核テロの危険とは何か
武装した反逆部隊によって核兵器そのものが強奪されるという「ハリウッド映画」が好みそうなシナリオ。
核兵器を作る目的で核分裂物質が盗まれる
原子量発電所や使用済み核燃料貯蓄施設などの民生の原子力施設に対する攻撃や破壊行為。
いわゆる「汚い爆弾」など放射性物質と通常火薬を組み合わせた兵器
核兵器強奪に関して、小型で低威力の非戦略核兵器の管理について特に警鐘を鳴らしている。
ロシアには約3000発の非戦略核兵器があるといわれているがこれらの管理状況には不明な点が多く
管理のための条約も存在しない。
核態勢見直し
冷戦時代の三本柱、大陸間弾道ミサイルICBM、潜水艦発射弾道ミサイルSLBM、爆撃機に搭載された
戦略核兵器のことであったのに対し、冷戦後の「新しい三本柱」とは攻撃能力、防衛、迅速対応能力の
3つである。
第一の柱である攻撃能力は、冷静時代の3本柱を全て吸収して新しく定義されたものである。
「非核および核の攻撃能力」と表現されており、核兵器も通常兵器と同列に位置づけられている。
第二の柱である防衛は、「能動的および受動的な防衛手段」と表現されている。21世紀の新たな安全保
証環境においては、攻撃能力だけでは侵略を抑止できない。9.11事件はこの事実を強調している。
この柱の中心に置かれるのは敵が発射した大量破壊兵器搭載のミサイルを到達前に上空で打ち落と
すというミサイル防衛構想だ。これは現在の脅威はかつてのソ連のような特定の相手ではなく、誰がど
こから攻撃をしかけてくるかが予測不能であることを前提として対処しなくてはならないという考え方に
基づいている。
第三の柱の迅速対応能力とは状況に応じて柔軟かつ迅速に運用可能な戦力を保持するというものである。
配備から外された核弾頭を予備の戦力として保管し再配備にむけ待機させるというのは、この考え方の
反映である。NPRは核実験再開のオプションを保持するとい方針を打ち出しているが、今すぐ再開するわけ
ではなくても迅速に再開できるよう準備態勢を整えておくという意味で同様の考え方を反映している。
新しい三本柱の下での軍事作戦上の標的として浮上するのが、地中の標的や移動式の標的である。
例えば、アフガニスタン攻撃の際には、「アルカイダの拠点が地下にある」といった報道が盛んになされ、
イラク戦争においても「フセイン政権は移動するトラックに大量破壊兵器を積んでいる」との情報が流された。
NPRはこれらの拠点や施設を確実に破壊できる高度な正確性を持ち、かつ付随的被害を極力小さいも
のに抑えることのできるような低い威力の核兵器による「柔軟で適応性のある攻撃計画」が必要である
と記している。
構想を形にするためにアメリカは新型核兵器の開発を追及している。
その一つは地中貫通型の核兵器である。上空から打ち込むと地下深くの標的にまでたどり着き、地下で
核爆発を起こして標的を破壊するが、地上および周囲への放射線などによる被害は少ないものを開発
するというのである。
地中貫通型の兵器は一般にバンカー・バスターとよばれているが、アメリカは核兵器を搭載した
「核バンカー・バスター」を開発しているのだ。1997年地中貫通型のB61-11核爆弾が誕生した。
しかし実際の実験結果は、12000m以上の上空から投下しても貫通できるのは、乾いた土壌の場合
地表から約6m、凍ったツンドラであれば2-3mに過ぎないというものであった。
これと並行してミニ・ニュークと呼ばれる低威力の核兵器の開発への動きもすすんでいる。アメリカ議会
はミニ・ニュークの開発は核兵器が通常兵器と同様に使用されてしまう危険性を高めるという懸念から、
威力5キロトン以下の核兵器の研究開発を1993年以来禁止してきた。しかしNPRを受けて上下院の委員
会は2003年に研究の禁止を事実上撤廃している。開発への規制は依然残されているがミニ・ニュークへ
の扉の一つが開かれたことは確実である。
カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所に国家点火施設(NIF)という巨大レーザー施設がある。
水爆の二次爆発にあたる核融合反応をレーザーによってきわめて小規模な形で発生させるものであり、
それによって核兵器の爆発過程を研究しようとしている。施設の中核的部品であるレーザー増幅用の特
殊ガラスを日本の大手ガラスメーカーHOYAの現地法人が納入していたことが判明し、日本国内で広い
抗議の声が上がった。
ヨーロッパにおける核軍縮の大きな問題は、アメリカの核兵器がヨーロッパの国々によって共有されている
ことである。アメリカとヨーロッパの軍事同盟であるNATOの下で約150発の非戦略核兵器がベルギー、
ドイツ、イタリア、オランダ、トルコに配備されている。これらの国々は非核兵器国と言っても、実際には
アメリカの核兵器がその領内で臨戦態勢にあるのだ。
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