株のBuy&Hold戦略が持つGamma Long性

純粋な株式投資の話です。オプションは関係ありません。「ただ、株を持っているだけなのですが、私には損益曲線が曲がって見える。」 また意味不明な基地外発言に聞こえますか? どういうことなのか説明します。
2014年の1月末から2月に向けての下落で、世の中や周囲の人間が「暴落だ、下落だ」と騒いでいるのを聞いて、「この程度で騒ぐとは、お前NISAデビューか?」という印象です。このチョイ下げで動揺する民と、ロングオンリーなのにむしろもっと下げるのを待っている私と一体何が違うのでしょうか?
私もバリュー投資だ、中国元だ、米国債だ、S&P500のオプションだと、ゴチャゴチャ言っているのですが、
私個人の10年の運用成績は、S&P500と株投資比率(資産に占める株の割合)だけで説明が付きます(S&P500が、わかりにくければ日経平均でもドル円レートでも良いでしょう)。ちなみに私のメインの株エクスポージャーは日本株なのにです。
プロの運用で、フルインベストメントのロングオンリーの場合、S&P500だけで十分に説明可能で(というとアクティブ運用全否定で乱暴すぎると怒られそうですが)、一般的には、そうなります。一方で、個人の場合、私は多通貨だったり債券・デリバティブも入っていたりと色々あるわけですが、「株以外を現金」 とこれまた乱暴に定義し、資産を現金と株の2種類に強引に分けます(不動産がある場合は株と数えるのが妥当でしょう)。なので総資産は必ず株(正確にはリスクアセットですが)+現金になります。株÷(総資産)が株出資比率(略して株比率)となり、キャッシュで株を買う個人投資家の場合は、0%~100%、信用取引、先物取引などでレバレッジを効かせている人は100%超となります。


S&P500の25年のあゆみ
US Yahoo Financeのチャートへのリンク
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投資一族10年のあゆみ と 株比率の変動
03年ITバブル崩壊後の底値で株を買い(70%)、
05年(末で68%)から07年(56%)にかけてゆっくりと売り、
リーマンショック直前の08年7月にはなんと29%、これはちょっとずるくて売りではなくて給与所得で下げてます。
そして、リーマンショックでまた買った(55%)。
2004年末から10年のあゆみ S&P500 対 投資一族
S&P500は1200から1800なのでドル建てで約50%。
一方私は給与所得はのぞく純粋運用成績の年間リターンの直積がドル建てで約100%。 (ショボーって言わないでw こんなもんで実力相応です)
私はS&P500を2倍上回っているという自慢話なのですが、ちょっと不思議だと思いませんか? 
Buy & Holdの場合、株比率100%なら、S&Pと同じパフォーマンス。
私の株比率は大体30%~70%程度のデレバレッジ状態(100%未満で常に現金を持っている)にもかかわらず、インデックスを上回っている。よほど銘柄選びのセンスがいいのなら、運用成績はS&P500だけで説明できるという冒頭の言葉と矛盾します。
グラフは、リーマンショック時の底値近辺、S&P500が900を基準とし、
1)黄色 株比率100% Buy & Hold
2)ピンク 株比率50% Buy & Hold
のパフォーマンスを比較したものです。
数値はすべて、ピンクの株比率50%の状態を表したもので、左から順に1.S&P500の水準、2.株価水準の900からの%表示、3.投資した株の時価、4.株比率、5.パフォーマンス(資産総額推移)です。
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あれ? 黄色はデルタワンなのに、ピンク曲がってない? 大暴落でS&P500が900の時に、株比率50%にしてBuy&Holdした場合、今1800なので、株は2倍になってキャッシュは一定ですから、株比率が67%まで上がるからです。曲率が見えにくいですか? ではもっと範囲を拡大してもう一度。
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完全にオプションの損益曲線やないかい! 完全なるS&P500指数のBuy&Holdの損益曲線がなんと曲がっているのですw 株が10倍以上になればもとの現金50なんてのはほとんど無視できるので、デルタワンに近づくことがわかります。
はい、私に騙されてはいけませんよ。目の良い諸君、感覚の鋭い諸君はお気づきの通り、これはデリバティブ眼鏡をかけた時に見える株式市場の姿なのです。
株価xとパフォーマンスyの関係式はあくまで
デルタ1(株出資比率100%の時) y=x
デルタ0.5(株出資比率50%の時) y=0.5x+0.5
というガンマなど無いに決まっているのですw だって出資比率が何%だろうが所詮、株だもん。ガンマなんかあるわけないw はい、これ ↓ が裸眼で見た時の株式市場。安心した??
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デルタ0.5が曲がって見えるのは、株価x軸が幾何ブラウン的な縮尺を持ち、パフォーマンスy軸が対数グラフ、Log Return Chartになっているからです。しかし、私としてはy=0.5x+0.5というNormal Distribution的グラフ(チャート)は感覚に合いません。株価は幾何ブラウン運動ではありませんが、”幾何的”(株価の絶対水準に依らず、値動きの率は一定)に振舞うと考えるほうが自然だからです。株50、現金50を保有していて、株価が10倍になったら、株500、現金50を保有している状態になるのです。資産の9割が株なのにまだデルタ0.5と言い切る方が不自然ですよね? 勝つこと、勝ち続けるものにとって、わずかに株を50しか持っていなかった過去は関係ないのです。
この発言をもって、プロのディーラー諸君でも90%は、「コイツ、何を言ってるんだ?」あるいは「ついに発狂したか?」と思われてしまったかな? デリバティブ・ディーラーにとっても基地外発言ですか? 俺が天才でお前らがついてこれないだけだ。心配すんな、俺が正しいw まぁいい、かまわず続けよう。
給与所得などの現金収入が自分の資産に対して大きい人は、株を持っていてもどんどん給料が来るので(なんかちょっとうらやましいですね)、株比率が下がってしまいます。私は現金収入がほとんどゼロなので、株が動くか、株を売買するかしないと株比率は変わりません。だから私にとっての投資判断は、強気の時は株比率を上げ、弱気の時は株比率を下げるという非常にシンプルな構造であり、実際に投資するインストルメンツが、オプションだろうが、個別銘柄だろうが、アメ株・日本株だろうが、あんまり関係ないのが、過去の実績です。一部、インデックスを大きく上回る銘柄も保有しているのは事実ですが、全体で見ると、結局インデックスと大差無いという悲しい現実 泣。
とにかく、株比率の上げ下げで相場を判断し、デリバティブ眼鏡という幾何ブラウン的株価と対数的な総資産の分布で見ている系では、
デルタ0.5(株出資比率50%の時) y=0.5x+0.5
はガンマがある曲がった形に見えるのです。この感覚、伝わりませんかね? わかる人いたら、是非コメントください。
私はリーマンショック時55%の株比率から始まって、リーマンショック後の回復の過程で、5年間売買せずに我慢し株比率70%程度となり(5年間のガンマロングを引っ張った脅威の忍耐力なんですよ)、2013年から売り始めて、2014年早々には株比率を45%まで落としました。
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ここでまた暴落が起こってS&P500が900まで戻ると、私の株比率は45%から28%に下がります。そこで株比率50%に引きあげるとすれば22%分の買い付け余力があります。実際ピークから50%の下げというのはなかなか起こらないので、30%くらいが我慢の限界で、実際には買い始めてしまうでしょう。ガンマなどあるはずもない、単なる株のBuy&Holdが、デリバティブ眼鏡によって、ガンマトレーディング化していることが、ご理解いただけますか?
通常、ガンマトレーディングにおいて、リバランスのタイミングは数%~高々10%(10%ガンマを引っ張るって、普通無いくらいのガンマリスク取ってるよね?)なのですが、私のガンマトレーディングは “<-30%” もしくは “100%<” の尋常ではないガンマトレーディングなのです仮に5%程度でリバランスするガンマトレーディングをすると、株比率は保たれるので、株が上がることによる株比率の向上はないので、株比率固定のガンマゼロ(デリバティブ眼鏡慣性系)のポジションになるのです。全力買い=株比率100%では全く無く、株比率55%という十分にコンサバすぎる数値ですが、それでも私がこの10年のワンサイクルでS&P500の2倍で上回っているのは、このトレーディング効果が効いています。
私は5年間Buy&Holdだったので自称インベスターのつもりでしたが、インベストメント(投資)というからには銘柄選定のよしあしと、起点と終点の価格差で決まるべき、すなわち経路依存性がないことが投資性の象徴です。一方でインベストメント(投資)と対する概念としてのトレーディング(取引)の要素とは、途中の売買が収益に大きく寄与し、現在保有しているポジションの「現値-買値」が相対的に小さい、経路依存性こそがトレーディング性の象徴ということであれば、私はインベスターではなく、トレーダー(完全なるガンマトレーディング)だったのです。もっとも5年間ガンマを引っ張るトレーディングに対して、給与を払う仕事ってのはなかなか無いですけどねw
面白いのでこちらも見て欲しいです。
株にレバレッジをかけて買う行為は、Gammaの符号が反転し、Gamma Short的なポジションとなる。
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株が上がれば上がるほどデルタワンに近づいてしまうので、エクスポージャーの維持ができず、株が下がるまで積み増しをする。一度でも、1/レバレッジ(株比率)だけ株価が下がれば、全資産を失うGamma Shortなのです。レバをかけると、株がちょっと下がるだけでも株比率が向上し、エクスポージャーが増えていく”感覚”におそわれるので、みんなちょっとした下げでワーワー騒いでしまうのです。これは信用取引をしている個人だけでなく、金融機関のトレーディングもこれにあたります。もちろん、金融機関でS&P500のデルタが主たるリスクというほど、激しく張っているデスクは無いと思いますが、デルタでないにしてもそのリスクに対して、暴落時は相関1で下落しますので、同じことです。
どうでも良いけど、エクイティ・ショートもGamma Short。ショートセルを実際にやっている人はこのグラフの感覚しっくりくるでしょう? 最初はいいけど下がれば下がるほど儲からなくなる。ショートセラーは、ドンドン売り込んで0までならないと大きく儲けるのは難しい ということを知っているはずです。うーん、やはりこのグラフがもっとも世の中をよく記述していると思える。
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金額加重で言えば、レバレッジをかけたプレイヤーが主ですから、世の中の意見は、意識せざるとも、レバレッジをかけたDelta LongのGamma Short的な曲線に基づいて創生されます。一方、私は自分がGamma Longであると”知っている”ので、y=0.5x+0.5で損をしているにもかかわらず、下げを歓迎しているのです。私が最も恐れるシナリオ、つまり、私が負けて、働かなければならないシナリオがどういうシナリオかわかりますか?
下げは怖くないです。下がったらドンドン買えば良い、自分の購買力はキャッシュポジションの分だけ相対優位になるからです。一般に給料も下がりますから、給与所得ゼロでもそれほど差が広がりません。一方、20年で株価が10倍、というような長期上昇相場。実際には、1980年~2000年のアメリカみたいなことがあると、相当厳しいです。一度は暴落、1987年のブラックマンデーがあったわけですが、20年で下げ1回で株価10倍だと、私にとっては、とても厳しいことが予想されます。2000年以降はラッキーなことに14年間で2回、もっというと8年で2回も谷があったのです。株価が上がったり下がったりするのがハイ・ボラティリティーで、一定の率で下がることなく上がり続けるとボラティリティは0です。インベスターの皆さんはハッピーでしょうが、私も損はしないものの、ガンマトレードによる収益が0となり、みんなは10倍、俺は2倍、物価は3~5倍で大負けすることになるのです。S&P500が8000ポイント、日経平均が80000円の世界です。多分、私はコンサバな人間なので、5000ポイント超えたら就職活動ですねw
すいません、誰も理解できないような下手な説明で・・・。ここまで読んでくださった読者の方、ありがとうございました。
俺が天才すぎて、ここまで読めたやつは10人に1人も居ないと思うが、読んだものの、正直、感覚的に理解できないという諸君は、俺話超長いけど今度飲もうw 
【みんなが嫌いな数式シリーズ】
2012.02.01 ギリシャのデフォルト確率って言うけどどう計算するの?
2011.09.01: %Gammaとは何か?
2010.08.13: 遠心力対万有引力 北極で測る体重と赤道直下で測る体重
2010.07.23: 数学を使わないオプション解説 GammaとVegaは何が違うの?
2010.06.04: ルーレットと大小(Big or Small)の最適戦略
2009.09.29: Black-Scholesは間違っている 
2009.08.12: Double Barrier 複雑なるもの 
2009.06.16: VAR SWAPのGamma+VanillaのGammaでGamma Neutralになるか? 
2008.12.15: 年末ジャンボ ~富くじにおける分散の値段 
2008.12.04: CBとCall Option+Bondの違い for Beginner 
2008.10.31: Craps@MGM 
2008.08.08: Geylang Street Gambleの期待値 
2008.04.25: 1yのATMオプション、Volatility30%ならいくら?70%なら? 
2008.01.24: 恐るべしJump DiffusionとVAR-SWAP 
2007.12.10: 金利0、配当0(0Drift) ATM Call のDELTAは50%? 50%超? 50%未満?