オプションのリターンやリスクの定義は難しく、多かれ少なかれ、主観的要素が入らざるを得ない。2015年の成績を振り返っていて、オプションが入ると注釈をつけたほうが適切なのだが、その注釈が長すぎて、全体の説明の要旨がぼやけてしまいそうだったので、別途、本日、説明することにする。
リターンから説明しろ、という気持ちは分かるのだが、まずはリスク認識からw
1.リスクアセット比率
私の場合は金融資産のみなので、総資産のうち、どれだけ株に投資しているのか? というリスク認識について。
現金と株だけなら、その時価で比率を計算すれば十分であろう。しかし、先物やオプションなどのデリバティブが入ると、時価とリスクが乖離する。もっとも分かりやすい日経平均先物でいえば、先物を20,000で1枚買って、今現値が、20,000なら先物の時価は0になる。しかし、当然ながらリスクエクスポージャーは、2000万円相当の日経平均を保有しているのと等価だ。
と言える分だけ、先物はまだ単純だ。オプションの極端な例として、明日満期のATM Callを1枚ロングしていた場合、時価が40円で、デルタが半分として、1000万円相当の日経平均を保有しているとして良いだろうか?
もちろん、金融機関のリスク・エクスポージャーとしては、機械的に(客観的に)、1000万円相当のデルタアマウントを計上するのが適切であるが、個人として、明日満期のATM Callを1枚をNakedで保有していて、株を1000万円分、保有しているのと等価と言うことは、果たして自然だろうか? 仮に明日、日経平均が5%下がれば、1000万円分保有しているのなら、50万円の損失になるのだが、このオプションでは4万円しか損しないということがわかっていて保有しているのにだ。
1億円の金融資産を所有しているが、そのすべてが40円のオプションで、2500枚保有するというポジションもありうる。その場合、数値的には250億円の株式エクスポージャーを保有している、と個人として発言するのはまともな発言か? ただ、これは個人としての「つぶやき」を越えて、デリバティブの会計基準に対する疑問符でもあるのだぞ。
実際に私が満期まで後1日のオプションをロングなりショートなりのいずれの形でも保有していることは無いのだが、私がメインとしているスプレッド取引のデルタに対するガンマの比率は、ショートタームのNakedよりも大きくなることは当たり前に存在する。
だから、私はあえて、リスクアセット比率、私の場合は株比率だが、オプションはいかにデルタを取っていようが、株だけの時価評価の比率で計算している。私のリスクアセット比率を40%しか取っていないのに、上昇相場についていけるのは、ここに「嘘」、というか表現しきれていない真実があるからだ。オプションのポジションで発生している年間の平均のデルタエクスポージャーを足せば、株式の比率は60%~80%はあるだろう。そうでなければ、この長年にわたる上昇相場についていけるはずもない。
2.リターンの定義


金額の定義は単純だ。未実現の評価益も含めて、時価だけを追えば簡単に定義できるのだが、年率何%なのか?というと定義が一気に不明確になる。投下(必要)資本で見るならば、必要証拠金の平均で見るべきか。ではその必要証拠金が激しくぶれていたら、実際に使っている資本は、平均より大きくなければ、そのポジションは取ることができないはずで、証拠金の標準偏差、何σまで取るべきか?
私の場合は、取っているポジションが極端な損失限定のスプレッド取引なので、証拠金は最大損失にピタリと張り付いているので、取引しない限り変動しないw 以下に相場が変動しようとも、証拠金の最後の3Digitは、…,000USDで安定して動かないw ストライクは25ドル単位で取引している(実際のS&P500のEuropeanは5ドル刻み)ので、,500USDとなっている日もあったかもしれないが、変動しないので、日々注視してない。
私は前回、2015年のUS Optionsのリターンは+6.0%と言っているのだが、何に対しての6%なのか言及していないw 意味ねーw
この6%というの超主観的な根拠による。私がオプション口座においている金額に対してだ。しかも、年を通してほぼ一貫して使用している証拠金は、それに対して1/3にすぎない。私が少し多めにリスクを取って半分証拠金を使うのか、あるいは、寝ぼけて、1/10しか証拠金を使っていない場合でも、分母は変わらないのだ。
この辺りが、セルサイドの感覚で個人取引をやっている象徴的な認識だなw
セルサイドのトレーディングPLは金額認識はあるが、年率何%という概念は無い。当ブログ読者はセルサイドのトレーディング業務従事者も多いと思うが、諸君らが、個人投資家となった時に、デリバティブ取引の年率リターンを問われたらどう規定するね?
少なくともセルサイドにおいて、かかる「費用」は、必要証拠金の平均に対するファンディングコストだけだろうから、ファンディングコスト控除前ならば、3倍して18%もあるんだ
2015年S&P500が若干マイナスな中、アメ株の素ロングで+15%?とか自慢したけど、オプションに比べれば、俺の株のセンスなんて屁でもないよ。わかるかな? 株+15%、オプション+6%にもかかわらず、オプションに異様に自信をもっている根拠だよ。
具体的なオプション取引について説明しようとしたのだが、まずリターンとリスク認識についてで1日分使ってしまった。ごめん。
【市場と実戦:Vanilla・幾何ブラウン】
2015.01.16 一族アセットマネジメントの公開採用試験・問題
2014.10.31 アウトオブザマネーのプットは意外にヒットしない
2014.07.07 オプション・トレーディングにおける個人投資家とプロの違い
2014.04.25 素人がハマっている必負法 1/3 ~日経レバ2の行く末
2013.09.26 S&P500のオプションも、はじめちゃいました
2013.02.07 S&P500が1600を突破する確率50%超 確率を買うには?
2012.08.20 野村日本株投信(豪ドル投資型)1208設定日
2012.05.15|Calender Spreadのススメ2 ~株価と時間軸上の損益曲面
2011.12.16: FIAに行ってきました
2011.10.20: 日本のオプションは最も割安な水準
2011.02.25: 噂の真相 ドイツ銀:韓国でデリバティブ取引禁止処分
2010.11.08: 三田氏を斬る ~多彩な商品、Vanilla系
2010.07.08: 新しい読者の嬉しい努力 数学を使わないオプション解説 Vanillaって?
2010.05.14: オプションの清算値の計算方法 これは一体何の計算?? 
2009.09.29: Black-Scholesは間違っている
2009.06.16: VAR SWAPのGamma+VanillaのGammaでGamma Neutralになるか?
2009.06.09: お前VEGAの意味わかって無いだろ?
2007.12.01: 初めて会った時から好きだった