投資方針 税金と手数料を払ったら負け。
投資機会 馬鹿か金に困っているヤツを探せ。
以上。
これが私の思う投資の基本原理。バフェットもソロスもそれに則ってるのがわかる。
同じ日曜日の夜、ローゼンフェルドはオマハの自宅にいるウォーレン・バフェットに電話した。今、ロングタームの合併
ポートフォリオを売る相手としてバフェット以上の買い手は思いつかない。この億万長者は、大型の取引が好きだった。
過去にリスク・アービトラージをてがけたこともある。それにスプレッド拡大のおかげで価格も割安だった。
バフェットは熱心に耳を傾けた。しかし聞き終わると即座に、合併アービトラージにはしばらく関わっていないこと、
今から関わりあうつもりはないことを宣言した。買う気は全然ない。それから声を和らげ、ほかに何か力になれるこ
とはないかと尋ねた。
グレッグ・ホーキンスはメリウェザー、ジョージ・ソロス、そのトップストラテジストであるスタンレー・ドラッケンミラー、3人
の朝食をお膳立てした。共産党支配下のハンガリーから亡命した海千山千のソロスとメリウェザーとは、水と油ほど
人間の種類が違う。ソロスに流れる東欧の血は全身の毛穴という毛穴からにじみ出ていた。格式ばって堅苦しく、何か
といえば哲学的論考に話を発展させる癖があった。髪の白くなりかけた梟というところだ。かたやメリウェザーはというと
気取りのない、さばけた中西部人で、小さな保険会社に勤める外交員といっても通用しそうだ。標榜する投資スタイル
も違っていた。ロングタームの描く市場は安定したシステムであり、価格は合理的な均衡点を中心に、その周辺に寄せ
てくる。「私は別の見方をしている。」ソロスは言う。投機家ソロスの目に映る市場は、有機的で予測が不可能だ。それ
は日々の出来事と互いに影響しあい、世の動きを刻々と織り込む。「ベル型曲線を前提とする考え方は間違いだ。
想定外の現象は必ず現れ、それは過去の経験から予想できるものではない。」ソロスのファンドが20億ドルを失ったロ
シアなど、そういう”想定外の現象”のまさに一例で、教授たちの描くベル型曲線のはるか彼方に位置していた。ソロスは
眉一つ動かさずに聞いていた。ソロスがロシアで被った損失を取り戻すチャンスの臭いを嗅ぎ取っていた。その場で、ソ
ロスは大胆にも、8月末、つまり一週間後、に5億ドル投資しても良いと言った。ただし、ロングタームが別にもう5億ドル
調達して、自己資本を立て直すことが条件だという。
すげーなぁ、ソロスもバフェットも。じっと待つことを知ってる。時間の経過が自分に有利に働いているかどうかを嗅ぎ分ける
能力がある。たいしたもんだ。時間を買うとか言って割高な買収をしている日本の経営陣・・・、見習ったほうが良いぞ。
8月も残り少なくなるにつれ、ファンドの決済銀行ベア・スターンズからの圧力がきつくなる。ベアはロングタームの自己
資本が細っていくのを不安な目で監視していた。交渉の席でヒリブランドが押しに押したおかげでロングタームとベアと
の間には紙切れ一枚の契約も交わされていない。これはつまりベアが、いつでも好きなときに決済を停止できることを
意味する。まさにヒリブランドの恐れたとおり、ロングタームの命運はベアの手に握られていた。8月の最後の週末を迎え
る頃、ロングタームはソロスの持ち出した条件を達成するどころか過去最悪の水準までずり落ちていた。しかもウォール
街で資金を動かせる立場にある人間はほとんどが夏休み中で、8月いっぱいは
ニューヨークにいない。ロングタームは
来る日も来る日も数週間にわたって1日も欠かさず、数千万ドルから数億ドルずつ失っていった。
8月、ヘッジファンド全体の4分の3が損失を計上し、なかでもロングタームの損失は最大だった。この1ヶ月の間に、メリ
ウェザー軍団は19億ドル、自己資本の45%を失った。のこりわずか22億8千万ドル。ソロスの線は消えた。
パートナーたちは不気味なパターンに気がついた。ロングタームの取引だけがほかより大幅に下がっている。資金を求め
てうろつきまわるうちに、ロングタームはそのポートフォリオの詳細を、時にはおおまかな全貌ですら、開けて見せないわけ
には行かなかった。皮肉にも秘密第一主義のヘッジファンドが、誰もが閲覧できる公開情報と成り果てている。ビニー・マッ
トーネなら、さしずめこういうだろう。市場は弱者の背後で手を結ぶ。さらにメリウェザーのレターのせいで、ウォール街中が
ロングタームの苦境を知っていた。ライバル会社は、ロングタームから売りの雪崩が押し寄せてくるのを見越して、先回り
して売り始める。
ぁぁぁっ、可愛そう…。
ゴールドマンのインベストメント・バンカー、クラウスがオファー文書を作成している間、バフェットはメリウェザーに電話した。
「ジョン」。聞き違えようもない甲走った声。「ポートフォリオ買収のオファーがじき届くはずだ。私の名前もそこにある。買い
手はわたしだと承知しておいてもらいたい。」メリウェザーはそうですかとだけ答えた。
内容はこうだった。バークシャー・ハサウェイ、AIG、ゴールドマンサックスの三社はファンドを2億5千万ドルで買い取ること
を希望する。承諾されるならさらに37億5千万ドルを即日注入する用意がある。うち30億ドルはバークシャーが出資する。
バフェットの申し出は年初まで47億ドルの価値のあったファンドを、2億5千万ドルで買い取ろうというものだった。ロングタ
ームはその日、またも損失に見舞われ、5億5千5百万ドルに値を下げている。しかしこの呆れるばかりに擦り減った純
資産価値を斟酌しても、バフェットの言い値は明らかに低すぎる。
バリュー投資の真髄か・・・。
【脅しのバイブル】
2011.01.04: ※注:アジア系の怖い人は来ません!
2010.09.17: 私、写真写り悪いんです
2010.07.06: 夫婦で読むデリオタブログ ~主婦の存在意義と無言の圧力の源泉
2009.11.17: 巨額暗黒資金 全日空M資金スキャンダル2
2009.07.10: 得意の交渉術
2009.07.03: 暴君の家庭
2009.06.19: プーチンのロシア
2009.05.19: 俺の欲しい車
2009.04.09: 金(カネ)の重み
2009.03.16: Singaporeの日本飯
2009.02.17: 結婚後、優位な立場を確保する方法2
2009.02.16: 結婚後、優位な立場を確保する方法
2008.07.09: 妹が見た悪夢
2008.01.23: モノの価値 流動性プレミアムは相手に払わせる スーツ編
2 Responses to 最強ヘッジファンド LTCMの興亡 ~最高の投資機会
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明らかに低すぎる(高すぎる)、けれどもあちらさんは売らざるを得ない(買わざるを得ない)。そんな相手を探し出してこちらのテーブルに引きずり込み、恩着せがましくトレードできるようになりたいです(笑)。
どんな例があると思いますか? バフェットじゃなくてもできることはあると思いますよ。