Q1.A株とH株のバリュエーションの関係
今日は何とか銘柄のH株が割高で売り、A株は割安で買いとコメントがあるが、その割高割安の根拠は?
アジア在住読者諸君には眠い話だが、一般読者のために説明しよう。
中国の株は中国On-Shore上場のA株と香港Off-Shore上場のH株がある。
配当受給権や株主総会での投票権は等価で取引通貨がCNYかHKDかで異なる。
通常、株のバリュエーションは、P.E.などで評価することが多いが、複数上場の企業の株価の理論的な
バリュエーションの関係は株価x通貨がイコールの関係で良い。
基本的にはA株が高く、H株が安い。このケースでは、
場間Arbitrage=複数上場の企業の株価x通貨に差異がある場合、高いほうを売り、安いほうを買う
が様々な投資制限により限定的となるので、価格差が存在する。それが彼らの言う割高割安の根拠である。
H株は扱い易く、通常の株式市場と同じと考えてよいが、A株に関して言えば
空売りができないこと、先物も無いことから、Short Position(売り)を作ることが難しい。
これにより、A株の株価はH株よりも、高くなりやすい傾向がある。
一方、A株買いにも外国人投資規制があるので、A株を買おうにも買えない人はH株を買わざるを得ないことから
今度は逆に、H株の株価がA株よりも高くなりやすい要因も同時に存在する。(インド株vsADRなどはこれが多い)
Q2.例えば、割安のものだけ拾って、割り高になったら売るって運用していたらインデックスに勝てると思う?
インデックスは香港と中国の平均とする。
難しい。所詮Spreadなので、素Longでどれだけ回復してるか思い出せば厳しいのは明らか。
A株とH株のバリュエーションの相違はHang Sengが指数にしており、価格比のFree-Float-Adj加重
であるから指数値が115であれば、全体的に15%A株がH株より割高と言って良い。
http://www.hsi.com.hk/HSI-Net/HSI-Net
に載っている。ロイターだと.HSCAHPI、BBGだとHSAHP Indexで閲覧可能だ。
Q3.インデックスが115としたら、15%はいわゆる流動性プレミアムで、15%以下の銘柄はA株が割安と言えるか?
この比率IndexのChartを見れば分かるようにかなり変動するから15%は今の流動性プレミアムととらえない
と危険で何%収束するという基準が無いため、Indexとの相対比較で、15%以下は割安とは言いにくい。
ではここで具体的な個別銘柄の比率を詳しく見てみることにしよう。
上海上場しているA株と香港上場のH株を比べて、
A株が買われてる(A株が高い)のは
338 HK Equity Sinopec Shanghai Petrochemical Co Ltd 423%
2727 HK Equity Shanghai Electric Group Co Ltd 317%
991 HK Equity Datang International Power Generation Co 303%
358 HK Equity Jiangxi Copper Co Ltd 245%
386 HK Equity China Petroleum & Chemical Corp 206%
で、一方、A株安いのは
939 HK Equity China Construction Bank Corp 97%
1186 HK Equity China Railway Construction Corp Ltd 96%
3968 HK Equity China Merchants Bank Co Ltd 95%
2318 HK Equity Ping An Insurance Group Co of China Ltd 92%
2628 HK Equity China Life Insurance Co Ltd 89%
1398 HK Equity Industrial & Commercial Bank of China 89%
となる。
中国で金融業は評価されないのか?非中国人に金融業が評価されているのか?はわからないが、金融がAでは安く、
資源が強い様子がはっきりと見てとれる。
中国株にはUnlistedの政府保有分があり、その影響かと思いきや完全にセクターで判断されているように見える。
Q4. A-H Spreadの戦略についてどう思うか?
Recommend Angang Steel spread trade Long A vs Short H.
Targeted entry level for A at RMB 11.84 and selling H at HK$ 15.18
Targeted exit for Angang Steel spread at 15% premium,
its 12-month average ratio level.
これはシンセン銘柄であるが、言ってることは流動性プレミアムの平均回帰期待である。
はっきり言えば、その平均回帰には何の根拠も無い。短期ではどうなるかわからないし、長期で上昇トレンド
が出た場合、A株が爆騰しやすい傾向が”過去にあった”が、A株Longのポジションなので安心な気がする。
という気のせいとも思える期待を、自由化でArbitrage FreeになりSpreadが0に落ち込んだり、あるいは投資
制限が無いH株に中国成長期待の投機資金が流れ込み大幅にH株が買われるリスクを背負いながら取るの
は私の観点では戦略とは言えないものである。
【市場概観】
2008.10.15: 製造業至上主義的産業構造分析
2008.07.17: 車業界勢力図
2008.06.19: 原油先物の取引高
2008.01.14: またも出た 異なる時価総額ランキング
2007.12.29: 時価総額の計算方法
2007.12.21: 小型株は一部割安感有り
2007.11.30: 中国株はチキンレース
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