IPO投資は儲かるか?
IPOに投資するのは宝くじを買うのとよく似ている。一握りはとんでもなく成功するだろう。例えばマイクロソフトやインテルだ。1986年マイクロソフトが上場した年、この会社に投資した1000ドルは、2003年末には289,365ドルになっている。インテルが上場したのは1971年10月で、1000ドルが1,900,000ドルになっている。だがIPO銘柄を無条件に定期的に買うなら、既存銘柄で運用する場合に比べて、運用成績は大幅に低くなるだろう。調査では1968年以降に上場した約9000銘柄を対象に、買い持ちした場合のリターンを調べた。上場月の月末の価格か公募価格かのいずれかで購入し、2003年12月31日まで保有すると想定した。大成功する勝者もあるにはあるが、そうでない敗者の数が、どうみても多すぎる。IPO投資家の運用成績は全体に、市場平均を年率2~3%下回っている。
IPO市場が高騰する時
新規発行株を買うにあたり、間違いなく最悪の時期は、IPO市場が沸き立っている時だ。こうなると投資家は「絶対に買い」といわれるセクターの銘柄ならなんでもいいと言い始める。IPO市場が沸騰するのはバブルの最中だ。1990年代のハイテク・バブルでもそうだったし、1970年代後半のオイル・バブルのときもそうだった。新規公開ラッシュこそ、バブルの明らかな兆候と言っても良いくらいだ。
新興企業とは、起業家とベンチャーキャピタルと投資銀行にとっては、途方もない利益の源泉となる。だが、その株を買う投資家にとっては、そうはならない。初物をつかもうと熱狂するあまり、経済成長を牽引する主役に、過大な対価を支払うからだ。『ウォール街のランダム・ウォーカー』の著者、バートン・マルキールはこう述べている。「IPO株の主な売り手は、その会社の経営陣だ。経営陣は会社が波に乗った絶頂期に売り出そうとタイミングを見計らう。絶頂期とはつまり、目下の流行り物をめぐる投資家の熱狂がピークを迎える時だ」
>うんうん。俺のバブル警告シグナルの一つはIPOの数だ。現在は黄色信号、それは日本市場だけ見ていてもわかる。サントリー、西武、リクルートの上場は、日本経済界の重鎮たちが、株を売っていることを示している。信号が赤に限りなく近いオレンジに近づく時は、大蔵省(現在は財務省w)の売り、ゆうちょの売出や東電の政府保有分の買い戻しが入った時だ。すでにJTや米国財務省のAIGの売りは実現されている。私は自分自身の相場観を信じない。これら成功者や卓越した機関の動きを参考にしている。
1990年代半ばまで、新規上場する企業は黒字転換して数四半期は経過しているのが通例だった。この慣行が崩れたのは1995年、ネットスケープが上場した時だ。当初営業損益こそ赤字だったが、売上は8500万ドルに達し、なお急激に伸びていた。だがブームが加熱するうち、利益どころか売上水準までだれも気に留めなくなっていた。これは破滅へと至る処方箋だ。IPOの中でも売上5000万ドル未満の銘柄の運用成績は壊滅的にひどい。
IPOのバリュエーションの高さ、あるいは過大評価の甚だしさを競うなら、一等賞はコービス・コーポレーションだ。インターネットのトラフィック管理向け製品を設計する同社は、2000年7月28日に上場を果した。公開当時、売上は1ドルも立っておらず、7200万ドルの営業損失を計上していた。それでも取引初日に時価総額は287億ドルに達した。全米上位100位以内に数えられる規模だ。コービスは上場数週間後に114.75ドル、時価総額にして380億ドルでピークをつけ、のちに0.47ドルまで下落した。実に99.6%の下落だ。
ウォール街には、設備投資こそ生産性革命の源泉と見るむきが多い。だが実際には、設備投資の大半は投資家に低いリターンしかもたらさない。主要10セクターの中で、設備投資対売上比率が突出して高いのは、電気通信セクターと公益事業セクターだ。1957年から2003年までの平均でみると、電気通信セクターの設備投資対売上比率は約28倍、公益セクターでは25倍、S&P500全体では10倍以下となっている。運用成績が高いグループを見ると首位のヘルスケアは0.7倍、2位の生活必需品セクターではさらに低く0.44倍と10セクター中最低となっている。
> 私の場合はフリーキャッシュフローを見ているのは似たような要因による。
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