所有であっても堂々と株主総会に出席できたのを1000株(単位株)以上所有しないと出席できない制度とし、これで総会屋は消滅し、株主総会が活性化するだろうと当初は思われていた。商法改正16年余を経過した今日でも総会屋は脈々と生き続けているのである。何故か、それには理由がある。昭和57年の商法大改正の主旨である株主総会の活性化が皮肉にも今では逆に非活性化をもたらした。その大きな現象の一つが決算期の三月集中化である。経営陣は、国の会計年度と合わせるのが統計数字を比較するのに好都合であるとか、その他いろいろ薄弱な理屈をつけて三月決算に変更したため、いまでは上場会社のなんと約90%の会社が三月決算となり、しかも株主総会は一斉に6月末の一定日の午前十時開催という誠に異様な状況となってしまったのである。
昭和37年頃は、総会屋はせいぜい数百人程度であった。それが高度成長に乗った部分もあるがみるみるうちに6000人前後に膨れ上がったのである。何故か、その主な原因は銀行が総会屋に対してお金をあたかも湯水のごとく出し、大手銀行では年間数億円も総会屋に出していたと言われていたのである。この銀行の安易なお金のばらまきにより、総会業を目指すものが急激に増加したのである。大手銀行では毎日早朝から数百人の総会屋が集金と称して押しかけ、対応に苦慮した銀行は順番を守らせるため、整理券を発行していたほどなのである。
銀行が取り扱っている商品は、「信用」だからねぇ。頭の中にしか存在しないモロイ商品を扱ってる都合上、色々大変なんだよ。
平成9年、総会屋・小池隆一が、野村、大和、日興、山一の四大証券会社から巨額の利益供与を受けていたことが発覚し、世間を騒がせた大事件があったことを覚えている方も多いと思う。おおかたの国民は「なぜあんないち総会屋に億という大金をむしり取られて黙っているのか。」と思ったに違いない。一口に言ってしまえば株主総会で会社の恥部をネタにして、社長が追及されるのが怖かったからなのである。
ぇっ? 総会屋の本で小池隆一に対する言及はこれだけ?
上場後の株式事務代行会社などのアドバイスを得て、今後株式上場後の株主総会のスムーズな運営について指導をいただく大物総会屋を選定し、社長自ら総会屋の事務所へ出向きお願いするのが普通であった。上場会社として一般株主、投資家に公開が義務付けられている決算発表、増資発表等の重要な事項について、証券取引所で記者発表する前に、幹事総会屋を高級料亭に招き会食をもち、事前に説明を行っていたのである。謝礼金は世間相場を参考にトップ同士で決定していた。
小物の総会屋は、賛助開始を図る手口として、嫌がらせをすることがあった。昭和57年の商法改正まではたとえ一株の所有であっても総会に出席できた。株主平等の原則により、その権利は保護されており、会社はわずか一株の株主に対しても召集通知、決議通知、事業報告書、配当金領収証、増資割当書等、すべて一様に扱わなければならない。この定めをよりことにかけだしの総会屋だとか新聞ゴロに過ぎない者だと考え、粗末な扱いをすると彼らは端株券100株を買ってきて、一株づつ、百人に分割要求してくるなどの嫌がらせの手段を取ることもあった。実際これをされると今まで一通でよかったものが百通になるので召集通知など前に挙げた生類の印刷代、郵送代、代行手数料など経費がかさむのである。株式の分割自体は法律違反ではないにしても、実務上は困ったことになるのだ。
東京港区に事務所がある情報会社が長時間となった株主総会の一部始終を記事にした刊行誌を週間で発行していたのだ。
ぉっ、これ良いじゃない。

ザ・総会屋―総会担当30年の経験者が本音で語る ザ・総会屋―総会担当30年の経験者が本音で語る
三島 仁一郎

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