債券の利落ちについて議論していた時に、私の同期のL君がジュニアに言いました。
L君「デリバティブのプライシングにおいて、Cash Flowを見落とすというのは、起こりえない。
デリバティブの本質はCash Flowの組み換えなのだから。」
私 「ちょっと待って。それはいかにもFixed Income(FI)の発言だね。
デリバティブの本質は、この株をいくらで買いたいか?ということにある。
Cash Flowの組み換え?ガンマ無き者はデリバティブに非ず。」
と間違ったことを言いながら、思わず割って入った。
L君「FIフロアにおいて、ガンマという言葉はほとんど聞かれることは無い。
全てのキャッシュフローを書き出し、それを割り引く。
それが基本であり、デリバティブはそこから始まっている。」
私 「確かにデリバティブという概念を確立したのはFIの人かもしれない。ISDAなども極めて
FI中心の発想で作られているが、FIデリバティブがデリバティブの中心と思うなよ。」
とジュニアに語りかけつつ、もう止まらない。
「俺が思うに、エクイティ・デリバティブの歴史はFIよりも古い。
例えば、伝説の相場師ジェシー・リバモア。
欲望と幻想の市場―伝説の投機王リバモア エドウィン ルフェーブル Edwin Lef`evre 林 康史 東洋経済新報社 1999-04 |
彼が活躍したのは、場外馬券上ならぬ、場外株式取引所。
株式市場から流れてくるテープを読みながら、証拠金を預けて、上げ下げに張る。
外れれば、証拠金は召し上げで、当たれば差額をもらえる。
これは、Knock-Out Optionに他ならない完全なOTCデリバティブ取引で、ヤクザが仕切っていたか、金融機関が仕切っていたかが違うだけだ。
株式市場が存在と供に、それを元に博打をハル奴は必ず居たはずだ。記録こそ残ってないかもしれないが、エクイティデリバティブの歴史はFIよりも古いはずなのだよ。
これはキャッシュフローの交換か?将来の株価に賭ける博打こそがデリバティブの原点よ。」
と猛烈ラッシュ。思わずジェシー・リバモア出しちゃったよ。
L君の名誉のために言っておくと、彼は割引率、スワップ、クロスカレンシースワップ、キャップ・フロアー、スワップションという流れで、基礎からキチンと理解している人です。いきなり超エキゾチックをわけもわからずボタンを押してプライスしていたわけでもなければ、ガンマという概念がわかっていない人でもありません。
優秀だし、尊敬できる。ただね、たま~に、FI的発想が出たりすると思わず噛み付いちゃうわ。