タイを舞台にした小説です。
タイは東西冷戦時代には反共の砦として東南アジアの情報センター的な役割を担ってきた。ミャンマーに向かう道路の
要所に、キリスト教系病院が建てられているのもそのためで、病院内にはアメリカの諜報員がかならず一人や二人はい
る。タイ警察庁の外事部はCIAと情報交換しながら、ミャンマーの軍事政権、ラオスやベトナムの社会主義政権、中国が
後ろ盾になっていたクメール・ルージュ内の動向を探り、情報を集めてきた
。当然、タイ内部の反政府、反王政、共産ゲリ
ラにも目を光らせている。情報量は強大な権力を有するタイ国軍以上と言われ、警察庁の根幹を支える部署である。
桜新町・建築現場
山谷の朝は早い。宿に程近い玉姫公園に面した路上では、毎朝ドロ市が開かれている。ドロ市のいわれは泥棒した品
を売っているから、あるいは地べたに置いて売っているので泥がつくからとも言われているが真相は定かではない。山谷
通りまで行くといつもどおりに数百人の労務者たちが集まっていた。
うーん、日本にはそんなところがあるのですか・・・。
軍事コンサルタントは、PMFすなわち「Privatized Military Farm」と呼ばれる。軍事を専門とする民間企業で、必要な人材
を必要な数だけ、時に応じて集めればすむ。だから小資本でも成り立ち、会社も大きな器は要らない。必要なのはネットワ
ークだ。そんなPMFには、軍事縮小したロシアや東欧などから、多くの元軍人たちが参加している。もちろん目的は高給で
ある。近頃、世界中でこんなPMFができては消え、消えては生まれているらしい。年鑑市場規模は1000億ドルにまで広が
り、さらに倍増すると見込まれている。
「父は若くして亡くなったけど、最後までパレスチナの支援や反米闘争に資金援助をしていたわ。私は父の意思を継いで
虐げられるものの味方になろうと決心したのよ。時代が変わって、革命戦士でなくても、政治家でなくても、一国の命運を
左右する鍵を握れるようになった
。イラク戦争もアメリカ軍や多国籍軍だけではなくて、いろんな場面で多くのPMFがサポ
ートしていた。テロリストグループに拉致されたアメリカ人のドライバーなんかもそんなPMFの契約社員だし、ラムズフェル
ド国防長官に関わっていると批判されたのもPMFなのよ。今回もパキスタンのとある団体からの要請でタイに入った。イス
ラム独立解放戦線の組織強化の目的で、LSDのルートを開発したのも資金力が脆弱な彼らの資金源にするためよ。ネット
ワーク社会が進んでも、世界は決して一つの色には染まらない。移民社会のアメリカは、アメリカという一つの色を主張す
るかのように、戦争を始めたり、我を通してくるわ。でもね、世界にはいろいろな色があって良いと思うの。自然が地域によ
って違い、人間の肌や髪、目の色も違うようにね。」
「私はね、お父さんが日本人でお母さんがタイ人。でもね日本人になりたいの。タイ人はイヤ」
「どうしてタイ人はイヤなのかな」
「だって日本人のほうが賢くて、真面目に働くし、良い生活をしているでしょう。日本は先進国だし」
「へー、先進国なんて言葉、知っているんだ。どういう意味だかわかるかな
「うーん、豊かな国」
「タイもフルーツはたくさんあるし、食べ物も豊富よ。真面目に働いている人だって大勢いるじゃない。賢い人だっているし、
良い生活をしている人たちだっている。ナニジンとナニジンがどちらがいいかなんて、比べるのはばかげていると思うのね。
だって日本人だってダメな人はいくらでもいるんだから。例えばね、借金を300万円もこさえて、日本にいると借金取りに責
め立てられるから、タイに逃げてきた人だっている。誰かさんみたいにね。どう思う?そんな日本人のこと」
南部のイスラムグループが二分していたように、警察内部にも二つの勢力がある。一つは南部との融和的な政策を支持
するグループ。もう一つはイスラム勢力を徹底的に弾圧しようとする強硬派だ。第二次世界大戦後、長い間、南部の社会
保障対策は放置されるままになっていた。ところがタイが高度経済成長期に入ると、南部にも支援の手が差し伸べられる
ようになる。これにともない、それまで反政府活動を活発に行っていた共産ゲリラは沈静化していった。しかし世界的なイ
スラム過激派の台頭で、今度は共産ゲリラに変わるような形で、イスラム独立解放戦線が伸してきた。そこへアジア通貨
危機である。順調に動き始めたかに見えた南部支援が手薄になった。南部人にしてみれば支援が手薄になれば、裏切
られたという思いにつながり、それが反政府感情に火をつけた。イスラム独立解放戦線が、活動をさらに活発化させる要
因にもなった。かつて反共の砦だったタイは、今やイスラム過激派の侵攻を食い止める最前線になっている。タイにテロが
広がれば、イスラム過激派は自信を深めて、インドシナ全域、フィリピン、インドネシアとさらなるテロを画策するに違いない
のだ。
あっ、この本も「テロ・マネー」ダグラス・ファラーを引用してる。
有名な本なのかな?

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