スワップ取引をブッキングした瞬間に真の評価益が出るから、インチキが周囲にすぐばれるはずだ、と思うでしょう。いやいや、デリバティブズの場合はごまかしが可能なのです。あげればキリがないほどありますが、その中の1例として2011年にある証券会社で評価損が1000億円以上発生してしまったデリバティブズのポジションが話題となりました。突如、1000億円以上の評価損が現れたのです。トレーダーが、自分の巨額損失ポジションを意図的に評価益が出るように操作していたことを、社内の誰も気づかなかったのです。これだけの規模のごまかしが可能なわけですから、ましてや、日々の小さいディールで、しかも、利益を過小評価、すなわち保守的に評価するのであれば、まぁ気づかれることは無いでしょう。
身内に厳しい三田さんのご意見に異論はありません。デリバティブズにそういう面があるのは事実です。デリバティブズであっても、先物や上場オプションにはAsk/Bidがありますので、評価値はその間になければなりません。非常に狭いAsk/Bidなので、そこを動かしても大して大きく損益をごまかすことはできません。また上場モノ以外でもOTCで取引されているものも同様ですが、Ask/Bidが広い場合は若干の裁量権が発生します。三田さんが言及しているのは対顧客で発生したエキゾチックデリバティブはこの世で顧客とカウンターパーティであるデリバティブ・デスクにしか存在しないので、価格を取るのと反対売買はほぼ不可能です。この場合、かなりアウトなボラティリティのレベル、相関係数などで評価を動かせます。一方、損失引当金(リザーブ)のポリシーや評価モデルの変更で天地がひっくり返ることもあります。