シンガポールからフェリーで50分の距離にあるインドネシアの島、バタム。「バタムに行く」というと、「楽しいですか?」「ゴルフ以外で行ったことが無い」「何か(観光名所)あるんですか?」と尋ねられるが、バタムが観光都市として認知されていない事実が示すように、いわゆる遊びに行くところではない。結論から申し上げれば、ゴルフでもないのに、バタムに遊びに行くというのはかなりツウ好みである。バタムというとゴルフとチキチキだが、私はバタムが持つこの2つ以外の側面に触れていこう
「バタム 投資」 でのインターネット検索を要約すれば、
1.バタム島に五つある国際フェリーターミナルとシンガポール間に毎日96便のフェリーが6時から22時まで就航
2.ハビビ開発庁長官時代にはバタム島に隣接するレンパン、ガラン島などバタム諸島内が六つの橋で結ばれ、その総面積はシンガポールの国土618平方キロメートルを上回る715平方キロメートル
3.1970年には6000人程度の漁村だったバタム島の人口は、2000年には50万人を超え、現在では130万人
4.バタム島にはこれまで67社の日系企業が進出し、同島に駐在する日本人は300人ほど。バタム島だけでもシンガポール経由で年間100万人以上の外国人観光客が訪れている。
5.外資誘致・奨励策 100%海外資本設立の認可
6.総投資額、政府部門・民間部門合わせて、累計10bil USDドル。
インドネシアとシンガポール両政府共同プロジェクトで、多大な予算と開発で、”成功した工業地帯誘致”と読める内容だ。大事なので繰り返そう、6000人の漁村が40年で人口130万人にまで発展し、バタムの開発計画は成功したと言えよう。しかし、実際にバタム島を5分歩けば、その寂れた街並みに驚くことであろう。成功してもなおエマージングな状態であることは、バタムに行けば誰にでもわかる。
Batam-City.jpg
この写真で見ると、綺麗な街に見えるが、実際はかなり寂れているので、それを見るためだけにバタムに訪れる価値はあるだろう。


バタムを見る際には、ビンタンがリトル・バリ、バタムはリトル・ジャカルタと例えられ、成功した国際都市としてのシンガポール、インドネシアのエマージング色が漂うジャカルタ、観光立国の面を持つバリ、現在新都市増強計画中のジョホールバルを知った上で比較すると面白いだろう。トランスミグラジ構想とは、人口過密なジャワ島、バリ島からスマトラ、スラウェシ、カリマンタン、イリアンジャヤなどの周辺諸島に移住させた計画で、すでにインドネシアで”失敗した実績がある”。イスカンダル計画はそのマレーシア版だが、2020年に300万人都市にすると言っているが、計画通りの人口推移はおそらく失敗するだろう。トランスミグラジ構想にしてもイスカンダル計画にしても、作為的に民を移動させ都市を作ることがいかに難しいかわかるのだが、バタムは130万人もの人口増加を実現しているので、人口移動誘導を伴う都市開発の素晴らしい成功実例なのである。それでも実際は厳しいということを示しているのが、バタムの街並みである。
エマージングは成長するという謳い文句には常に私は違和感を覚えている。人口7000人の漁村だったバタムの40年間の発展は、エマージングの成長力と言えるだろう。ただ、エマージング・無人島状態だったバタムがこれだけ発展した実績はあるものの、シンガポールに近づいた、と言えるのか? 130万人もの人口誘致に成功したバタムとシンガポールの発展の違いは、誰が見ても明白で、バタムは今後、その差を縮めることができると思えるか? 無人島から現在のバタムまで成長しただけでも十分だという見解もあろうが、これからシンガポールとバタムの違いに言及していこう。(はっきり言って読むより行った方が早い) エマージング投資の夢物語・成長ストーリーは、シンガポールのように発展する前に、バタムレベルで止まってしまうと、それは果たして成功と言えるのだろうか、ということも示唆している。またシンガポールの存在そのものが、シンガポールと同等レベルの都市開発を行うことの難しさを証明している。
以上前置きが長くなったが、今回は前回の反省点を活かし、
2013.05.14 バタム・ナゴヤ 1/3 ~シンガポール・オフショアのリアル・インドネシア
シンガポールのハーバーフロントから出発し、バタム側ではSekupang港に入る。この経路はタナメラ->Batam Centre港に比較すると、バタム島の景色の第一印象は、多少異なり、フェリーの上から見るSekupang港は、上記の通り、開発されている様が見てとれる。一方、前回のBatam Centre港からバタムに入ると、港の周辺から寂れた感じで迎え入れられる。Sekupang港からナゴヤまではタクシーで5~10分、50,000IDRほどである。Sekupang港はまだ新しく綺麗だが、フェリーを降りてから振り返ると、フェリーターミナル2階部分は丸ごと穴が空いていて、建設途中で停止している様子が見える。
道路の質は日本・シンガポールほど綺麗ではないものの、中央分離帯付きの立派な道路が港からナゴヤまで走っていて、開発にお金をかけたという痕跡を観測できる。ただし信号や歩道、立体交差道路、高速道路はない。縦横無尽に走るシンガポールの高速道路網、ETC、ERP導入による簡素化・交通量コントロールによる渋滞緩和には遠く及ばないのは言うまでも無い。
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