とあるFX OptionのPricing Systemの挙動を見ているのだが、そのSystemのモデル
(非公開Logic)を推定
しよう。
Barrier 70%のKI Putを計算しようとすると、「それはRKIです!」とSystemが突っ込みを入れてくるので
この世にはReverse以外のBarrier Optionはねぇ!」と一人ボケをつぶやく。
Equity諸君は、為替の人はRKIとKIを一緒だと思っていないことを覚えておいた方が良いだろう。
Barrier OptionのPricingだがATM Volatilityを使った解析解と非公開Logicとが同時に示されて
おり、Surface、Skew、Smileを反映させているかのごとくのPriceが見える。
推定プロセス1
 1yearでも5yearsでもほぼ変わらず瞬間で計算できる。
 妙に早い・・・。解析的アプローチ? Local Volatilityでここまで早く計算できるのだろうか?
推定プロセス2
 VolatilityのインプットはATM,25D-RR、25D-Flyの3つ。色々入れて挙動を見る。
 しかし、挙動以前に、インタフェースでモデルの構造の大体はわかる
推定プロセス3
 1yearのBarrierだが、6MのVolatilityのSensitivityはどうなるのだろうかと思って動かしてみた。
 あれ? 感応度なし。Barrierは、経路依存オプションですが?
 俺の入れたVolatility Surfaceは、明らかにArbitrage Freeが崩壊しているはずなんだけど、
 どうして計算できるのかな?
ダメダメ、隠しても。ばれちゃうぞー。非公開であってもLogicのコア部分の推測終了。
モデル非公開ってケチくささがちょっとムカついてるんで俺が公開しちゃおう。(あくまで私の推測である)
各成分の一次微分、DeltaとRho(金利)については、SpotとSWAPでHedgeすることを想定しているだろう。
VolatilityについてはOptionを使ってHedgeすることになる。
Vega Neutralを目指すのであれば、StraddleをVega等量売ればよい。
しかし、BarrierはExoticなのでVegaの挙動として
株価が動いた時は、Vanna=dVega/dS、
Volatilityが動いた時は、Volga=dVega/dσ
がVanillaと著しく違うことが予想され、StraddleだけでVega Neutralを保つことはできないだろう。
そこでVega,Vanna,Volga Neutral=0 を目指せば、株価、Volatilityに多少の変化
が生じたとしてもVolatility Exposureの発生を抑える
ことを期待できる。
3つのGreeksをNeutralにするために必要なVanillaは3つ。(根拠はインターフェースが3変数)
各Vanilla(A,B,C)のVega,Vanna,Volgaを下記のような縦Vectorで表記し、
Risk Vectorと呼ぶことにしよう。Risk Vector3つをくっつけて3×3行列Mを定義する。
RiskVector.JPG
Barrier OptionのRisk Vector X
VanillaのA,B,CのBarrier Option1に対する比率Vector W
X=M*Wを満たすWが3つのGreeksをNeutralにするためのWeight Vectorであるから
以下の3元一次方程式(中学生でやる)を解けば良い。
RiskMatrix.JPG
Wが確定したので、次に、3つのVanilla OptionのOffer-Bid Spreadも同じくVectorでSpと表記するとしよう。
彼らの定義する理論値TPはATM Volatilityを使ってだした解析解とWとSpの内積を足したもので計算
されていると推測できる。
ここで言うA,B,Cの3つのVanillaはTradableなものであれば何でも良く、単体のオプションである必要は無い。
為替の世界では、ATM Straddle、25D-RR、25D-FLYでも入れておくのが妥当なのだろう。
この3つをWに応じてHoldしたPortfolioの構築をSemi Static Hedgeと言い、当面の間、Neutralにした
3つのGreeksは保たれることが予想できる。
Straddle、RR、FLYと合計3Trades延べ8個のVanillaが登場する仰々しい取引は要らず、
BarrierをはさむSpreadを組めば、2個のVanillaで、それなりの精度でVega Flatを保てるのであるが、
Underlyingの為替はRRとFLYがダイレクトに取引しやすい環境のようなので、黙っておこう。
このPricingの一番の問題点は、経路依存性ということをとことん無視したPricingとリスク認識で
あることは指摘しておきたい。
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