第2節 マーケット部門
トレーダーは、担当の商品を売ったり買ったりする役割の人です。…余談ですが、ある種の人々はトレーダーのことをディーラーと呼んでいるようです。どちらが正しいというつもりではありませんが、英文誌でStock dealingとかequity dealingとかbond dealingという表現はあまり見たことがありません。いずれもtradingとなっている気がします。ちなみに、ある種の人は地場証券に多いです。
あと、ややこしいことにセールストレーダーという人々がいます。彼らはトレーダーではありません。純粋にセールスで、ブックを持っていません。取引時間中、頻繁に顧客と接触し、注文を取り、その執行を専門にしている人たちです。

でも三田さん、トレーダーが商品を売ったり買ったりする役割の人 ならセールストレーダーもトレーダーじゃないですか? 確かに、セールストレーダーは、”自己の勘定で”売ったり買ったりする役割の人ではないですけどね。それからバイサイドにおけるトレーダーもセールストレーダーと同じく執行者であり、投資の意思判断・決定権は無く、それはFM(ファンドマネージャー)あるいはPM(ポートフォリオマネージャー)の役割です。私の知り合いのシンガポール人は、”トレーダー”と名乗ってしまったばかりに、株のファンダメンタルズや投資戦略について聞かれて困っていました。彼女はバイサイドのトレーダー、元SGX(当時はSIMEXかなw)の場立ちなんで、投資戦略とか言われてもw
確かに三田さんのおっしゃる通りで、Derivative Dealingともあまり言わないかもしれないのですが、日本だと、ネット・トレーダーまでいるじゃないですか。どうすか? ネット・トレーダーも略して、ネット上でトレーダーって言ってるんですよ。この前、日本で「トレーダーのエキゾさんです」って紹介されて思わず「いえ、トレーダーじゃなくてインベスターです」と訂正したほどです。ディーラーという根拠は、証券外務員試験に出てくる証券会社の主要業務、ブローカレッジ、ディーリング、アンダーライティング・セリングに起因するものだと思います。日本語による「ディーラー」という表現で、自己の勘定によって取引する人と定義づけることに対して、私は寛容です。

トレーダーは基本的に学歴が不要な仕事なので、後述する投資銀行部門にいる人間ほど華麗な学歴を持つものがあまりいません。MBA、博士、修士を持っているトレーダーがどれくらいいるでしょうか? これがコンプレックスとなっています。

三田さんと俺のジェネレーション・ギャップなのかなー? 修士くらいなら多くないですか? 三田さんも修士だしw
トレーダーは基本的に学歴が不要とマイルドに言っているが、反対だな。確かにすごく頭のいい人がやる仕事じゃねぇのは確実だが、インターバンクでトレーディングやってる人間の東大率は異様(東大に限らず国内名門系が多い)。はっきり言うと、トレーディングは、”普通に東大を卒業した程度の凡人”でもできる仕事で、投資銀行部門はそれに加えて海外MBAくらいが要求される(東大+MBAも非凡だとは思わんがw)。単に希望者が多い場合に学歴で優先採用しているにすぎない。
2013.11.15 配偶者ビザで外住みのモテ男 トレーダーは名門大学出身だが落ちこぼれ
で詳しく述べているけど、15歳で博士号とか、数学科で飛び級するような天才がやる仕事じゃなくて、名門大学の落ちこぼれ程度の頭でも十分ねw あれ? どうして俺は天才なのに、こんなことしているんだろう?
ちなみに、三田さんの名誉のために言っておくと、三田さんがご卒業された航空工学は、それなりに良い成績が無いと行けない学科のはずだ。今となっては多少時代遅れ感のある学科だが、1964年生まれの人の時代なら多分、人気学科。そういうどうでも良いことに詳しい東大諸君、私が間違っていたら、指摘してくれたまえw

第4節 救世主となるか、ブロックトレード
顧客が大量に保有している株を、証券会社が一括で買い取る取引のことです。証券会社の狙いは、顧客から買い取った価格よりも高い値段で別の顧客に転売し、鞘を抜くことにあります。

この鞘(さや)という言葉に過敏に反応してしまうのだが、鞘=スプレッドなので、鞘を抜く良いのだけど、アービトラージを鞘取りと一般に和訳する。取るでも抜くでも同じじゃないか、で誤用が増えるのかな? だからなるべく鞘という言葉を使わずに、表現するように心がけています。もっと過敏に反応する言葉、アービトラージと裁定取引。後に出てくるのだが、ここで紹介してしまうと、
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第5章 トレーディングの現場 第3節 ハイフリークエンシー取引ってなんだ? より
Deterministic ArbitrageとStatistical Arbitrageの違い。
売りたてているものと買いたてているものが、ほぼ確実に収束するので、儲けが手堅い。そういう裁定取引を言います。一方、Statisticalでは売り建てているものと書いてているものが収束するという決定的な根拠が無い。過去の統計的な確率からすればどうも収束が期待できそうだと自分で思っているだけです。

まったく正しい。だから、スタット・アーブをアービトラージと呼んでしまうと、売りと買いを組み合わせた取引は全部アービトラージと呼べてしまう。全体下がるとなぜかやられるヘッジファンドの戦略、マーケット・ニュートラルやアービトラージ、かなりイライラしない? 言葉遣いはちゃんとね! っつーか、前から言ってんだけど、下がったら、揃いも揃ってみんなマイナスなんだから、”ヘッジファンド”改め、アン・ヘッジド・ファンドに名前変えろよ。

第3章 リテール営業が狙う次なる商品
第2節 そうだ、お客さんの株を無断拝借しよう…株券貸借取引
株券貸借取引を個人レベルに広げるのは採算に合わない。この障害を克服したネット証券
・担保金調整の手間の克服 「お客さん、個人の信用より証券会社の信用でしょ。うちの会社を信用してね。株券は必ず返すから、担保金無しでいいよね」。これで一件落着。
・契約手続きの手間の克服 包括契約を交わしてしまう。証券会社が借りたいときに承諾無しに顧客の預託株券を借りる。証券会社が株を返済したい時はいつでも顧客に返済できる。となっている。
顧客は知らないうちに貸借料が振り込まれるし、証券会社は貸借量の差額で儲かるということでみんながメリットを享受していることになります。しかし、忘れてはならないことがあります。貸してしまった株は分別管理されていないのです。当然です。誰かに貸すために借りたわけですから。ということは、証券会社は担保金を出さないので、顧客は証券会社に対して、貸し付けている株券の時価総額相当の信用リスクを負っているということです。それは、「証券会社が倒産した時は株券が戻ってこないかもしれません。そのときは管財人に聞いてください」ということです。
※分別管理 証券会社に預けてある顧客の資産は、証券会社の資産と別に管理されている。よって、証券会社が倒産しても顧客の資産は守られる。米国のMFグローバルは顧客の資産を流用していた(悪意を持って分別管理していなかった)ために、会社倒産とともに顧客資産の一部が戻ってこなかった。

うぐっ、うぐっ、思い出したくない…(泣
お前ら、人の不幸、損失話、大好きだろ? じゃ、俺の不幸話。はい↓
2011.11.25: 米MFグローバル、破産法適用
ご好評につき三田氏を斬るシリーズまとめましたw こうしてまとめるとなんか”執拗に目の敵にしている”みたいで酷いですね。三田さんの許可無く書いているので、三田さんは、気分を害されるかもしれませんが…、読んでいただければ、誹謗中傷ではなく、三田さんに対する敬意とデリバティブに対する愛を込めながら(かつ、私なりに笑いを取ろうと悪意を込めてw)、全作書いています。
2014.07.01 三田氏を斬るステージ2 1/8~信者が居るほどに偉大な三田氏
2010.11.22 三田氏を斬る ~多彩な商品、エキゾチック
2010.11.15 三田氏を斬る ~多彩な商品、CB/PS系
2010.11.08 三田氏を斬る ~多彩な商品、Vanilla系
2010.11.01 三田氏を斬る ~トレーディングの現場の解説
2010.10.25 三田氏を斬る ~金融工学の理解と解釈
2010.10.18 三田氏を斬る ~今回は同意、でも笑える
2010.10.08 三田氏を斬る ~デリバティブとは何か?
三田氏を斬る(ステージ1)に対応する三田さんの前作。こちらも良著なので、買って読んで勉強すると良いでしょう。

デリバティブ・ビジネス入門―エクイティの現場ノウハウ
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こちらが当ブログの「三田氏を斬るステージ2」に対応する新作です。

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【アービトラージとは、裁定取引とは】
2013.10.11 米国オプション市場で遊んでみた 1/2 ~実質的に狭いAsk/Bid
2012.10.19 小説 ヘッジファンド
2012.03.14|マルキールが言えないインデックス投資の欠点
2011.06.03: リチャード・ギア新作映画「アービトラージ(原題)」
2011.02.09: 最強ヘッジファンド LTCMの興亡 ~天才たちの誤り特集
2010.10.21: トップレフト ウォール街の鷲を撃て
2010.08.26: 株メール Q4.複数上場の場合の株価と為替の連動性
2010.05.13: 中国株先物の裁定可能性の検討
2010.01.08: 50% Knock-In PutのPremiumって実現できるの?@理想的な世界にて 
2009.12.14: HとAどっち? 
2009.12.11: Early RedemptionとCouponの関係 
2009.10.06: Black-Scholesは間違っている2 
2009.07.28: Exotic Parity2 
2009.03.18: 歯磨き粉の買い物と債券Arbitrage 
2009.02.27: VolatilityとCredit Spreadの関係 
2008.10.14: 日経225オプションの誤発注 
2009.01.26: Exotic Parity
2007.12.14: 久々のお買い物 C 5.875 FEB 2033