2月7日の日経新聞 日曜版にこのような記事が載ったことが話題を呼んでいるらしい。

FX取引業者が行っていると噂される「ストップ狩り」とは、FX取引業者が相場を瞬間的に安値誘導し、顧客の
ストップロス注文(損失拡大を防ぐため、一定の安値になったら売ることを予め指定する注文)を人為的に成立
させ、通常より数倍の利益を得る行為。FX取引業者(店頭取引業者)は、顧客から受けた注文を「カバー先」
と言われる金融機関につなぎ、その価格差で利益を得るのが基本。例えば、FX取引業者はカバー先が示す
ドルの買値が90円11銭であれば、90円10銭の買値でドルを顧客より買取り、90円11銭でカバー先に売却、
結果1銭/ドルの利益を得る
。噂される「ストップ狩り」では、FX取引業者が集中した「ストップロス注文」の安
値(売値)に標準を合せる。上記の取引を例にとれば、90円/ドルのストップロス注文が大量に発生している
ことを確認したFX取引業者が瞬間的に買値を90円まで下げ、ストップロス注文を成立させる
。これにより取引
業者は11円/ドルの利益が得られることになる。ネット上でも複数のブロガーがFX取引業者数社の外貨買値
を比較し、特定の業者が意図的に操作している可能性を指摘している。「ストップ狩り」の実体が明らかでは
ないが、自衛手段としてデータを開示・公開している事業者の選択や注文水準を工夫する必要がありそうだ。

非常に古典的な手段で、レバレッジプレイヤーの宿命とも言うべきか。
株・仕手戦の世界ではいわゆる踏み上げというヤツで、空売りの際、株を借りて売る。なので担保として現金を差し
出したとしよう。その担保分以上に株を買い上げられてしまうと、株の貸手としては、株を返してもらえないリスクが
あるので強制決済となる。よくあるパターンは、会社更生法を適応した会社の株を信用売りし、倒産直前に踏み上
げられて、最後の咆哮の瞬間高値を信用売り強制決済の者がつかむ。最後は1円で上場廃止になり、読みは正し
かったものの、取引の基本ルールを理解していない者の戦術上の甘さが露呈する瞬間でもある。
またオプションの世界では、見破られたら厳しいガンマショート。上がれば上がるほど株を買わなければならず、下
がれば下がるほど売らなければならない状態をガンマショートと言い、ガンマショートを持っていることがバレると嫌
がらせの価格をぶらすトレードが入ることもある。その顕著な例がソフトバンクにおけるBNPパリバのVAR-SWAP
ある。
記事上の為替は、株以上に流動性があり、誰しもが見つめるマクロ指標という信頼がありながらも、非取引所取引
の不健全性が大きな問題となろう。株の場合は、取引所集中義務による一物一価が原理原則なのであるが、国
際間取引が主な為替は歴史的に一つの国家の規制の下に収まりきらない。時価が一つでないゆえ、記事にあるよ
うな不正が無いとは言い切れない怪しさがある。逆に、FX業者が真面目に注文執行したとしても、このような疑念
を抱かせる要素がある。監督庁にしても、取引が、取引所に集中していれば、監視もしやすいが、為替の場合は
そうもいかず、最良執行の義務を課すことも難しい。
下記のような理由で、為替の取引がパチンコに代わる民の博打となっていると思われる。
少ない資金でできる(レバレッジ)
24時間できる
毎日入るスワップポイントが気持ちいい
ただこれだけの理由で始めてしまうと、市場に巣食う鮫たちの餌食となってしまうのでお友達がはまっていることが
あったら、こういう事実を教えてあげた方が良いかもしれない。
・違う時価で、売りつける (しかし、手数料ゼロなどうたっていることであろう)
・為替では利益Zeroだが金利でヌく。
・差し押さえ、強制決済を意図的に引き起こす
神聖なる株式市場の美しさは、取引所取引と一物一価性にある。為替の世界では通じない一物一価性を世の常識
と思っているFX Traderは、この貴重さを身を持って体験しているのであろう。
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