まずはシンプルなVanillaを例に徐々に説明していこう。
一般に言われる典型的なArbitrage Free条件
【法則1】Strikeの単調性
2つの異なるOption、Op1とOp2に対して、各Optionが持つStrike X1 > X2 ならば、
P/C Flag * Premium1 < P/C Flag * Premium2
が成立する。
P/C Flagとは、Putならば-1,Callならば+1。
この関係式は
Vanilla型 Max(P/C Flag * (S-K),0)でも
Digital型 1[P/C Flag * S > P/C Flag * K]でも成立する。
ではここにExotic条項のBarrierを加えて、
【法則2】Barrierの単調性
同一StrikeのOptionに対して各Option異なるBarrierを持ち、
Barrier Level H1 > H2 >Spot、もしくはSpot >H1 > H2ならば、
KI/KO Flag * Premium1 < KI/KO Flag * Premium2
が成立する。
KI/KO Flagとは、Knock-Inならば+1,Knock-Outならば-1。
同様にこの関係式もまた
Knock-In,Knock-OutとPut/CallとVanilla/Digitalのあらゆる組み合わせで成立する。
また、いわゆる連続参照(Continuous Barrier)から満期一点のEuropean Barrierの
非経路依存型に至るまでのあらゆる参照頻度においても成立する非常に強い関係である。
さて、そろそろ本題のEarly Redemptionの形体として、主にはCallableとAuto Callがあるが、
アジアで主たる条項はAuto Call、具体的には、将来のある時点において、株価がある価格以上だったら
“自動的に”償還するという仕組みである。
償還する=それ以降の未来の条項は全て無効になるということを意味するので、大雑把に見れば
Knock-Out Optionに近いようなイメージで捉えているのが世の中一般の解釈である。
早期償還条項無しは絶対にKnock-Outしない早期償還Trigger Level=∞と考えてよい。
BarrierもStrikeも単調関数であると刷り込まれている影響で
【法則3】 Early Redemption Triggerは単調ではない。
Early RedemptionのTriggerがT1 > T2ならば、
同一価値を持つためのCouponというOptionの関係式は同様に、
KI/KO Flag * Coupon1 < P/C Flag * Coupon2でKOなので-1を導入し、
Coupon1>Coupon2であることが期待されている。
しかし、これは成立しないことが多く、誤解をしているセールスも多いので、常に理由を説明しなければならない。
Coupon支払い義務があるこちら側としては、
CouponがRisk Free Rateより低ければ、”+”であるし、高ければ”-“となるので、Couponはあくまで
ライアビリティであるから、Auto Callされずに契約が長期になること=儲かるではないということを認識させる
必要があるだろう。
Coupon支払い債務が重くのしかかる例として、CouponがDigital Couponである場合の
早期償還Triggerの影響を考えよう。
5年、毎年参照、
参照日の株価が、Spotより高ければ(S>100%)、5%(Risk Freeの2倍としよう)、安ければ0%を払う必要がある。
Risk Free2.5%Flatと単純に考えて、上がればRisk Freeを失い、下がればRisk Freeをもらえる丁半博打だ。
そして早期償還条項は
Case1)Spotより高ければ(S>100%)償還の場合と、
Case2)Spotより10%高ければ(S>110%)償還の場合
の二つを考える。
Case1の最大損失シナリオは、CouponのLeg:最初の1回目で100%を越えると5%取られて終了。
Riskfreeは、SWAPにせよNoteにせよ、もらえると考えれば2.5%×1年分は取れる。
よって、-2.5%=-5%+2.5%となる。
これはなんとも素晴らしい条件で、5%と取られる金額が決まっているので、この1年目の早期償還さえしのげば
2年目以降は、2.5%×2年=5%より、負けは無いことがわかる。
ところが、Case2の最大損失シナリオは、
Spotが105%で安定した場合、「毎年」5%、5%×5年の支払い義務が生じ、Risk Freeが2.5%×5年なので、
5年間で-12.5%も負けることがわかる。
よって、確かに1年目で償還し、逃げられる可能性はCase1が高いが、低いVolatilityでは、100-110%のRangeに
とどまり、Case1よりも不利な博打となることを可能性も考えられる。
この例を通して、もっとも強調すべきなのは、早期償還の確率が低い=より良いYiled Enhanceができるという
ことを意味しないということである。
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