Call Optionの素ロングとCalender Spread(CALD)を比較してみたが、そこで用いたグラフに少し問題があるような気がしてきた。
しかし今日は、一般向けの解説ではなく、Option Longの怖さを知っている人間(対象者はあんまり多くないかもしれないが)に対し、諸君らが頭の中で考えていることを可視化するという目的である。
もう一度105C(5%上方のStrike) Call Option素ロングの問題のグラフを出してみよう。
105C Buyの損益曲面(Spot97%-110%、時間は1ヶ月から満期1日前まで)
何が問題かと言うと、コール・オプションの特徴を出すために、グラフの中心をスポット100から上方にずらしてあり、ほとんど儲かる領域になっており、コール・オプション・ロングが非常に楽観的ポジションであるかのような印象を与える。
第2に、これは単にVolatilityを一定として、時間と株価を動かした場合の結果である。つまり確率分布を一切考慮してない点が大きな問題となる。1ヶ月以内、例えば1週間で10%以上上がる確率を考慮すれば、この右肩上がりの損益曲線はほとんど実現しないことが推測できるであろう。コール・オプションを保有した経験があるものは、無意識的に確率を考慮したペイオフが頭の中に描いているはずなので、それを可視化してみよう。
まずは、Volatility20%でSpot100とした時、1ヶ月間の株価の確率分布を示してみよう。
端点の確率は90以下になる確率と110以上になる確率で、他は100-101などの1%領域に株価が存在する確率である。
最初の5日間くらいは綺麗なベル型(5日間で10%以上動く確率はほとんど無視できるため)、1ヵ月後の分布では端点つまり10%以上動く確率が少し盛り上がっている。今、ここでは実際の株価が持つ非対数正規性は大きな問題にならない。(105Cの1ヶ月分布なので)
ではここで1ヶ月の105 Callの損益曲面を確率加重、一番上のCallのグラフと2番目の確率をかけた、つまり期待値ベースでグラフにするとどうなるかというと
105C Buyの”期待値”曲面(Spot90%-110%、時間は1ヶ月から満期1日前まで)
このようになる。Option Playしている者は、「こんなグラフを頭に浮かべながらオプション取引してないよ」と誰しも言うだろうが、5日で10%は上がらないだろうと思うことと、このグラフは同義なので、一番上の問題のグラフ=確率考慮しないCall Optionの損益曲面で存在していた手前の盛り上がりは、この期待値ベースのグラフにおいては0となっている。これは確率考慮されているので、グラフを見る際、中心=スポット100からの距離の遠さは考慮しなくて良い。
5%上がったところの水準を赤い補助線で示しておいたが、満期直前には当然のことながら5%上がったとしてもマイナス領域に食らい込んでおり、かなり上がるか、スピード感をもって上がらないとコールオプションは儲からないということがお分かりいただけるであろう。クリーム色の下の紫からは赤字領域なのだが、このグラフを反対から見ると、その恐ろしさがわかりやすいので、
1ヶ月の105 Callの期待値曲面 時間反転
どうですか? マイナス領域(105まで)が広い。とても広い。絶望的な広がりに見えるでしょう。これがコールオプションの恐ろしさです。「コール・オプション買いも怖いからねぇ…、Time Decayは結構キツイ」という言葉の背景には実はこの期待ベース損益曲面の大きなマイナス領域を”経験的に頭に描いている”人の台詞なのです。
一方でCalender Spreadのグラフを出してみましょう。
Calender Spread Buy (105C 1M-2M)の損益曲面
続いて同様にExpected BaseのCalender Spreadを表現してみよう。Spot100のところに赤い補助線を引いてみた。
極めて形が似ていることがお分かりいただけるであろう。損益曲面と期待値が一致しているということは、頭の中で簡単に描ける損益曲面と、実際に起こること、つまり期待値曲面とが同じ形だから、”期待通り”に振る舞う楽なポジションなのである。
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2 Responses to Calender Spreadのススメ3 ~期待通りの期待値曲面
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エキゾさん
ブログ楽しく拝見させてもらっています。
このページのグラフが閲覧できないのですが、リンクが切れてしまっているのでしょうか。
興味深い記事なので、画像も拝見させていただければと思っております。
サーバー移行の際に一部の昔の画像が消えてしまいました。再度作るのが面倒なので、多分こんなグラフではないか?とツイッターにあげてもらえば添削します。