新オプション取引戦略の考案 1/3~暴落対策の難しさ

新戦略をダンシングドラゴンとする。このダサいネーミングセンス良いでしょ? 真面目っぽくて。当然だが、ダンシングドラゴンなんていうオプション投資戦略名はこの世に存在しない。俺が去年考えて、最近命名した戦略だからだ。
2013.09.26 S&P500のオプションも、はじめちゃいました
で書いているということは、実際の時間軸では記事発表の一ヶ月前には私は始めているので9月頭くらいから米国市場におけるオプション取引を始めている。(思い出した、フィリピンで遊んでいたので、書類、手紙等の手続きが進まず、開始が遅れたんだw)
2013.06.10 初めてのオプション取引 1/2 ~口座開設・取引まで
上の記事で
「オプションをやるからには、先物で代替できるようなエクスポージャーは意味がない」
と述べているように、私にとってオプション取引の意義は、手短に言えば暴落対策である。私が暴落対策に固執する理由は、プロ(=証券自己を含む機関投資家)として取引していると、暴落対策を講じるのが難しく、何度も悔しい思いをしているからである。プロが暴落対策を取れない理由は、組織の事情によって多少異なるが、金融機関の場合は資本効率、リーマンショック以降のバーゼル3対応で最近はさらに厳しい資本効率、ヘッジファンドの場合はマーケット・アウトパフォームという使命を背負っており、ことの本質は、暴落対策という”保険”にカネをかけることができないというのが共通の事情である。
それどころか、プロは逆暴落対策、つまりプロは資本効率の追求やマーケットアウトパフォームのために、暴落対策保険を売らざるを得ないという事情がある。サブプライム問題や中国の陰の銀行問題などが主たるものだが、基本的にローンという銀行の生業は、逆暴落対策、リスクを取って金を貸すという宿命である。もっと拡大すればそもそもリスクを取って事業をするのが企業の役割なので、その逆の暴落対策をとることは、そもそも事業活動として矛盾するとも言えるかもしれない。またCDSやノックインプットを売るといった金融商品など、わずかなアウトパフォーム、すなわちポジティブキャリーの創生を求めて、将来の見えざる時限爆弾を引き受けている例である。金額加重で言えば、市場参加者の9割がポジティブキャリーを求めてレバレッジをかけているので、大暴落が引き起こされる。


私がアマ(=個人投資家)として、市場に参加する時、最大の強みは自分で意思決定できるということにある。ただしレバレッジを使うとその限りではないが。暴落時にポールソン(注:サブプライムCDSで儲けまくった男)ほど勝つのはリスクを取りすぎだとは思うが、0%以上であれば圧倒的有利。暴落時の現金はとても強く、バーゲンセールで大量に株を買える。この阿鼻叫喚の地獄を心待ちにする考え方は業界内では、忌み嫌われていて、ジェシー・リバモア(世界大恐慌)やソロス(イングランド銀行ポンド切り下げ)が犯罪人扱いされていたり、プットやショートポジションが嫌いという感情論が存在したり、下げのことを”調整”と呼ぶ始末である
さて、個人投資家の暴落対策というと諸君らは何を思いつくだろうか?
安易な答えは、先物売り、プットの買い、少し考えている場合で、国債の買い、現金保有などが挙げられるであろう。しかし、上げ相場はとても長い。09年3月に底をつけたS&P500は、ギリシア危機や欧州債務問題で多少の下げはあったものの、基本的にはすでに5年以上も上昇を続けている。基本的にデルタロング(株の買いポジション)を中心に私がリスクテイクしていたのは08年~13年の5年間。ちょっとアマ・初心者には難しい記事だが、
2014.02.25 株のBuy&Hold戦略が持つGamma Long性
もちろん2014年現在でも株式投資比率は40%程度を推移しているが、上昇相場で株式投資比率(リスクアセット率)を減らすと、株価が最高値更新中に大量のキャッシュが余ることになる。
2014.01.06 2013年の投資一族 勝つこと、勝ち続けること、それが一番大事
で上昇相場時の選択肢を7段階に分けて記述しているが、プロだった時代はデリバティブ取引規制があったので、個人資産に関しては、キャッシュや国債を中心に暴落対策をしていたが、自由な立場wである現在は当然、デリバティブを用いる。具体的にどのようなポジションか言及するのを忘れていたので、今ここで書くことにしよう。こんなのは企業秘密でもノウハウでもなんでもない。仮に諸君らがこれを読んで真似をしても、私と同じようなパフォーマンスやポジションにならないことがわかっているから書けるのだ。例えば、コールスプレッドを中心に取引していると言っても、売りか買いか、期間、行使価格の起点終点などあまりにも組み合わせが多すぎて、各プレイヤーの癖を殺して取引することは不可能だからだ。それほどまでにオプションは多彩なのが深く面白いところだ。
08年~09年当初に暴落対策を講じるのは愚の骨頂なので、私が始めた時期、2013年8月末から考えてみよう。当時のS&P500は約1650ポイントなので、08年から考えると相当にリカバリーした水準ではあるが、現在は約2000ポイントであるから、13年8月末から1年間で約20%という激しい上昇である。仮に先物で、暴落対策費のご予算フルヘッジをかけていたら-20%となる。ご予算フルヘッジとは、例えばご予算100持っていたら、100相当の売りを建てることになるが、この20%上昇の過程で資産総額は80になり、先物エクスポージャーは-120になるので、ご予算のフルヘッジを保つためには-80しかポジションを取れないので、約1/3の先物エクスポージャーを減らす損切りを迫られる。これが後、何年続くかわからない長い上昇相場で、先物のショートで暴落対策を講じることが如何に無謀なことか、お分かりいただけたであろう。
読者諸君はまず結果を知りたいだろうから、私の暴落対策費のグロスリターン(基準値10000スタート)とS&P500の1年間の推移をグラフにしてみた。
SPX-Options-20140825.jpg
結果だけ数値で書けば、S&P500は+20%の上昇に対して、グロスは+9%である。グラフの形を見ると、S&P500にほぼ連動し、デレバレッジでS&P500をロングしているように見えるが、注目は今年に入ってからの2点で、S&P500がストンと落ちた時に、グロスリターンがわずかにプラスに動いている。ダンシングドラゴンが完成形に近付いている現われなのである。
ダンシングドラゴンではなく、単純なプットロングで暴落対策をした場合はどうなるだろうか? プットでノーショナル・ベースでご予算フルヘッジするとすると、1年のプットは指数の約10%のプレミアムだったので、最大損失の場合でもご予算は100から90に減るだけだが、この1年で、その10%のプレミアムはやはり3%近くまで落ち込んでいるので、93、-7%ということになる。株式市場は+20%の中の-7%である! 私の後輩などは何も考えずにSPDR(S&P500のETF)をロングしているヤツに-27%もアンダーパフォームすることになる。これを何年続ける? 絶対金額的に同じエクスポージャーを取り続けると10年連続の上昇相場が来たら、全てを失うので、暴落対策はそこで強制終了(もっとも株を売って追加すれば良いが)。5年であってもプットを買い続ければ、-30~-40%やられ、仮にピークから-50%の大暴落が起きてくれても、取れて+50%程度であろう。やられた分を足せば+10%にしかならない。-30%程度の大暴落ではマイナスになってしまうという厳しい戦略で、それほどまでにタイムディケイとデルタショートは厳しいのである。
暴落対策は、先物ショートだと-20%、1年プットロングだと-7%というこの1年の推移で、暴落対策でありながら上昇についていかなければ、ポジションの維持は実際には厳しいということを知っているゆえのダンシングドラゴンの+9%が如何にすごいか諸君に分かるか?
プットを買って、さらに先物も買ってガンマトレーディングすれば多少はマイナスは緩和されるが、カバーできるのはデルタ分程度で、直近IV・HVが10%未満のS&P500においては、VegaとThetaで確実にマイナスとなろう。ATMのプットでガンマトレーディングをすると、Deltaは約0.5=50%なので、暴落時のリターンは半分。だからプット買い+ガンマトレードは、必然的にエクスポージャーをネイキッド・プットロングに比べて数倍に増やさなければならないので、VegaやThetaによる損失はプットロングに近づいてしまう。
ではどうやって、暴落時に、暴落対策費用に対するリターンを落とさず、上昇相場にもリターンをプラスにするのだろうか? わかるかね? 引っ張るなー、俺も。答えは既に何度も言ってるんだけどね。
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