何も調べずに行ったのだが、私が最も驚いたルーブルの展示物は、「ハンムラビ法典」である。ハンムラビ法典がオブジェクトとして現存している、しかもルーブルにある、なんて知ってた?

20ユーロ以下で入れて、ミロのビーナスやモナリザなどの教科書に載っているような、ヨーロッパのアートが飾られている、見学時間は1~2時間で十分だろ、というのが私の認識だった。
(15ユーロの入場料、身分証明書を預ければ+5ユーロでNintendo DSによる日本語音声ガイド)

まず入場前に、ジャンヌダルク「民衆を導く女神」のポスターが貼ってあったので、「ほぅ、これもあるのか…、ジャンヌダルクだしフランスだし当然か…」。確かに建物大きいなぁ、と思ったが、実際にはコの字型の一部を見ただけなので、中心部の入り口から見れば三方を巨大な建物(ドゥノン翼、リシュリュー翼、シュリー翼)で囲まれており、宮殿・城である。通常の写真では無理なので、360度カメラか実際に見た方が規模がわかりやすい。
(よく見ると、民衆を導く女神は貸し出し中で今はありません、と書いてあるポスターだった。7月くらいまで、ルーブルで見ることはできない。)

全体の見取り図や展示物概略を事前に日本語で見ることができる。エジプト・メソポタミア・中東などのコーナーが目を引いた。クフ王のピラミッド、ツタンカーメンが日本に来たり(1974年)と子供にもわかりやすいオブジェクトがエジプト文明にはあるので、子供の頃は好きだった。

一方メソポタミア文明は、去年、ジャレド・ダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」を読んで、文字の開発は極めて難しかったことが書かれていた。

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) 文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
ジャレド・ダイアモンド 倉骨彰

草思社 2012-02-02
売り上げランキング : 558

Amazonで詳しく見る by G-Tools

エジプト、中国、そしてイースター島の例を除いて、歴史上、文字は、シュメール文字かマヤ文字から派生的に改良されたか、これらの文字の使用に刺激され考案されたものと思われる。文字を発明した社会がほんのわずかしか存在しないという事実は、文字システムをゼロから編み出すことの難しさを示唆している。シュメール人は少なくとも数百年、おそらくは数千年をかけて文字システムを完成させている。そして文字の発達にはいくつかの社会的要素が不可欠であった。文字が使用されるようになるには、その社会にとって文字が有用でなければならない。文字の読み書きを専門とする人々(書記)を食べさせていけるだけの生産性のある社会でなければならない。

この抜粋ではエジプトも文字を持っていたかのように書かれているが、エジプトの象形文字は現在のアルファベットと同じくらいの表現能力を持つ高等文字で、その起源はメソポタミアだったはず。吟遊詩人ホメロスのイーリアス(ギリシャ神話)なども、なぜ吟遊詩人かというと文字の開発前からギリシャ神話は存在していて口承伝播による継承であった。

https://ichizoku.net/books/20111202/bard/

その後、線文字A、線文字B、楔形文字と文字が発展していき、旧約聖書が今の形に近くなったのはギリシャ語訳の70人訳聖書。などなど、上記のように文字の開発は難しく、独自に文字を開発したのは、メソポタミア・中国・マヤくらいで、インド・ヨーロッパ語族に属する言語が持つ文字の起源はメソポタミアと思えば、メソポタミア文明の格が上がらないか?

ハンムラビ法典もそうだが、壁画や棺って芸術か? ツタンカーメンではないエジプトの棺、二頭の飛牛など遺跡の一部が置いてある。あるいは、マリーアントワネットやルイ16世の家具の展示は、今現在の感覚で見ると驚くに値しないが、逆に、今現在も彼らの生活様式を参考に家具や部屋の感じを作っていると思えば、フランス革命マニアには、面白い。美しい家具だが、家具も芸術? 歴史の展示とも言えるのではないだろうか?

エジプト・メソポタミア・フランス家具コーナーで3時間くらい費やしてしまったw

いわゆる「わかりやすい芸術」コーナーも回った。教科書やブラウザでしか絵画を見たことのない私にとって最も驚いたのが、「ナポレオンの戴冠式」の絵の大きさ。デカすぎて盗めないし、民が買える金額ではないものの、普通の家に飾ることは不可能。城に住んでいないと飾れないくらいの大きさ。ルーブル宮殿は外から見ると古めかしいが、中は綺麗に改装されていて、天井が高いブチ抜き構造。外から見た建物を覚えておいて…、中を回ると「こんな贅沢に縦スペースを使ってるんだ。」と感動できるw

その意味ではモナリザは見なくていい。ブラウザで見れば十分程度の大きさなので2秒ほど見れば良いだろう。モナリザの部屋は大きく、おそらく知っている絵が他にもいくつかあるはずなので、そっちを見れば良い。事前に調べて目標を定めても良いが、適当にフラフラ歩いて、「あっ、こんなのルーブルにあるんだ!」という楽しみ方も、十分に時間がある人はできる。ちなみに私は1~2時間で帰る予定が、5時間半も滞在してしまった…。

オルレアンの乙女の使命、ダイヤのエースを持つ詐欺師など偶然見つけてしまい、触れるほどの近くで見ることができる。