各都市から目的都市に直接それぞれ5個の荷物を送ろうとすれば全体では10路線必要になります。しかもそれぞれの飛行機に乗っている荷物は5個だけです。一方、シカゴをハブ空港として設定すれば、飛行機を飛ばすのは4路線のみとなり、1機の飛行機にはそれぞれ20個の荷物を載せられるので、1個当たりの輸送コストは大幅に下がります。(ただし旅客の場合は荷物と異なり乗り換えのストレスなども生じるので、別の最適化も必要)。現在では当たり前のように使われているハブシステムですが、これも最初に考え出され導入された時点では明らかに改善ではなく革新=イノベーションと呼べるの生産性の向上策でした。
伊賀泰代.生産性

確かに。こんなもんは技術革新ではまったくない革新の一例だが、ハブシステムが革新だって意識は日本はほとんどないだろうな。

【ニコ生】ひろゆき ベーシックインカムを実現するには④「中国が素直になった」

で言及されてるコンテナ革命もまた面白い。骨子は、コンテナがあればコンテナを開けることができないというセキュリティが保証され、物流業者に対する信用が不要になって誰でも輸送ができるようになった、というものだ。ただ、タイトルの「中国が素直になった」は、騙すよりまともにやった方が利益率は下がるが規模で言えば儲かる額が多い、ということだ。だから俺が言った「資本主義と法治国家としてまともじゃない方向性が日本の強み」は、間違ってはいないし選択の余地はないが、一流にはなれないことが確実な道でもある。コンテナの事例はブロックチェーン技術というテクノロジーによって信用が担保されれば、金融機関の資本力による信用の必然性が揺らぐということも暗示している。

付加価値が上がったか下がったかを判断するのは、企業ではなく消費者だということです。たとえ「今までよりはるかに良い商品になった!」と供給者が考えても、それだけの価値を消費者が感じなければ、価格を上げることはできません。日本企業は「付加価値を上げる=新たな機能を追加すること」、もしくは、「付加価値を上げる=高機能化すること」と考えているかのようにみえますが、欧米の家電メーカーなどは、「機能を絞る」ことで付加価値を上げる手法も多用しています
伊賀泰代.生産性

伊賀さんのご指摘ごもっともだが、あえて日本をフォローすると、日本にも「機能を絞る=わび・さび」の概念がある。

2011-11-30 利休にたずねよ3/4 ~茶の湯の極意

わび・さび出してる時点で、現在の日本での好事例を探すのに俺も苦労していることの証拠でもあるんだが。戦国時代の経済成長によって、金銀両本位制からの脱却のために用意したのが、一国の徴税権ほどの価値がある茶器が登場したとか、面白い話が満載なので、「利休にたずねよ」は今一度読み返す価値がある本だと思う。

日本では、製造現場における改善運動から生産性という概念が普及したため、「生産性を上げる手段=改善的な手法によるコスト削減」という感覚が定着してしまっています。このため企画部門や開発部門など「自由に発想することが重要な仕事に従事している」(と自負している)人たちは、生産性の向上が自分たちの仕事にも極めて重要であると、長らく認識できないままになってしまっていました。

商品開発、サービス開発から、物流や在庫管理、顧客対応、研究開発や人事、経理、法務などの管理部門も含め、すべての部署で不断に生産性の向上を目指すことが必要なのであり、「うちは製造業じゃないから無関係」「開発や企画だけをやっていて、オペレーション部門を持たないから無関係」という話ではないのです。

非技術的なイノベーション、たとえば「貨幣制度の確立」とか「取引所の確立」といった経済的なイノベーション、「戸籍・住民票制度」や「裁判制度」といった社会制度上のイノベーション、「株式会社=有限責任制度」という法律上、ビジネス上のイノベーションは、すべて非技術的なイノベーションです。
伊賀泰代.生産性

では、私の方からも、「非技術的イノベーション」の事例を。

1987年1月パリ、OECDのある会議でフランスの大蔵大臣が「フランスは、メートル法と共に付加価値税で世界を征服した」と、大見得を切ったのである。

わかるかね? メートル法とVATはイノベーションだ、と言っているのだよ。貨幣制度が生産性の向上ってのは、ほとんどの人に通じないんじゃないかなー?