50% Knock-In Putを売るのは、いかにも魅力的に見える。(Touchしないから安全という意味で)
しかし、Putを買った我々としてはモデル通りに、そのプレミアム分は本当に実現できるか。
一本調子で上がっていたら、間違いなく負けだと思う。株価の上昇により、Barrierとの距離が遠くなれば、
Option価値の下落はなかなかヘッジ出来ないと思われる。

が相談者の相談内容である。
私の回答を述べていこう。
>一本調子で上がっていたら、間違いなく負け
一本調子の定義によるが、毎日一定率で上がるとVolatilityは0%だからこれに近い動きになると当然、
Trading VolatilityとRealized Volatilityとの差でVegaでやられることになるだろう。
>barrierとの距離が遠くなれば、optionの下落はなかなかヘッジ出来ない
は、少しおかしい。
それができていないとなると、Deltaが合っていないことを意味する。
この言葉からはそもそもBarrier Optionの理論値に対する疑念が感じられるので、その不安を解消し
たい場合、まず幾何ブラウンを想定して、Knock-InのHedge Simulationをやってみるといい。
幾何ブラウンの株価、Knock-In Optionを幾何ブラウンベースの解析解のDeltaを使い、
株(Forward)だけでKnock-In OptionのHedgeをする。
Volatilityは既知。すなわち、
Trading Volatility,(ExoticのPremiumを計算する時に解析式に入れたVolatility)
Hedge Volatility,(HedgeのDeltaを計算する時に解析式に入れたVolatility)
Realized Volatility(幾何ブラウンの株価を発生させる時に使ったVolatility)
の3つは一致するとして良い。
1日1回の頻度で株をリバランスするとしよう。
こうやって書いた時点で、既に現実とモデル想定の差が明らかになり、問題点が浮き彫りになっているのだが
引き続き理論上の理想状態の話を続ける。
理論上発生させた株価の場合、完全に幾何ブラウンに従う。
オプションと株によるHedged Portfolioの損益は殆どのシナリオで0に近い数値になるが・・・
そうならないシナリオがある
。どんなシナリオか読者諸君は想像つくかね?
満期近くに、Knock-In直前の株価になったシナリオである。
その時、様々な条件によるが、解析解のDeltaが400%とか500%を超える時もある。
一日一回の頻度でリバランスしているので、その時のO/Nで出るHedge Errorで損益が決まってしまう
ここまでお膳立てした完全理論の世界であっても、株価の不連続性(Daily Hedge)だけで、Riskがある。
でも逆に言うと、そうならないシナリオでは極めて安定した収益になるということがわかるので、この理論世界では
株だけのHedgeが非常に有効であると思ってよい。
また、このSimulation結果は、ポジションは基本的に小僧が見ておけばよい。
バリアが近づいてきた時だけ、俺が見る。俺は、普段、寝てて良いということを暗示している。
長くなったので現実世界との理論世界の差についてはまた次回。
【Vanilla・幾何ブラウン】
2009.09.29: Black-Scholesは間違っている
2009.06.30: FX Optionの対称性
2009.06.16: VAR SWAPのGamma+VanillaのGammaでGamma Neutralになるか?
2009.06.09: お前VEGAの意味わかって無いだろ?
2009.05.12: FX Optionの 25Deltaって?
2008.08.13: Vanilla基礎 GammaとVolatility
2008.08.12: Call Optionと金利ヘッジ問題 
2007.12.10: 金利0、配当0(0Drift) ATM Call のDELTAは50%? 50%超? 50%未満? 
2007.12.01: 初めて会った時から好きだった