私が知っている香港とは違う香港が書かれている。香港における差別・被差別構造や最貧困層の生活に焦点が当たって
おり、元居住者としては非常に興味深く読める本である。

転がる香港に苔は生えない (文春文庫)
転がる香港に苔は生えない (文春文庫)
文藝春秋 2006-10
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九龍城塞 日本では九龍城というあで認識している人が多いと思う。ここは麻薬や賭博、売春といった非合法活動が
公然と横行し、密航者や犯罪者がゆきかう魔窟として、香港はもちろん世界的に有名な場所だった。もともとここは文字通り
城壁に囲まれた、清朝から派遣された官史の駐在所だった。1898年、イギリスが清朝から九龍以北の新界を租借した時
九龍城塞はその範疇に含まれていなかった。そのため、九龍城塞は、イギリス領にあってイギリスの統治が及ばないという
治外法権的な空間
として、存在し続けることになった。
そう治外法権。そこにビジネスチャンスの臭いアリです。
台北には台湾じゅうからいろんな人間が集まっていた。大都市と田舎の両方を知っているから、視野が広いんだ。何かを考える
時、台北じゃなくて台湾全体のことを考える。国家のことを考える習慣がきちんとある
んだ。大陸だってそうだ。大陸の学生は
自分たちが国家の将来を考えなければならないという自意識をきちんと持っている。でも香港人はそうじゃない。香港のことしか
見てないし、香港の将来は自分が考えなきゃいけないという自意識はほとんどない。香港人は植民地統治下で政治に参加
できない状態が長かったから、政治に興味が無いのは仕方がないという人たちもいる。でも政治に参加できないという状況は
台湾だってつい最近までそうだったし、大陸はさらにそうだ。それは良いわけに過ぎないよ。
どこかの国にも言いたいです。まさにそれが教育なのです!
僕はアメリカのロックを聞いて育ったのに、香港ではイギリスのポップスが主流なのも気に食わなかった。やっぱり香港って
イギリスの植民地なんだよ。何より驚いたのは、香港の学校があまりに英語を重視していたこと。香港では、中国語はロクに
書けなくても英語の話せる人間が高級で有能だと思われているんだよ。中国人なのに馬鹿みたいだと思った。
套房(とうふぉん)とは日本語風に言えばワンルームのことで、自分専用の流し・トイレ・シャワーがある。
梗房(がんふぉん)トイレ・シャワー共同
床位(ちょんわい)ベッドだけが自分のスペースというものでイメージは寝台列車に近い。私的空間と公的空間を分けるものは
カーテンのこともあれば、鉄柵、板、いろいろ種類がある。鉄柵でしきった鳥籠のような部屋は籠屋(ろんおく)と呼ばれ、香港
の貧困層が暮らす住居の代名詞にもなっている。
もともと唐楼(とんらう)の一単位はそれほど小さくは作られておらず、最低でも400sqフィート(37平米)くらいの広さがある。
自分で住めば、最低限広くて快適だが自分には1銭も入らない。一世帯に貸せば5-6000元の家賃収入になる。それを
4つの套房にすれば一部屋3000元、つまり12,000間になる。ところが梗房を6部屋作れば一部屋2500元として
15,000元の収入。いっそのこと一番投資金額が少なくて住む床位を20個作ったら、1個1500元で回収金額が
30,000元まで跳ね上がる。違法建築のまかり通る香港では、一つの単位を細かく割って悪条件で貸せば貸すほど
回収金額が膨れ上がるという奇妙な可能性がある
。日本人が外から見たらこんな崩壊寸前のアパートの一部屋を持った
ところでなんぼの財産になるのだろう、と思うかもしれないが、快適さより安さを選択するしかない人間が確実に確保できる
この街では、荒れ果てたアパートの一部屋が貴重な財産になりうるのだ。
これすごすぎじゃねぇか??
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