1.アンダーライングのボラティリティに問題がある商品

1)原油 Long
2020年4月24日、原油価格がマイナスまで到達した。マイナス価格が許容されている場合、レバレッジなしでも純資産価値がマイナスになることを防ぐために、0近辺で損切すれば、経路依存性が生まれる。

2)VIX Short
2018年2月5-6日、1日で価格が2倍以上になれば、純資産価値マイナス。

3)VIX Long
VIXは大雑把に言えば、Deep OTMのストラングルに近い。この例えが気になる諸君は、詳細はLog Contractでググるか、以下を見てほしい。

ボラティリティ・インデックス、VIXとは何か?
https://ichizoku.net/derivatives/20130709/what-is-volatility-index/

OTMは、Implied Volatilityが高いので、それを買い続ける戦略の期待値はマイナスになる。

アウトオブザマネーのプットは意外にヒットしない
https://ichizoku.net/derivatives/20141031/far-out-of-the-money-put/#more-1752

ここで行われているシミュレーションは、1枚君を続けた場合である。資金が無限にない限り、1枚君は続けられないので、少し甘いシミュレーションの仕方だ。OTMを買い続けていれば、リーマンショックまで資金が順調に減り続ける。勝つ頃には、資金が小さすぎて、一晩で2倍になってもトータルで負けているということになる。
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=1552.T
5000円から25000円というボラティリティロマンだが、10年に拡大すると基準値は1/300ほどに下がっていることが分かる。一方のVIX Shortはこの逆で、勝ち続ける。ある日突然死ぬ日が来るまで。

4)値幅制限
レバレッジとアンダーライングのボラティリティ次第では、ETFが東証の値幅制限に引っ掛かり、純資産と価格が大きく乖離することもある。今回の原油相場でダブルブルの純資産の下げは価格の下げより大きく、ストップ安で買って、次の原油が戻しても価格が下がるという事故まで起こりうる。

2.リバランス・トレーディングに問題がある商品

1)レバレッジ
ダブルブル・ダブルベアなど、レバレッジが内包されている商品全般に言えることは、エクスポージャーを保つために、上がったら買い、下がったら売るを繰り返すので、行って来いの相場で基準値が下がる。算数で計算できるのだが、それを具体的に計算したのが、

素人がハマっている必負法 1/3 ~日経レバ2の行く末
https://ichizoku.net/equity/20140425/leveraged-etf/#more-1639

おまけ:買ってはいけない商品ならショートすれば良い、と安易に考える人が多いが、危険なシナリオがありうる。ブルの場合は連騰、ベアの場合は続落、これらが買っている人が最も効率的に儲かり、ショートセラーが踏まれる。連騰相場でドンドン買い増していくので、2Sを積分したx^2が持つガンマショートが効いてくる。

2)ロールコスト
原油、VIXが持つ期間構造。コンタンゴ、バックワーデーション。どっちとも言えないから有利不利は無いように思えるだろうが、アンダーライングが下がり安いから買いという時はコンタンゴ、高いから売りという時はバックワーデーションとなっているだろう。持てば持つほど、不利なロールコストが発生する。

3)日経平均指数
単純平均の問題点、値ぐらいが影響するという欠点を克服するために、みなし額面などという、意味のない数値を使っている。それでもアンバランスなウェイトの偏りが発生していて、日本経済を反映させる指標として不適切。無知な日経新聞社が銘柄を選定している、2000年の銘柄入れ替えで懲りただろうが、また別の要因で発生しないとも限らない。

4)マザーズ指数
時価総額加重の浮動株調整済み、ほぅ、歴史に学んだか、指数の計算方法に問題はないが、市場構造が問題だw残念。つまり、最も重みが多いトップ銘柄が、東証一部に抜けていく。指定替えの価格エラーの影響が大きく出やすい。そして上がらないクズ株が残り続ける。

3.価格形成に意図的に問題(業者にとっては収益)を発生させている商品

1)一物多価性
日本個別株の夜間PTS、アメリカ個別株のアジア時間の円建て決め商い、CFD。わざわざ時間をずらすことや市場替えをして取引所集中義務、一物一価から逃れようとしている業者の罠だ。しかも、手数料無料などとうたっていると報告を受けている。プロの世界の「取引コスト」を説明しよう。

取引コスト=手数料+Ask/Bid Spread+Market Impact Cost

小さな金額の場合はマーケットインパクトは無視してよいが、一応説明すると、自らの買いによって市場が上がってしまうコストのことである。HFTに先回りされるコストはこれに含まれる。
Ask/Bidも姑息なことに真ん中がずれているケースがある。例えば成田の出発ゲートでは円売り不利、円安気味にクォートをだし、到着ゲートでは、円買い不利で円高気味に真ん中をずらすだけで、需給の偏りを吸収できてしまうのであるw ゴールドマンのイーワラントに至っては、この売買の非対称性をフル活用し、客が買いからしか入れないので、OTCよりAskもBidもめちゃくちゃ高く設定してある。

2)クオント
東証に上場しているダウ先。実は闇が深いwこれは指数先物なので時間が取引も良いだろう。問題はNYダウ指数値×100円だw知ってたかね?CMEのドル建て日経平均と同じで、このようにアンダーライングと支払い通貨が異なる商品をクオントと呼び、ガンマはないが、ベガがある立派なエキゾチックデリバティブだw

ダウ指数現物とダウ先物ドル建ての違いは金利と配当がずれるだけで短期では非常に近いと言える。ところがダウ先物円建てとは、為替分までずれてくるのがお分かりだろうか? だから、クオントの理論値には
F=S*exp((r-q-ρcv)t)
ρは為替と株の相関係数、cは為替のボラティリティ、vは株のボラティリティという項が入り込みタイトにマーケットメイクすることを阻害している。しかし米国市場のOTCでは円クオントのフォワードが指数・個別株ともに存在しているのでアジア時間のマーケットメイカーの怠慢、東証の市場形成プランの失敗作といえよう。