様々な観測記事が出ているが、もっともらしいもので一つ取り上げるとWSJの
https://jp.wsj.com/articles/SB10837142715531234745304586611582877030342
記事から抜粋すると、

ソフトバンクは今春、アマゾン・ドット・コムや マイクロソフト 、 ネットフリックス などハイテク大手やテスラの株式40億ドル近くを取得した。この公開資料には含まれていないが、巨額のオプション取引もある。関係者によると、株式相場が一定水準に上昇すれば清算される仕組みで、その時点で利益が確定される。

ソフトバンクは取得した現物株や他の銘柄に連動するおよそ40億ドル相当のコールオプションを購入。さらに、はるかに高い価格でコールオプションを売却した。

ソフトバンクの場合、約40億ドルのオプション契約でおよそ500億ドル相当のエクスポージャーが発生した。

一方、bloombergでは、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-06/QG8V71DWRGG401?utm_medium=social&utm_source=twitter&utm_content=japan&utm_campaign=socialflow-organic&cmpid%3D=socialflow-twitter-japan

ソフトバンクGがここ数カ月に約300億ドル(約3兆1870億円)相当の株式に関連したオプションに投資し、約40億ドルの含み益を得ていると報じた。

と細かく見ると違いがあり、元の記事が「憶測」に過ぎないのだが、それでも大体の推定はできる。そして、40億ドルと500億ドル(5兆円分の株の買いと同じ!)などの数値が、分かってないメディアやYoutuberなどの素人どもの間で錯綜していて、聞くに耐えないので、ここで俺が推測してやる。

WSJの記事に焦点を当てると、最初のパラグラフの

アマゾン・ドット・コムや マイクロソフト 、 ネットフリックス などハイテク大手やテスラの株式40億ドル近くを取得した。
株式相場が一定水準に上昇すれば清算される仕組み

この2つの文章が意味するのはカバードコール。ナスダックの想定外の早い戻りで、あっという間にデルタがなくなった。だからその含み益をダブルアップ。

40億ドルのプレミアムで500億ドルエクスポージャーということは8%プレミアムのコールスプレッド取引。ではどのくらいの長さと行使価格なのだろうか?

AMZN,NFLX,TSLA,GOOG,MSFTなどはTSLAを除けばIVは50%弱とすると、
1yearのCall Spreadは、100-125
これだと

はるかに高い価格でコールオプションを売却した。

125は、「はるかに」とは言い難い。
1yearのCall Spreadは、130-200くらいだと「はるかに」と一致する。
6Monthまでに縮めると、115-180くらい。これも「はるかに」遠いと言えると思う。
それ以上短くすると、いずれも近づきすぎて、「はるかに」の記述に合わなくなる。
逆に2yearsにすると130-175だと、最大のリターンが小さすぎる。

さすがの孫さんでも3Mのコールスプレッドに4000億円は博打すぎるので、
6M 115-180 とか 1yrの130-200 くらいが妥当な線だと思う。

いずれにしても500億ドル分の株の買いとか、ナスダックの上昇に影響しているとかいう観測記事は完全に間違い。

コールスプレッドだと、500億ドルノーショナルに対するデルタは20~30%程度。そうすると100憶ドル。この5銘柄の売買代金は1兆円弱~2兆円ほどある。売買代金の10%程度くらいまでは特にマーケットインパクトをかけなくても取引できる。仮に5銘柄を1日で発注したら2000億円相当だから、銘柄によっては確かにインパクトがあるが、コロナ後ナスダックの回復を牽引することは不可能。

コールオプションの買いを受けた銀行が、相場を上げるほどのヘッジをしたってのは500億ドルノーショナルのコールスプレッドでは無理なのだよ。