インドネシアの成長力に投資したいという声を聞いたので、大きく2点に分けて説明していこう。
1.投資効率と金融市場 : ETFとIndexの比較>(トラッキングエラー)
2.対外債務と外資依存性 : ETF同士の比較(通貨調整)、Index同士の比較
先進国市場の完備性も美しいが、エマージングの爆発力と成長力に賭けたいという気持ちは非常によくわかる。だが一方、効率性すなわちマーケットアクセスにすでにコストがかかるということも忘れてはならない。
その意味でまず第一弾、インデックスとETFの乖離を見てみよう。
Market Vectors Indonesia ETF(IDX US)はMarket Value Indenesia Tracking Index(MVIDXTR)をベンチマークとしている信託報酬0.5%の上場投資信託である。
MVIDXTRは、ジャカルタ総合指数 JCIのドル建て指数と思ってよく、相関係数0.98の完全トラックである。
ところがジャカルタ総合指数(JCI)のドル建てとインドネシアETF(IDX)の相関係数を見ると0.888まで下がる。
jci-vs-idx.gif
相関係数がわかりにくい場合は、真ん中の黄色の線は、JCIとIDXの比率を示しているので、これが一定だと完全トラックとなる。黄色の線(比率)のブレを見るとよくて0.014を中心に0.013~0.016の範囲で動いているということは、10%くらいの乖離があり得ることを示している。(Indexが4倍になっているのだから10%くらいは気にするなと大らかな人は行って下さい)
大したことないと思われるかもしれないが、S&P500とSPDRの間のTracking Errorと比べると無視できるレベルではないほどの乖離となる。
ちなみに信託報酬0.095%S&P500(SPX)とSPDR(SPY)のRatioも同様に眺めると・・・相関係数0.994の怪獣トラッキング
spx-vs-spy.gif
S&P500とSPDRの比率(つまり黄色ライン)を見ると、10を中心に9.9-10.1の範囲で動いているので、1%しか乖離しないということであり、この規則的な波は四半期の配当落ちの影響がくっきり出ており、配当が終わればまたTrackするという恐ろしいまでの美しさを持った市場である。
またアジアにおいてインデックスはプライスインデックス(株価だけで計算しているので、高額配当があれば株主としては損していなくてもインデックスとしては下がるという実態に合わない問題点を含んでいる)一辺倒であり、欧州では意識されている配当を考慮したトータルリターンインデックスなるものは皆無に等しい。
インドネシアは、対外債務問題と外資依存体質から抜け出しておらず、デカップリングなどと言いながらも、金融危機が起こればグローバリゼーションの余波ももろに受けることを忘れてはならない。特に1997年のアジア通貨危機、日本では「タイバーツの暴落が・・・」と言われるが、実際に被害が大きかったのは対外債務が多いインドネシアであることも理解しておいたほうが良い。インドネシアがサブプライム証券を保有していなくても、リーマンショックをきっかけとする信用収縮がインドネシア経済を激しく直撃したことも記憶に新しいであろう。
ドルベースで取引されているETF同士(SPY:S&P500 ETF, IDX:JCI ETF)を比較すると…
spy-vs-idx.gif
どうだろうか? ほとんど同じ動きじゃない? という印象を受けたのではないだろうか?
通貨安と株安が同時に起こる問題、特に金利が高いインドネシアでは顕著な通貨安、米ドル中立で見た場合のボラティリティは高くなるので、単にSPYをレバレッジ取引すれば十分にDuplicateできてしまいそうなくらいの動きなのである。とはいえ、相関は0.65程度、0.65でもかなり似ているでしょう? Ratioは10から5までなので2倍のパフォーマンスというのも事実だが、IDXが上場されてから、つまり2009年からのブル相場しか反映されていないグラフであることを意識しておいたほうがいいだろう。
では最後に、嫌味なグラフを載せておこう。インドネシア経済20年の歩み、は実はアメリカと一緒だった。(笑、ワハワハ、マジで面白い)
ジャカルタ総合指数(JCI)とS&P500指数(SPX)の比較
jci-vs-spx.gif
安易に株式インデックスで比較せず、通貨を統一して見れば、実はまったく同じなんですねぇ・・・チャンチャン。それでも0.5%の信託報酬を払ってインドネシアに投資したいですか?
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