橘玲好きなんだけどなぁ。この本はかなり酷い、本当に本人が書いたのかな? 株式市場に対して、素人が中途半端にモノ言うことに対して私が厳しすぎるのだろうか?

私が株に興味を持ったのはかれこれ10年くらい前(2006年発行だから1996年)、「ビル・ゲイツ未来を語る」を読んですっかり感化された私は、この革命児が経営する会社に投資することを思いつき、その頃勤めていた会社の近くの日本一大きな証券会社の支店に生まれてはじめて株を買いにいった。応対してくれたのはちょっと世を拗ねたかんじのおじさんで「マイクロソフト?そんな会社、きいたことありませんねえ」と慇懃な笑いを浮かべ、「株をおやりになるのなら、すこし勉強なさったほうがよろしいんじゃありませんか」と、カウンター脇に置いてあったパンフレットをくれた。

うん、でも買わなかったんですよね。いるんですよ、後出しじゃんけんトーク。「あの時、アップル買おうと思ってた」聞き飽きるほど聞いている敗者の戯言ですよw

私はひと夏を費やしてナスダックの株価データを統計解析し、インターネットで取引できるアメリカの先物会社に口座を開設し、高速接続の回線を自宅に引き、ナスダックの株価が一時的に下落した10月半ばにはじめてポジションを立てた。しかし、当初の意気込みに相違して、わずか1ヶ月ですべてを放棄することを余儀なくされた。損したからではなく、精神的・肉体的に限界に達してしまったのである。最初の予定では、寄付きの値段を見た後いったんベッドに入り、大引け前に起きて、儲かっていれば追加で先物を買い、損していれば売ることにしていた。ストップロスで損失は限定されているから熟睡していても何の問題もないはずだった。ところが株価が上昇し、投資総額が大きくなるに連れて強迫観念が執拗に襲ってきた。一晩中パソコンのモニタに向かいリアルタイムの株価ボードを見つめ、夜が明ける頃に1時間ほど仮眠を取って会社に出かける。そんな状態が2週間ばかり続き、その日の夜にすべてのポジションを清算してしまったのだ。ようするに根性のない奴だったのである。

おっしゃる通り、よくいる「口だけ君」ね。それがさっきのマイクロソフトを買えなかった理由でもあるんだよね。どんなに小さいポジションでも実際取るからには、決断と覚悟が必要だ。私ももう株歴長いが発注の際は今でも緊張する。そういう”臆病者”は株には向かんなw ただ「臆病者のための株入門」というタイトルだから、それを言っちゃうと元も子もない。でも現金保有も怖いぞ。2015年、最近、現金保有のリスクが顕在化していることは、日本の居住者は体感していることだろう。消費税が5%から8%に上がり、円は80円から120円に下がり、それによって原油価格が上がり(最近下がってるが)、日銀が消費者物価指数の2%上昇をターゲットにすると言っている状況だ。
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ジェイコム株の誤発注で20億円の利益を得た男性が現れた時、彼の年齢と肩書きが世間の注目を集めた。でもそれは本当は驚くことじゃなくて、逆に「27歳無職」でなければこの話は辻褄が合わないのだ。失うものがないからこそ大きなリスクが取れる。何千万円ものボーナスを受け取っている「金融のプロ」が失敗すれば首が飛ぶようなリスクを冒すはずがないではないか。

惜しいなぁ、橘先生。ジェイコムの大量保有報告、筆頭株主名簿に、証券自己=いわゆる「金融のプロ」がズラリと並んでいたんですよ。プロ(金融機関)は返却させられたんで、利益にはなりませんでしたが、27歳無職よりも大きな資金で、”リスク”は取っていたのです。ジェイコムとは別に、あまり大きなニュースになっていませんでしたが、他の銘柄のIPO時に、外資系証券会社が誤発注した時は、国内証券会社ががっつり買って、儲けていましたけどね。高額のボーナスもらうには、リスクは取らなければならないものなんです。

ある株に100円の値がつくということは、株式市場において、その株を100円で買った投資家と100円で売った投資家がいるということだ。

うん、正しい。ここまではw

誰かが100円儲けるということは誰かが100円損することである。

あちゃー、完全に間違っとるわ~。株価が単調に上がり続けているならば、すべての投資家が儲かるんです。それはIPO時に持ち株を売ったファウンダー(創業者)も含みで儲かるんです。株はゼロサムじゃないんです。対してデリバティブは、上げ相場だろうが下げ相場だろうが、どんな時でも完全にゼロサム。

機関投資家の資金を運用するファンドの中には「株価100円未満の銘柄は保有しない」と決めているところがある。ITバブル崩壊後の下落相場では銀行や建設・不動産株の多くが100円台まで売り込まれてしまった。ということはこういう株を一斉に空売りして株価を二桁に落としてしまえば翌日にファンドや機関投資家はルールにのっとって持ち株のすべてを売却するしかない。それによってものすごく損したとしても、彼らはしょせんサラリーマンで預かっているのは他人の資産だからどうだっていいのである。いまだからいえるけど、このゲームはものすごく面白い。翌日には株価が100%確実に暴落するのだから下がりきったところで買いに転じれば往復で2度儲かる。

無額面化されたのが2001年だから、ITバブル崩壊後なら、場合によっては、まだそういう考え方が生きていたのかもしれないけど、極一部の額面にとらわれている参加者の売りが、多くの銀行や建設の株価に影響を与えるほど、株式市場薄く無いです。それから「下がりきったところで買いに転じれば」って下がりきったところってどうして分かるの?

あなたの運用資産が1000万円だとすると20%の利益は200万円になる。1000万円というのは個人投資家の資金としてはけっして少なくは無いと思うが、それでも毎日9時から3時まで張り付いて年収200万円。時給換算すればマクドナルドのアルバイト以下である。この世界一人件費の高い日本で、プロのトレーダーをも出し抜く技術を持っていながら、なぜそこらのプータローよりもビンボーな暮らしをしなければならないのだろうか。金融機関に就職すればあっという間に年収2000万円や3000万円はもらえるかもしれないのに。

市場を出し抜けるなら、金融機関に勤めないよw 金融機関を買収できるんだから。
あっという間に年収2000万円もらえる金融機関あるの? その都市伝説は誰が作ったの?

カリスマ評論家になる方法
株式評論家や投資コンサルタントの予測がたいして当たらないのならどうして彼らの商売が成り立つのだろうか。それは適当な株に適当な理由をつけて推奨しても半分は当たるからだ。そこで商売上手な株式評論家はたまたま当たった銘柄を大々的に吹聴する、そしてもちろん外れた予想は無視する。ノストラダムスの大予言が世界的に大流行したことからもわかるように、人間は破滅に引き寄せられていく強い傾向がある。もし予言が当たれば一生神として崇め奉られる。もし外れても悪いことが起きなかったんだから問題になることは無い。だったらやらなきゃ損だ、という非常に分かりやすい結論になる。

「株価は上がる」という予想は99%当たる。期間を指定しなければ、一秒後に1ティック上の値がついたことから、20年後の大挽回まで、すべて含まれるので、会社が倒産でもしないかぎり外したと証明することができないのだ。
橘先生、株式市場なんて下品なものについて言及する必要無いっすよ、先生は小説書いていましょう。ねっ!
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