葛原が”逃し屋”の仕事を始めたのは5年前だった。初めは、自分自身の高飛びのための情報収集がきっかけだった。
高飛びを考えるものの多くは、とりあえずの脱出しか希望しないことが多い。もちろんそれはせっぱつまっていて、生きのびる
ことに夢中で、将来に考えが及ばないせいである。だが、香港や台湾、フィリピン、あるいは欧米などに脱出したとしても、
そこに骨を埋める覚悟が無ければ、高飛びは一瞬の成果でしかない
。孤独に耐えかねたり、生活資金が底を尽き、日本
に舞い戻れば、友人や縁者を頼り、結局追っ手につかまることになる。追っ手というのは警察だけではない。逃がし屋に莫
大な報酬を払ってまで国外逃亡をしようとする人間は、たいてい生命の危険にもさらされている。
骨を埋める覚悟? 孤独? 生活資金? ここだったらそんな心配はいらねーんだわ。
禁酒法の弊害、それは警察官の腐敗を生み出したことにありました。警官の誰もが禁酒法をまちがっている、と思っていた
からです。自分がそれを悪と感じていないがためにギャングたちの行為を見過ごすことになった。たとえ法律がどうあろうと警官
がそれを認めなければ、法の執行などできない。そしてこの悪法は、現代に至るまで、アメリカの警察組織に禍痕を残した。
犯罪者から金をうけとる、という行為の大いなる前例を作ってしまったからです。
好ましくない事例と前例。新しい道への突破口にはなりうる。
愛国心。難しい言葉です。言葉には、それを口にした瞬間、犠牲を強いてしまうものがある。たとえばこの愛国心。大切な言
葉だし、なくてはならないものなのに、なぜかこの言葉が人の口から発せられる時には、苦しみを伴う行為がそこにある。
愛国心。合理的でない考え方なのかもしれませんね。
国防と外交のために情報を集めたり、あるいはもっと積極的な活動をおこなう公的な機関は、日本以外にならどこの国にもあ
。警察には荷が重い事案です。しかし他に、これを扱うべき機関がない以上、警察がやらざるをえない。これを教訓に新たな
機関がもうけられることなどありえない。マスコミは反対するでしょうし、国民の大部分は、今ですらそうした治安情報機関を、
陰険で秘密主義のうちに税金を無駄遣いするところだと思っていますからね。

闇先案内人〈上〉 (文春文庫) 闇先案内人〈上〉 (文春文庫)

文藝春秋 2005-05
売り上げランキング : 245170

Amazonで詳しく見る by G-Tools

闇先案内人〈下〉 (文春文庫) 闇先案内人〈下〉 (文春文庫)

文藝春秋 2005-05
売り上げランキング : 228650

Amazonで詳しく見る by G-Tools

【海外労働関連記事】
2010.07.26: 闇権力の執行人 ~外交官特権
2010.06.18: 深夜特急2 マレー半島・シンガポール
2010.04.16: おら日本さいくだ from 特別行政区
2010.01.22: 駐在員・特派員・工作員・外国人労働者の違いを説明せよ
2009.06.10: 所得税不服申し立て成功 油断も隙もありゃしねぇ
2009.05.15: 納税通知書が来た
2009.05.14: 2009年度予算案
2009.05.13: 所得控除
2009.03.11: 海外駐在員を応援する
2009.01.28: Globalに通ずる現地化度Check試験設問2
2009.01.27: Globalに通ずる現地化度Check試験設問
2008.10.09: 海外駐在員のための証拠金取引
2008.10.08: 証拠金取引の効用