ボニー・パーカー 禁酒法時代を駆け抜けた明日なき青春
わたしが青春を送った1960年代後半、日本の高度成長がもう始まっていたとはいえ、庶民はまだまだ貧しく欧米
のブランド品など並の若い女の子ではとても買えなかった。ルイ・ヴィトンだグッチだといまのように誰でも持てるよ
うになったのは、せいぜい10年ほど前からではないだろうか。(1995年著) お洒落もあの頃は奇妙なほどワンパタ
ーンだった。ミニスカートが流行れば日本全国ミニスカートだけになり、逆にマキシが流行れば全員、スカートの裾を
ぞろぞろと長く引きずって歩いた。ひとつの流行にみんなが右へならえしていたのだからこっけいな光景だったとい
える。豊な時代になりつつあったとはいえ、まだほとんどの人が自分の感性や価値観といったものに自信を持って
いなかったのだろう。だから欧米の流行をそのまま取り入れ、そっくり真似るほかなかったのだ。映画もこの頃がら
りと変わった。ハッピーエンドではなく、主人公がモラルも秩序も無視して生き急ぎ、あげくの果てに悲惨な死をとげ
る、というのも好まれた。世界的にヒットしたのが、アーサー・ペン監督の『俺達に明日はない』だった。『ボニーとクラ
イド』というのがこの映画の原題である。ボニー・パーカー、クライド・バロウという、実在した二人組のギャングがモ
デルとなっている。ちょうどこの頃、ウーマンリブなどの運動を中心に、女性の意識革命が進行していた。しとやか
で従順な女なんてもうやめよう、たとえ男性から可愛くないと思われても自分の力で自分の人生を生きよう、という
ことで、”いい女”の定義が大幅に変わりつつあるときだった。
>残念なことに、それは一時の見せかけの流行であり、いい女の定義は2011年の現在も大して変わってはいない。
>しかし、一辺倒な流行を追いかける様は、確かに自分の感性に自信がない証拠だろう。今でも名残は十分にある
>が、昔に比べれば女性のファッションの多様性は十分にある。そして、経済成長の頂点、すなわちバブル期におい
>て、なんら経済活動をしていない若い女性たちがタカビーになるのはなぜだろう? 彼らはどこからその感性に対す
>る自信が沸いてくるのだろうか? @2007年中国にて思う。
映画ではクライドの兄の妻ブランチのキャラクターが印象的に描かれていた。ブランチは男にすがって生きる女であ
る。夫が銀行強盗をやるといえば、それに従う。そのくせ、私にはこんな生活向いていないのよと、年中、愚痴をこ
ぼしている。思えば、あのブランチ像は従来の「可愛い女」をパロディ化したものだったに違いない。60年代あたりか
らそのような女を女自身が嫌い始め、かわりに自分の意思で行動する女が「いい女」としてクローズアップされてきた。
ハリウッドでもフェイ・ダナウェイを皮切りに、シガニー・ウィーバーやキャスリン・ターナーなど、強い女、戦う女タイプの
女優に人気が集まるようになった。葉巻をくわえ、拳銃を片手にしてポーズをとるボニーの写真が残されている。
>いまでも女から「可愛い女」は嫌われているが、自分の意思で行動しようという現われではなく、ライバル排斥運動
>にすぎず、可愛い女を否定しておきながら、自分だけは抜け駆けして、すがる女になろうとする。それが民だッ!
川島芳子 男装のスパイとして暗躍した清朝の王女 こりゃ、すごい人なんだけど悪女ですかね?
川島芳子の父親は粛親王といい、中国が清王朝だったころの筆頭王族であった。1911年に起きた辛亥革命で、粛
親王の一族も革命派によって北京から旅順へと追われていった。この時、逃亡の手助けをしたのが、川島浪速とい
う日本人だった。日本の力を借りて清王朝の復興をはかろうとする粛親王と、大陸で名を売ろうとする川島とは、利
害関係が見事に一致した。1906年に生まれた芳子は、1914年、東京・赤羽で日本人として育てられることになった。
1927年蒙古の勇将パプチャップの遺児、カンジュルチャップと政略結婚させられたが、蒙古の大草原の暮らしも性に
合わず離婚。上海に渡り、田中隆吉という陸軍少将、諜報活動のプロと出会う。中国国民党幹部の連中で色仕掛け
で近づき、日本軍のために役立つ情報を探り出した。その頃の芳子は、日本が中国を救い、それで清王朝復活が実
現することを本気で信じていたようだ。芳子をモデルにした村松梢風の『男装の麗人』は大ベストセラー。昭和23年3
月25日、芳子は北平第一監獄にて銃殺刑に処せられた。それから2ヵ月後、日本の新聞に奇妙な記事が載った。
川島芳子はまだ生きている。処刑されたのは偽者だというものだ。以来、芳子生存説は根強く囁かれ続けている。
>生存説。かっくいいなぁ。
ジョルジュ・サンド 若き芸術家たちと愛の遍歴を重ねたスキャンダル作家
実名オーロール、19世紀前半のフランスの話だ。愛人だった弁護士、ミッシェル・ド・ブールジュの助けを得て、1836
年、オーロールは離婚を成立させた。完全な自由を手にした彼女は、恋をし、小説を書き、ルダンゴトと呼ばれる男性
服を着て、煙草をふかしながら街を歩いた。彼女は奇をてらって男装をしたわけではない。当時の女性の服装は、非
常にお金がかかるものだった。オーロールはいつも経済的に困窮していたので、安上がりな男装を選んだだけである。
それに男だと思わせることでどこへでも自由に出入できた。男装はこだわりのなさ、旺盛な好奇心をものがたるものだ
ともいえる。たくましいこの女流作家の前に病弱で繊細、しかもきらびやかな才能を持った男、ショパンが現れた。まさ
しく彼女好みの男、彼女好みの恋である。ふたりは太陽と月、母親と息子のような組み合わせだった。年齢もショパン
のほうが6歳年下である。
>そうか、ショパンの愛人か。いや、ショパンが愛人かな?
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