資産運用と呼ばれる「マネーゲーム」も、最近数十年で「勝者のゲーム」から「敗者のゲーム」へと変わってしまった。証券運用の世界で根本的な変化が起きたのだ。1970年代から1980年代にかけて、市場より高い成果を上げようと懸命に努力する機関投資家が多数出現し、市場を支配するようになってきた。この変化がすべての原因である。もはやアクティブな運用機関は、初めて市場に顔を出す用心深い保管業者やアマチュアと競争しているわけではない。いまや、彼らは他の優秀な専門家と敗者のゲームを戦っており、そこで勝ち残る秘訣は、競争相手より失点をできるだけ少なくなることなのだ。ヘッジファンド、投資信託、年金基金など、何千にも及ぶ機関投資家が一日も休むことなく激しい運用競争を繰り広げている。こうした最大手の機関投資家50社の中で、50番目の者でさえ、証券会社に対して世界中で年間通常1億ドルもの注文を出している。
個人投資家がマーケットの90%を占めていた1950年代から60年代に、プロの投資家が大きな利益を上げることができたのはある意味で当然だった。しかし、今日ではマーケットは一変した。過去50年間、投資信託や年金基金、ヘッジファンドが飛躍的に拡大し、しかもこれらの機関投資家の売買回転も増加した結果、今では個人投資家と機関投資家の比率は完全に逆転し、ニューヨーク証券取引所における売買取引は、機関投資家が9割、個人投資家が1割となった。さらに、取引総額の75%はトップ100社の機関投資家によって、また取引総額の5割はトップ50社によって、それぞれ占められているのである。


ケインズの時代、1920~40年代は、経済学で大きな収益を上げることができた。それからグレアム、ピーターリンチと個別株のバリュエーションの分析をしていた時代があり、現代へとつながっている。特にアメリカのブルーチップを買う時に、分析しようという気が起こらないものね。

運用の歴史を見ると、市場が大底から回復する最初の1週間に、株式リターンのかなりの部分が獲得できることは明らかである。しかし、一般にタイミングに賭ける人々は、その時には既に手持ちをゼロにしてしまっているので、もっともおいしい部分を手に入れることはできない。
市場タイミングに賭けるべきでないもう1つの理由は、さらに衝撃的である。タイミングを間違って売ってしまうベストの上昇日を逃したときの株式の複利利回りに与える影響は、1982年から2000年の18年間におけるベストの上昇日10日を逃すだけで、リターン平均水準は18%から15%へ低下する。ベスト30日を逃すばリターンは18%から11%になり、実にその4割も消えてしまうのだ。
S&P500に1ドル投資したケースで試算すると、最近の10年間でベストの90日を逃したら、なんと22セントの損が出ていたはずだ。ベストの60日を逃した場合の利益は30セントしか出ない。ちなみに10年間持ち続けた場合、5.59ドルになっていただろう。なお余談だが、10年間で最悪の90日を避けることができれば42.78ドルの利益になる。過去72年間のうち、ベストの5日を逃すと利益は半減してしまう。

その通り、その一発で決まると言っていいね。大暴落で損失小さい状態で、全力買いできたらそりゃ勝つわな。
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インデックス・ファンドとは、いわば投資の「ドリーム・チーム」の成果を結集したようなものである。考えてみよう。「ドリーム・チーム」を選ぶとしたら、どんなメンバーがふさわしいだろうか? ウォーレン・バフェットはまず入るだろう。チャーリー・マンガーも間違いない。ピーター・リンチとフィデリティのファンド・マネジャー・チーム、キャピタル・グループの運用専門家たち。ジョージ・ソロスや、全米トップのヘッジファンド・マネジャーたちもいいだろう。この際、全米トップのポートフォリオ・マネジャー全員と、そのスタッフであるアナリストも全て入れてしまおう。せっかくだから、ウォール街のトップ・アナリストを全部加えよう。メリルリンチ、ゴールドマンサックス、モルガンスタンレーからそれぞれ250人ずつ、クレディ・スイス、UBS、ドイツ銀行のアナリストもだ。ITや途上国市場に特化するトップのアナリストも必要だろう。仮にこのような夢が現実になり、アメリカのトッププロが皆、あなたのスタッフになったとしよう。あなたはただ、スタッフの提言を黙って受け入れていればよい。これらトップ・プロの投資判断を一度にまとめてしまうには、インデックスを使えば良い。インデックス・ファンドは市場をそっくりそのまま再現する。実際、マーケットがプロによって支配されるようになった今、市場の動きはまさしくプロの動きの総和を示す。新しい情報が発生し、プロが判断を変える度に市場も動く。市場の動きはプロの[コンセンサス」をリアル・タイムで映す。

そうだよねー、アメリカ市場は特にそれがすごいわ。四半期決算のEPSのコンセンサスからどのくらいズレるかでJump Diffusionを起こすあの動きは、ホントすごい。
2007.12.27 Jump Diffusionと市場効率性

1日当たりの収益率0.04%と1日の変動幅3.1%を年率換算してみよう。年間平均期待収益率は10%となるが、その収益率の変動幅は±387.5%といった恐ろしい数字となる。

標準偏差を足すな! 知らない人のために標準偏差の足し算、1日3.1%の変動幅の年率換算は、
√(0.031 × 0.031) × 250営業日=0.031√250=50%くらいだね。

株価が低くなることで、理論的には長期的利益にプラスであり、私たちはみなバーゲン価格で買えるはずだ。しかし率直に言って、株価下落を喜ぶ人はほとんどいない。また、多くの人は株価が上がれば、追加投資のリターンは低下するにもかかわらずニコニコしてしまう。しかし、魅力的な洋服を10%とか20%あるいは30%引きで安売りする店に背を向ける客がいるだろうか。「バーゲンセールの時には買いたくない。値段が上がった時に買います」などという客はいないだろう。だが実際に私たちは投資をする時、このような行動を取っている。

株価上がると、儲かっててもつらい。そうなのよ、買うものが無い、高いと思って売れば売るほどリターンが相対的に下がる。いつか来る暴落の日まで、とても長い闘いだ。

マドフは、リスクを最小化するために特殊なデリバティブを活用していると言い、そして競争相手にまねされれば全てが台無しになるという理由で、その詳細を一切明らかにしなかった。彼は個別株を買う一方、そのプット・オプションとコール・オプションを売ると言っていた(コールオプションを売るということは、一定以上の値上がり益を放棄し、プット・オプションは値下がり損を一定以下に抑えられる)。

??マドフが言っていたStrike Conversion戦略。それは、コールを売って、プットを買うと言っていたんだよ。書き間違いか、誤訳かな? ()内の説明は正しいので矛盾している。

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