月: 2017年2月

三田氏を斬るシーズン3 9/9~HFTはスタットもあるけどアーブでもある

P.126 株の評価額が130万円にめでたく膨れ上がったときのBSは、含み益30万円はBSに表されていて、損益計算書には出さない。

会計専門じゃないんだけど、これ本当? PLに反映させずに含み益計上なんかできるんだ。バランスシートの右、評価差額30万円って書いてあるけど、それ資本の部? そんな項目あったっけ?

デリバティブズ・ビジネスII 三田 哉 (著) – 2015/9/12

P.138 HFTが行うスタッツアーブ(Statistical Arbitrage)の代表的なReturn Reversal戦略と同じ

三田氏を斬るステージ2 2/8~トレーダーって何?

2014年の記事では、「スタットなんてアーブでも何でもないただのスペキュレーションと言っていたのは三田さんも俺も同じ」で終わっていたが、2017年はこれで終わらせてしまってはならない。かくいう私も取り返しがつかないくらい時代に取り残されているのだが、

HFTはアーブだ。もちろん、スタットなんて関係ない。HFTなんて場間アーブだろ?と思い込んで興味もなかったのだが、もう少し凶悪なフロントランを使った強いアービトラージだ。しかも新興市場などの乱れたマーケットではなく、世界で最も進んだ米国市場での話である。

フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち

この本もそれなりに参考になるが、HFTアーブの発生の根拠となる法律とキーワードをまとめると

2004年、NYSEスペシャリストによるフロントランニング 2億4千万ドルで示談。
2005年提案 2007年施行、Reg NMS 最良執行義務 NBBO(National Best Bid and Offer)

HFTの手口の一部だが、まず米国市場ではスペシャリストのスキャンダル”など”により、PTSやダークプールが発達し、多数の取引所ができた。そこで最良執行義務、証券会社はNBBO(一番良い気配)で、顧客注文を約定しなければならないという義務が発生。ところが、数多あるPTSを自前で気配を取れない業者のためにSECはNBBOを提供することにした。SECのNBBOよりも早く、真のNBBOを取れていた連中がいたとしたら? 人よりも狭い取引コストで、執行できるし、例えば、

SEC NBBOが49.6/49.53で真NBBOが49.6/49.55だとしたら、49.55を叩いて、49.54で買いを出してもほぼ確実に取れる。
あるいは、あるPTSで49.8/49.5でそこに49.6の買いを出したとしたら、そいつに買わせないように49.6を取ってしまうこともできる。
また、各PTSで複雑なオーダー、発注して一部出来の残りをキャンセルするオーダーなどを認めさせ、HFTしやすくするなどなど・・・。

日本の場合、まともに取引のあるPTSは2つしかないので、米国ほど盛んなHFTは起こらないだろうが、米国でもフロントランで捕まってない以上これらはアーブと言える。

2016年のティックに関するパイロットプログラム、気配と注文の幅に違いを出すことでHFT対策の運用が始まっている。これにより、ますますHFTアーブの利ザヤは薄くなるとは思うが、日本はまだまだこの領域に達していない。

ミルケンがいて、エド・ソープがいて、フラッシュボーイズたちがいて、世界中の詐欺師たちが跋扈する米国市場は、最先端の法整備と取引所運営を行っていて、日本や俺たちが取り残されているのは「フラッシュクラッシュ」でぐぐるか”Flash Crash”でぐぐるかの内容の差にも顕著に表れている。


三田氏を斬るシーズン3 8/9~クレジットアーブ・割安状態の解消

バブルの歴史

これも日米の資本市場格差を見つめる上では、非常に参考になる本だ。

ウォールストリートの歴史 2/8 ~南北戦争 

でも引用しているが、日本の株式市場は、米国で言うならば、ロバーバロン(The Robber Barons)の時代、グールド、ヴァンダービルト、ダニエル・ドルーといった「相場師」が活躍していた買占めと相場操縦という150年くらいの手法で止まっているのが現状だ。

時代は一気に飛ぶが1980年代、ジャンク債の帝王「ミルケン」がやったことは、詳しくはミルケンの本でも読んでほしい所だが、端的に言えば、ジャンク債の引受先を探すことだけではなく、LBO、割安な銘柄が放置されているならばジャンク債を発行することで資金調達し、株を買い占めて乗っ取ってしまえばいい、KKRによるナビスコ、ということなのだ。ミルケンや金融機関だけではなく、つい最近までGEがやっていたことは、クレジットのアービトラージ、GEの信用力で資金調達し、被買収企業の有利子負債を借り換えするだけで、収益性が上がり、それを金融ではなく製造業の人件費で行っていたのだ。

日本株ブルーチップにおいてPBR1倍割れみたいなことが平気で起きている日本市場は、ミルケンすらまだ現れていないことの証明だ。ブルーチップだよ?財務に嘘があるのか?株価が間違っているのか?持ち合ってるから買占めができない、まぁ、どんな理由が背景にあるにしても合理的で健全な価格形成・資本市場とは言えないだろ? 少なくとも30~40年以上、米国市場に遅れを取っている。日銀・GPIFという政府保有が10%を超える企業も珍しくない、いまだに持ち合い解消とか言ってる、買収対抗策ポイズンピル条項大好き企業、挙句の果てに優良企業のMBO、銀行が買付資金を貸して優良企業を上場廃止にしてしまっている、健全な資本市場の形成の真逆な方向に進んでいる慣性系ではなく、詐欺師が跋扈する米国市場の進歩と改善を見つめてみるべきであろう。

話が関係のない方向に行っている? 違う。これも米国市場の進化と発展に対する三田さんの時代錯誤発言に対する俺の批判の伏線だ。

P.117 ”借りた株を売る”場合は、売り手が自ら株を借りた場合である。株券消費貸借取引で株を借りることになるのだが、一般投資家には縁のない取引である。

デリバティブズ・ビジネスII 三田 哉 (著) – 2015/9/12

いや、今、オンラインブローカーでも一般信用は選択肢にありますよ。まぁ、彼らが消費貸借契約を意識しているとは思えないですが。

P.124 アウトライトのショートなのか、ヘッジのためのショートなのかは、日々の空売り量の変化を見ていればわかることもあるだろう。ダイナミックヘッジをしているのならば、株価変動によって空売り数量が微妙に変化するはずだ。

空売りを伴うガンマトレードって一般的なのかなー? CBはそうなると思うけど、後は原則、スペキュレーターが株の買いの方向、すなわち、顧客のコール買い、プット売りに対して、受けて発生したポジションの”ヘッジ”だと、株は買いのガンマトレードがほとんどだと思うけど。スペキュレーター(ヘッジをしない客)が株売り方向の”オプション”を組むことはかなりレアケースのはず。

P.125 金融機関にいる人間ならば、「燃料価格のヘッジを先物で行って、結果、損を出したのだろう。それが何か問題か?」となるのだが、

いつの話なのだろうか? 前にも書いたが、ヘッジが有効なのは競争相手がいない場合だけだ。

燃料価格のヘッジを完璧に行っている会社は、燃料価格によらず、一定の価格で提供できる。だが、自由競争下で、ヘッジを行っていない競争相手がいる場合どうなるだろうか? 燃料価格が下がったら、安く提供しているアンヘッジの競争相手に客が流れ、燃料価格が上がった場合のみ、ヘッジして一定価格で提供できる会社に客が来る。よって、ヘッジをして価格を動かさなくても、客数の変動のリスクがあり結局ヘッジに意味はない。価格ヘッジが有効”だった”のは、ナショナルフラッグなどと言い、国際線を独占していた時代なら可能だが、少なくともこの10年、LCCなども入り込んでいる中で、まだヘッジをしているとしたら、JALしか飛ばしてない便の分だけの量が適切だ。

ついでに、電力自由化で電気代が安くなるなどと安易に言っているが、空のグローバリゼーションと同様、ヘッジができなくなれば、エネルギー国際価格に電気代が振り回されることになることを、日本人は理解した方がいい。

エンロン内部告発者 5/6~電力自由化の下の悪意ある供給者