バリナリーオプション、デジタルオプション、Cash or Nothingは名前の違い、方言であり、同義です。
私は普段はDigitalと呼んでいます。
バイナリーオプションとは
満期時点において株価がStrikeを越えていたら1、Strike以下なら0となるオプションです。
バイナリーのプットは、Strikeを越えていたら0、Strike以下なら1となります。
100 or 0と表記しているところもありますが、それは百分率で表示しているだけのことですので
単位が異なる程度で本質的な違いはありません。
絵で書くと赤い線部分です。
式で表示すると1[S>K]です。
定性的にはCall Spreadです。
行使価格100円のCall Option1枚買って、行使価格101円のCall Option1枚売ると
上記青線部分になり、差額は三角形部分。
行使価格100円のCall Option2枚買って、行使価格100.5円のCall Option2枚売ると
差額の三角形部分の面積は半分。
行使価格100円のCall OptionをN枚買って、行使価格100+1/N円のCall OptionN枚売る
Nを∞に持っていったものがバイナリーになります。
ここでセンスの良い読者はお分かりだろう。バイナリーオプションの市場拡張性は限定的である。
例えば日経平均の上場オプションは250円刻みのStrikeであるから、250円Call Spreadで代替が効いてしまう
のである。
また、株は1日2%くらいの変動が期待できることから、O/N以上の長さを持つオプションにとって250円刻み
のStrikeは十分に細かいと言える。特に大口であればあるほど、N=∞に近いので、この代替投資が有効
になることがわかる。
すなわち、バイナリーオプションの市場存在意義は、代替が効かない投資水準=超小口の場合のみとなる
のである。
上場オプションの倍数は1000倍であることから、250円×1000で、25万円以下の投資金額であることが想
定される。25万円以上のご予算の方は取引コストが安く、流動性が高い上場オプションに流れてしまう。
25万円で最大投資金額が頭を抑えられてしまうオプションに可能性を感じますか?
定量的には、まさに確率です。株価がStrikeを越える確率です。
すなわちBlack-Scholesは条件付期待値みたいなものですから、満期時点でSをもらってK円払うので
右辺の第一項が株をもらう期待値、第二項のKはCashで不変なので、将来払うCashの部分、
を除いた部分
が確率を示していることがわかります。すなわちこれがバイナリーオプションに相当します。
バイナリーのPayoff(Intrinsic Value)の形が、
VanillaはStrike越えるまでが傾き0、Strike越えてからが傾き1であることから
Plain Vanillaの株価微分と一致しています。
よって、奇異に思えるバイナリーの振舞いも、Zero Driftで、現値とStrikeが等しい時、
バイナリープットオプションのPremium=Vanilla CallのDelta
バイナリープットオプションのDelta=Vanilla CallのGamma
バイナリープットオプションのVega=Vanilla CallのVanna
が成立し、Tradingの際は、全てのRiskが一段微分したような振る舞いになることを想像すればよいでしょう。
【【関連記事】
2009.08.12: Double Barrier 複雑なるもの
2009.08.04: Barrier Option Pricing
2009.07.28: Exotic Parity2
2009.05.26: Crossed GammaとDeltaの定義
2009.01.26: Exotic Parity
2008.03.03: Lookback 神なるTrade
2008.01.13: Worst Option ~香港より愛を込めて
4 Responses to バイナリーオプションの性質から読む市場拡張性
コメントを残す コメントをキャンセル
このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください。
Information
最近のコメント
- オプションの期待値は株より高いと思ってるの? に 一族エキゾ より
- オプションの期待値は株より高いと思ってるの? に ぽよよ より
- オプションの期待値は株より高いと思ってるの? に ぽよよ より
- オプションの期待値は株より高いと思ってるの? に 一族エキゾ より
- オプションの期待値は株より高いと思ってるの? に ぽよよ より
カテゴリー
メタ情報
Calender
アーカイブ
投資一族のツイート
タグ
タグ
数式きれいに表示されていますね。
今回はデジタルですね。
日本だとその分かり易さから
小口向けやコンサバな投資家向けに割と人気があったりします。
固定クーポンに目が慣れている人が多いからでしょうか。
小口向けだとリーガルリスクもあるので分かり易さも大切です。
定量面でもう少し踏み込んみて、
デジタルオプションはVolを変数と考えるとSkewのリスクも見えてきますよね。
DigitalC(K) = -dC(K)/dK – dVol/dK*dC(K)/dVol
(C(K) : BSCallPrice, Vol : BS Implied Vol)
まあCall Spread なんかで複製してバニラのVanna/Volgaなんかを
みていれば同じことですが。
クーポンすなわち仕組債に内包されたDigitalという意味では、日本だけでなくAsiaでも一般的で
Range Accrualも言ってみればDaily Digitalの和なので、拡張性はあると思います。
私が言いたかったのは、Digital Option単体の拡張性で、それはおそらく難しいということです。
Wilmottにも似たような記事があるようです。
http://www.wilmott.com/messageview.cfm?catid=3&threadid=67133
我ブログも追いついてきてます。がんばれ日本語版Wilmott。
はじめまして、こんにちは。
バイナリーオプションを検索していたら、こちらにたどり着きました。
すごく丁寧で初心者にもわかりやすい記事で感動しました。
24オプションって、ドル、円以外にも金、原油、株価指数とか(27種?)
取引可能って本当ですか??
でもできたらすごいですよね。。!
損も少なそうだし、少ないお金で始められそうなので興味深々です。
https://www.24option.com/24option/index.html?lang=JA
ちょこれーと様、コメントありがとうございます。初心者にはわかりにくいとの声が多い中、ご理解いただき光栄に思います。
>24オプションって、ドル、円以外にも金、原油、株価指数とか(27種?)
少し見てみましたが、おそらくBinaryともう一つの似て非なるもの、経路依存性のあるOne Touchが含まれています。
BinaryとOne Touchの違いは、Binaryが指定されたその時刻”に”Xを超えていること、に対し、One Touchはその時刻”までに”となります。少し難易度が高い記事になりますが、下記の記事の前半でそれついて述べています。後半のDouble Barrierについては読む必要はありません。わからないことがあったらご質問いただければと思います。
2009.08.12: Double Barrier 複雑なるもの
http://www.ichizoku.net/2009/09/binary-option.html
>損も少なそうだし、少ないお金で始められそうなので興味深々です。
おっしゃるとおり、損失限定ですが、最低投資金額が小さい場合の”ギャンブル”の特徴を知っておくと良いと思います。一般に、リスク選好という言葉で説明されますが、それを大衆ギャンブルに当てはめて説明した記事を下記にご紹介します。
2010.07.01: 数学を使わないデリバティブ講座 ~リスク中立
http://www.ichizoku.net/2010/07/risk-neutral.html
直感的に「1万円をギャンブルに投入した時に、当たりうる最大金額が分散に一致すると思ってもらって構わない。パチンコだったら10万円勝つのは難しいね。競馬で万馬券一点勝負でも100万円だね、富くじは当たれば数億円でしょう。この順で分散が高くなり、期待値が下がっている様子がわかるね」
ギャンブルとデリバティブの線引きは法律的にも難しいところです。ギャンブルで成立するこの傾向は、デリバティブでも確実に成立するという事実を知っておいて損はないでしょう。