「株価の割高・割安を判断する投資指標として、PERとPBR」というのは妥当な言葉であるのだが、その逆を言われると可愛い弟子たちに「ちょっと待て」と言わざるを得ない。つまり、
「PERが7倍だから安い。PERが100倍近いアマゾンは高い。アップルやマイクロソフトはPBRが高く、日本の家電メーカーはPBRが低いから割安」
というような発言を聞くと、「うーん、そりゃ大きな勘違いだな」と言わざるを得なく、「そうじゃないんだ」と苦労して説明している様子をご覧いただこう。
四半期ごとに発表されるEPSが市場コンセンサスと比較してどうなのかで株価がJump Diffusionを起こす米国市場において、”PERのE”は確かに重要なのであるが、PERが低い会社というのを一度見て欲しい。PER・PBRが異様に低い、あるいはROEが異常に高いでも良い。その会社、本当に買いたいと思うか?
PERとPBRのリストの入手ができないというので私がプレゼントしたのが、下記の表である。(あまりに美しいので載せてみた)
US-Major-PER.gif
確かにアマゾンは目立って高いPERであるわけだが、赤字予想なだけで計算不可能になる単年度EPSを基に計算したPERにどの程度意味があるのか? という教育のために、Estimated EPSから計算される期待純利益と去年の実績純利益を載せ、さらにここでは割愛しているが過去10年の純利益も載せてあった。
セクターで言えば、安いのは金融セクターになるが、一発デカイ損失出せばぶっつぶれてしまう銀行買いたい?
PBRが80倍もあるフィリップモリスが割高かって、アルトリアからスピン・オフの時に剰余金に当たる資本をアルトリアに置いてきた、”いびつな過小資本状態”で、圧倒的なブランドバリューにより倒産リスクなど誰も考えていないので、PBRよりはPERでバリュエーションされているに過ぎない。
> P.E.というものは見なくてよいということでOK?
P.E.は割高・割安の判断指標として、一番よく見られている指標なので重要です。Price Earningsだから、そのEarnings=Net Incomeはどんな意味があるのか?ということを考えずに見てはいけない数値ということです。
> これを底値と見るかどうかって判断はPBRとか見ないとならんの?
おっ、陰ながら勉強しているようですね。
仮想的買収可能価格 (今考えた言葉)
「PBRは2倍が標準」 = 2倍未満だったら、全部買って(51%)、会社を売ればいい
この根拠は、株を51%握ればその会社を蹂躙できます。なので、その会社を手に入れるのにかかるコストは時価総額の半分。それが株主資本(PBR=Price Book ValueのBook)より小さければ買収すれば儲かるという妄想です。
あくまで総資産と負債の売却時価がバランスシート通りにいけばの前提ですが、そうではないことを市場は知っています。ですから、日本の電機大手がPBR1倍を割る水準ですが、それは安いか?今年入ってから各社数千億円の赤字決算見通しを発表しました。純利益が赤ということはその分、株主資本が欠損します。数千億円も減ると株主資本は数十%の単位で削られるということを市場は知っているレベルで取引されているということです。
P.E.が低いという理由で買う気がしなくなるリストを作ってみた。
今度はNasdaq Compositeをユニバースとして、0<PER<5でスクリーニングした結果があまりに笑えるのでご覧いただきたい。
Nasdaq-Low-PE.gif
なーんかChinaとか中国を連想させる名前が多い。コイツら、買いたい?
名前だけしか見ておらず、ただの一つの財務諸表もチェックしていないので、中国系銘柄が全部詐欺銘柄と言うわけではないが、国家統計ですら怪しい中国の企業が、会計基準・経営者の倫理観・情報開示の観点で信用されていないのは周知の事実である。
【投資方針】
2011.05.27: 株メール Q10.PBRの計算 ~LYNAS編
2010.09.30: 株メール Q9.俺が言ってるのはStrategyではなくTacticsだ
2010.09.08: 株メール Q6.株価を買わず会社を買う
2010.08.04: 無駄遣いを止める方法
2009.12.28: よくある素人の資産運用=老後の心配 
2009.05.14: 2009年度予算案 
2009.04.15: 貯蓄率にみる人々の自信度合い 
2008.10.17: 最近数ヶ月の投資総括 
2008.07.04: 投資人生の必要条件
2008.05.14: 自分自身の財務諸表