「シンガポールは煙草が高い。一箱12SGDもする。」
とある友人が言った。
「お前の近所なら半額で買える。道端で売ってるだろ?」
私が住んでいるところの近所には、シンガポールのいわゆる赤線地区が存在する。
これはもちろん政府に認められた特殊地域で合法的な存在である。
しかし人口400万人という都市国家シンガポールは、元々の人口もさることながら、一人当たりGDPは
日本を越えるほどの所得水準であり、そのような職業の担い手が極度に不足している。
ここではあえて、ブス国家シンガポールと揶揄されている現状で、国内調達では需要に応えることのでき
ない珍獣動物園化してしまうことを防ぐ理由もあるということに触れるのは避けよう。
政府として、わざわざそのような職業の方々のためのVisaまで用意し、近隣諸国から国内調達よりも
“優秀”で安価な労働力を誘致し、政府管轄下で運営されている。
だが同時に、その特殊性に引き寄せられ、欲望渦巻く特殊地域内で一儲けしようと様々な人たちが
集まってきており、政府公認以外のビジネス機会の創作にいとまが無い。
モスク・寺院・教会が立ち並び、街を歩いている人を見れば、宗教・民族が様々に入り乱れ、法律など
気にしたことも無いような顔をした人々が行き交い、その無法地帯ぶりを感じることができるであろう。
従来の煙草税を支払わずに煙草を買う行為は違法である。
シンガポールで売られている合法的な煙草には一本一本に税金支払いましたというSDPCというスタンプ
(多分Singapore Duty Paid Cigarettesの略)が押してあるという念の入れようなので、
スタンプなしが表沙汰になると税金と罰金が科せられる。
しかし、あまりにも高い税金ゆえに、このようなOn-Shore Tax Arbが横行している。
この例のように、無法地帯は、Global Arb(GlobalizationとTax Arb)の恩恵が受けられ、
ことと次第によって、とても利用しがいがあるのだが、
無法地帯=法が及ばない地域=違法行為 なので多少大人じゃない部分がある。
私としては、もっとスマートで合法的なアンタッチャブル領域を考えたい。
これを無法地帯と区別した治外法権領域と名づけよう。
治外法権領域は赤線だけに限らない。
大学・宗教法人構内、大使館、米軍基地(日本では)など、国家権力の集約たる警察権・徴税権が
及ばないなどの特殊領域が、身近に存在する
ことに気付く。
これらに違法性を感じる読者少ないだろうから、合法的なアンタッチャブル領域、治外法権領域と呼ぶにふ
さわしい。特に大使館、基地などは国家を超える存在であり、まさに、陸上のOff-Shoreなのである。
小さな治外法権領域の支配面積と支配権力を拡張していくと、特別行政区そして国家設立(国家主権
の取得)へと発展していくことになろう。
シンガポールは国の成り立ちから考えても、民族問題・民族差別を利用し、マレーシアの治外法権領域が
発展・拡大し、国家として分離・独立したと捉えることができよう。
治外法権領域は往々にしてハイソな世界には転がっていない。被差別対象として蔑まれ、どんなに小さく・
汚い領域であったとしても、それを見つけ、我が物にし、一つ一つ積み上げていくプロセスが必要なのである。
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