記者が悪いのか、ビリニー氏本人の発言に問題があるのか? は不明だが結果としてできる文章がバカ丸出し発言になるからメディアは嫌いだ。
イライラする発言1 「今年1600を突破する確率は50%超」
50%ではなくhalfとか半分なら良いのですが、下手に数値を使うと、逆にいいかげんな発言という印象を受けるのは私だけでしょうか?
かなり変わった相場観ではあるが、確率を予想するような相場観もオプションプレイヤーは認めよう。
1yearの7%アウトだから、それほど”遠い”価格帯ではないので、リスクニュートラル確率で見ても30%くらいはある。
N(d1)=リスクニュートラル確率=Delta=Digital≒Call Spread
で、ある期間Tに、X円以上になる確率そのものを取引することができる。Digital Optionなど使わずとも確率の取引はCall Spreadで大体近似できる。日本人読者諸君にもわかりやすくするために日経の上場オプションで説明すると、4月SQまでに12000円を越えるリスクニュートラル確率は、
(行使価格11750円のコールオプションプレミアム-行使価格12250円のコールオプションプレミアム) ÷ (12250-11750)
(255円-130円)÷500=25% 先物11390円2月6日現在
で求まる。大体デルタと同じになるが四則演算のみで確率微分方程式は使ってないぞ!
今年の7月から制度改正で125円刻みになるらしいが、250円×2=500円=5%だと粗すぎると思うなら250円のCall Spreadでも十分に近似可能である。
にもかかわらず、
イライラする発言2 「SPDR・S&P500ETFトラスト」の行使価格160ドル、12月満期のコール(買う権利)を購入した」
もうやだこの国ってコイツはアメリカ人なのかもしれないが。今年1600を突破する確率50%超だから・・・と順接の接続詞で続くのに正当なポジションは160ドル行使価格のコールではなく、159-161、コールスプレッドのロングとなる。上がると思うからコール買い、下がると思うからプット買いという文言が一般メディアでは目立つが、まさに素人の”間違ったオプションの利用方法”なので、ここで否定しておこう。上がる下がるの相場観しかないならば、先物の方が効率的なのである。
初心者向けに、損失限定のオプションの買いが無難で安全だ、という傾向があるが、コールの素ロングは数多あるオプション戦略の中でかなりなハイリスクなポジションである。その恐ろしさには依然触れたのでその記事
2012.05.21 Calender Spreadのススメ3 ~期待通りの期待値曲面
を参照して欲しいが、行使価格160ドルのコール素ロングが意味する相場観は、超強気、SP500が1600ポイントを優に超えるということである。1800-1900ポイントくらいまで上がった時においしいポジションなのである。
Feb 1 2013 S&P500が1600を突破する確率50%超、投信資金流入で-ビリニー氏
【記者:Sarah Pringle】
1月31日(ブルームバーグ):米株式市場調査・資産運用会社ビリニー・アソシエーツのラズロー・ビリニー社長によると、S&P500株価指数が今年1600を突破する確率は50%超で、株式投資信託への資金流入と予想を上回る企業利益が追い風になるという。
S&P500種が過去最高値1565.15を超えて1600に達するには、現行水準からあと6.7%の上昇が必要。ビリニー氏は2009年に始まった強気相場に先立って米国株の買いを勧めていた1人。同氏は顧客向けリポートで、、「SPDR・S&P500ETFトラスト」の行使価格160ドル、12月満期のコール(買う権利)を購入したことを明らかにした。
同氏は「われわれは前向きだ」と述べ、「投資姿勢の転換が見られる。投資家は投信を売るより買い始めている」と指摘した。調査会社EPFRグローバルの集計データによると、1月9日終了週の世界の株式投信への資金流入額は約220億ドル(約2兆円)と、統計をさかのぼれる1996年以来、2番目の高水準だった。S&P500種は今月5.1%上昇し、1997年以来最高のスタートを切っている。米連邦準備制度理事会(FRB)が低金利維持と景気押し上げに向け債券購入を拡大する中、S&P500種は2009年に付けた12年ぶりの安値から2倍強
に上昇している。
S&P500種は現在、07年10月に付けた過去最高値を約4%下回る水準。ダウ工業株30種平均は最高値まであと2%弱に迫っている。ビリニー氏はまた、米経済や住宅市場の強さも同国株に強気になる理由として挙げた。全米20都市を対象にした昨年11月のS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で5.5%上昇と、06年8月以来の大幅な伸びだった。
原題:S&P 500 Has More Than 50% Chance at 1,600, Birinyi Says(抜粋)
【市場と実戦:Vanilla・幾何ブラウン】
2012.08.20 野村日本株投信(豪ドル投資型)1208設定日
2012.05.15|Calender Spreadのススメ2 ~株価と時間軸上の損益曲面
2011.12.16: FIAに行ってきました
2011.10.20: 日本のオプションは最も割安な水準
2011.02.25: 噂の真相 ドイツ銀:韓国でデリバティブ取引禁止処分
2010.11.08: 三田氏を斬る ~多彩な商品、Vanilla系
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2010.05.14: オプションの清算値の計算方法 これは一体何の計算??
2009.09.29: Black-Scholesは間違っている
2009.06.16: VAR SWAPのGamma+VanillaのGammaでGamma Neutralになるか?
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2007.12.01: 初めて会った時から好きだった
最近、クオントに関して考察しています。
ニューメレール変換などの定量的な解説、数式展開などは本に載っているのですが、数式の定性的な解説がなされているものがなかなか見当たらず、「感覚的な理解」が出来ずにいます。。
もし良かったらご教授頂けないでしょうか?
こんばんは。最近、クオントに関して考察しています。
ニューメレール変換などの定量的な解説、数式展開は本に載っているのですが、数式の定性的な解説があるものがなかなか見当たらず、「感覚的な理解」が出来ずにいます。。
もし良かったら、ご教授頂けないでしょうか?
変換部分の感覚的な理解とは、なぜρσ(s)σ(c)という項が出てくるのか?ということだと思っていますが
クオントは、Undelying通貨とPayment通貨が違います。ここでクオントの復元ポートフォリオを考えると、なぜこの項が出てくるかわかります。
もっともシンプルなクオントは、CMEに上場しているドル建て日経先物です。これを円の先物で復元する時に為替が関与します。株価がまったく変わらなくても、円が安くなると、円の日経先物を多く当てないと、ドル建てでのリターンが出せなくなります。逆に円が高くなれば、円の日経先物のエクスポージャーが余るので、減らさないといけないからです。
かなりシンプルに説明してしまいましたが、クオントの復元ポートフォリオのリバランスのオペレーションを実際にやる、あるいは紙に書いてみると相関や符号の意味も自然に体感できます。
コメントありがとうございます。
>株価がまったく変わらなくても、円が安くなると、円の日経先物を多く当てないと、ドル建てでのリターンが出せなくなります。逆に円が高くなれば、円の日経先物のエクスポージャーが余るので、減らさないといけないからです。
為替のリターンの部分を日経の株価Vol,為替Vol,相関を考慮した株のデルタで補うという事でしょうか?
もしおっしゃるように、株価が全く動かない場合は先物で調節したとしても株のデルタでの収益はゼロだから補う事が出来ないのではないでしょうか?
たびたびの質問、申し訳ございません。
手を抜いて書きすぎましたね。すいません。
例えばある日の株価が10000円だったら10000ドル払うというクオントフォワード(先渡し契約)があったとします。
今、1ドル=100円だとしたら、その株を100株買うと株部分ヘッジができます。
このままでは100万円分の株を持っているだけなので、今度は円売りドル買いフォワード、100万円売り、10000ドル買いを入れると為替部分もヘッジができます。
では100株と1万ドル・100万円の為替のフォワード契約の和である復元ポートフォリオのリバランスのパターンとして
1)株価が10100円 1ドル100円
1′)株価が9900円 1ドル100円
2)株価が10000円 1ドル101円
2′)株価が10000円 1ドル99円
3)株価が10100円 1ドル101円
3′)株価が9900円 1ドル101円
4)株価が10100円 1ドル99円
4′)株価が9900円 1ドル99円
という8通りのシナリオの時にこのヘッジポートフォリオの収益がどうなるか? を考えてみるとわかります。
ちなみに、復元ポートに、”円売りドル買いフォワード”が入っているから、為替と株のボラのクロス項以外の金利部分の項r(p)-r(u)も出てくるのがわかります。
1)収益 = 10,000円
1′)収益 = -10,000円
2)収益 = 10,000*exp(-usd金利*T)円
2′)収益 = -10,000*exp(-usd金利*T)円
3)収益 = 10,000*(1+exp(-usd金利*T))円
3′)収益 = 10,000*(exp(-usd金利*T)-1)円
4)収益 = 10,000*(1-exp(-usd金利*T))円
4′)収益 = -10,000*(1+exp(-usd金利*T))円
8パターンの収益はこんな感じでしょうか。
言葉遣いが不適切でした。損益計算というよりリバランスコストを計算するというのが適切でした。
デリバティブの価値=復元ポートフォリオのイニシャル+リバランスコストの総和=イニシャル+復元ポートフォリオの変分×相場変分
普通の株のフォワードであれば、イニシャルで株を買っておしまいなので、初期コストのみです。
ところがクオントフォワードの復元ポートフォリオは 100株、100万円売り10000ドル買いフォワード の2つですが、リバランスが発生します。
(1)の例では株価の変動は為替先渡にリバランスを引き起こすということを示そうとしています。
つまり、リバランス後の復元ポートフォリオは100株、101万円売り10100ドル買いフォワード です。
株でのリバランスは起こらないので、株部分のリバランスコストは0です。1万円売り100ドル分の円売りを積み増すわけですが、これも為替が変動していないので0。
(2)の例では為替の変動は株数にリバランス
復元ポート・リバランス後は、101株と100万円売り10000ドル買いフォワードになります。
為替変動によって1株買いつまり1株分のショートなのですが、残念ながら株価は変わってないので収益0です。為替先渡は変化なしです。
3)は1株ショートが生まれて100円上がっているから株で-100円、さらに10000円分の円を売り増しが生じ1%安く売るのでー100円、合計-200円
3′)は1株ショートが生まれて100円下がっているから株で+100円、さらに10000円分の円の買い戻しが生じ1%安く買い戻せるので+100円、合計+200円
こうして計算していくと、(1)-(2′)はNo Impact。3′)の株安・円安と4)の株高・円高という順相関がFavor,3)と4′)の逆相関がUnfavorな結果になるはずです。だから教科書では+ρσ(S)σ(c)となっています。ところが円の為替レートは商習慣上、逆に表示するので為替レートを1ドル100円の表示で見ている場合は、100円から101円の円安は+と評価するので、-ρσ(S)σ(c)となります。意味わかります??
基本的な損益計算の注意点としては、ペイアウトがドルのクオントなので、ドル建てで損益計算します。それが繰り返し述べている測度変換の意味です。
(ただ1ドル100円という表記の慣習上、円建てのほうが理解しやすいので円でもOKですが・・・)
それから金利部分まで厳密に表現するならば、為替のフォワードは両通貨立てているので、ドル金利と円金利が各々のキャッシュフローにかかるという原則なので、必ず二つの金利が出てくるはずでドル金利の受け、円の払いなので、それを価格に転嫁してr(USD)-r(JPY)と式はなっているのです。
とても丁寧な解説ありがとうございました。すごく納得できました。
3,3′,4,4’に関しては、イニシャルのクオント、株、為替フォワード、変化後の状態、再びイニシャルの状態と順番に紙に書いて考えると良く分かりました。
例えば3では変化後、新しい100ドルの新しいクオントのショートが出てきて、それをヘッジするために10100円で1株と100ドル買い10100円売りの為替フォワードを買い足す。イニシャルの状態に戻して再びリバランスと株で100円、為替フォワードで100円、合わせると、おっしゃる通り、200円のマイナスになっています。3,3′,4,4’ともに同様に考えました。
細かい点なのですが、(2)に関しては株数はリバランスする必要はあるのでしょうか?
>だから教科書では+ρσ(S)σ(c)となっています。ところが円の為替レートは商習慣上、逆に表示するので為替レートを1ドル100円の表示で見ている場合は、100円から101円の円安は+と評価するので、-ρσ(S)σ(c)となります。意味わかります??
すごく良く分かります。本によって+だったり-だったりで。そもそもこの+と-をはっきりさせたいというのが今回、質問させて頂こうと思ったきっかけでした。
(2)に関しては株数はリバランスする必要はあるのでしょうか?
あります。それは同じクオントフォワードですが、為替レートが1ドル=200円だとしたら、株数は何株買わなければならないか? を考えれば明らかです。
10000ドル渡すということは10000ドル×200=2,000,000円のエクスポージャーとEquivalentなので2,000,000÷10,000で200株買わなければなりません。ということは1ドル=101円ならば・・・。
すいませんでした、おっしゃる通りです。
円建てで考えるとクオントのデルタアマウントはSpot*Fxなので、株数にするとFxですね。
従って、1ドル101円の時のクオントのデルタは101株ショートなので1株買い足す必要があります。
今回の解説のおかげで未熟ながら、理解を深める事が出来ました。
どうもありがとうございました。
すいませんでした、おっしゃる通りです。
円建てで考えるとクオントのデルタアマウントはSpot*Fxなので、株数にするとFxですね。
従って、1ドル101円の時のクオントのデルタは101株ショートなので1株買い足す必要があります。
今回の解説のおかげで未熟ながら、理解を深める事が出来ました。
どうもありがとうございました。
またご気軽に質問してください。一歩一歩の歩み寄りを感じながらのやりとり、なかなか面白かったです。