英国マーチャントバンクが国際貿易や戦費増大に悩む政府と表裏一体となって成長してきたのと比較すると、米国金融資本は国内の鉄道や石油、軍事産業など国家インフラ事業とともに巨大化していったのが特徴である。1893年から金の流出や国内不況で財政危機に見舞われた連邦政府を、JPモルガンがロスチャイルドとともに救った話は有名である。米国の金融資本を代表するロックフェラーとJPモルガンは、どのようにその金融力を蓄積していったのだろうか。
ロックフェラーは1870年にスタンダード石油を興したロックフェラー兄弟が同業者とトラストを組んで価格を操ったり鉄道を支配したりして富を蓄積、現在のシティ・グループの前身であるファースト・ナショナル・シティ銀行との関係も深かったが、ロックフェラーの銀行と言えばチェース・マンハッタン銀行である。それに比べるとJPモルガンはまさに金融資本である。1861年のジョン・ピアモント・モルガンが設立したJPモルガン商会を出発点として、電気事業、塩・タバコ事業などを支配し、鉄鋼経営に乗り出し米国基幹産業を支配下におさめて君臨したのである。JPモルガンは20世紀に入ると鉄鋼業界の統一を狙うことになる。当時「鉄鋼王」として名高かったカーネギーから英国の総生産量をも上回るといわれる規模を誇ったカーネギー製鉄を買収し、JPモルガンは1901年にUSスティールを創設したのである。これは鉄のトラストとも呼ばれた。
米国連邦準備制度理事会はFRB(Federal Reserve Board)の日本語訳である。他の国中央銀行との呼び名が違うのは、まさに米国が連邦制度を採用しているからに他ならないが、それゆえ他国と違って中央銀行制度を取り入れるのに手間取ったともいえよう。米国では1791年に紙幣の発行や通商規制などの権限をもつ「第一合衆国銀行」が創設された。これは財務長官ハミルトンが連邦憲法を拡大解釈して設立した中央銀行であるが、すでに州立銀行を擁していた州政府の猛反発により、1811年には解散することになった。そして1816年に「第二合衆国銀行」が20%の政府出資で設立された。この銀行には20年間の特許が賦与され。連邦政府の預金を無利息で預かるという特権を与えられていた。また中央銀行の機能として、インフレ期待に応えて紙幣を増発するという州立銀行の経営を抑圧しようとしたが、この引き締め政策は企業家からは反発を買い、また州政府も州立銀行の利害を代表して反対したため、特許の切れる1836年に、政府預金を引き揚げて州立銀行に配分し、解散した。州立銀行は企業家たちの期待に応えて紙幣を濫造することになり、インフレが激化し、経済恐慌が発生するまでに至ったのである。金融制度に関して連邦政府が州政府の抵抗を跳ね返すのは1862年の法貨法において、不換紙幣であるGreen Backを発行する権限を得てのことである。その背景には南北戦争における戦費調達の目的があった。当時、金を離れて財務省を信用するしかないという通貨制度を経験したことになる。現代の感覚では一国の下では政府や中央銀行の信用が最も高く、一般企業の信用力はそれに勝るものではないというのが通念となっているが、これは歴史的にそうであるといえるものではない。現代でも、国の信用力よりも高い評価を得ている企業もある。
アジアでも国よりも信用力の高い企業が現在もあるね。
不兌換紙幣は1879年に、兌換が再開されたが、一挙に金本位制を築くものではなかった。シャーマン銀購入法が制定され、米国政府は毎月一定量の銀を買い上げることになったのである。海外からは米国は負債返済の軽減化のために金銀複本位を継続させてドルの減価を狙っているのではないかと警戒されていた。その後1900年になってようやく金本位を確立したのであったが日本は、1897年に金本位制に移行していた。
1900年の金本位制は金1トロイオンス=20.67ドルとの公式な金兌換を表明したものであるが、金の保有量に対する銀行券の発券を管理する機能が無く、米国はしばしば金融パニックに襲われていた。とくに1907年に発生した大不況は、経済環境に柔軟に対応できる中央銀行の機能の必要性が叫ばれ、連邦準備法の制定につながったのである。英仏の中央銀行が戦争遂行んための戦費調達を目的として創設されたのに対して、米国ではむしろ金本位制の下での通貨供給の効率的な機能を求めて設立されたのであった。米国の制度で混同しやすいのは、FRBとNY連銀であろう。もともと銀行機能を持つのは地区連銀であり、その中でも重要な役割を演じているのがNY連銀である。NY連銀を含む、12の地区連銀を監督するFRBを中央銀行とするアイデアに落ち着いたのであった。
日本銀行が株式会社であり、その株式が店頭市場で取引されているのはよく知られているが、米国の中央銀行システムも同様に会社形態をとっている。地区連銀の株主はその地区のメンバー銀行である。ただし地区連銀の株式を売買することは認められておらず、また株式を保有しているといってもそれは地区連銀の経営権を意味するものではない。こうした連銀システムの創設にあたって、ユダヤ系金融機関が深く関与していたと言われることがある。欧米に散らばるユダヤ系金融資本が連銀設立の際に出資し、いまなおその影響力を保っているという情報も散乱しているが、NY連銀設立時の出資記録を見てもそのような事実は無い。
日銀は株じゃなくて優先出資証券ね。議決権が無ければそんなものは株とは言わん。
ポンドとドルの為替相場のことをケーブルと呼ぶ。ポンドとドルの取引が大西洋にしかれた海底回線(ケーブル)を使って英米間で取引を行っていたことに由来する。
へーへー。今誰もケーブルなんて言わないか?
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