アメリカのS&P500が史上最高値を更新しながらも非常に落ち着いた動きをしていることに対し、日本市場のバタバタとした落ち着きの無さに、いささかの嫌悪感を覚える。私の言う株式市場の質、つまり下品な株式市場とは、客観的な言葉を使って言い換えるならば、Volatilityが高い市場を指す
日経平均のウェイトに大きな偏りがあり、ユニクロ指数と化しているという指摘もあろう。日経平均という指数は確かに問題がある負の遺産であることは私も否定しない。日経平均は極めてクラシカルな単純平均と想定額面という計算方法に問題があるのであって、それは日経新聞社のセンスの話だから、市場としての質や信頼性とは直接関係ない。但し、その指数を好んでみている市場参加者が多く、最もメジャーな指数というのは市場としての質が問われる! しかし、日経平均に問題があるならば日経平均だけが乱高下するべきであるが、TOPIXも似たような振る舞いを見せている。
3つの観点から、市場としての質や品について述べようと思うが、
1.アメリカ市場(S&P500)と比較した日本の株式指数の振る舞い


今年のはじめから、5月末(魔の5月23日大暴落を含む)でHistorical Volatilityを計算すると、日経平均27%、TOPIX25%、Jasdaq指数22%、ドル円13%、そしてアメリカ、S&P500は11%なのである。
Index(SP500vsJapan).jpg
指数の年初来リターンで見ると、5月22日時点で50%と、狂喜乱舞している日本の個人投資家たちの姿が目に浮かぶが、ドル建てで見るともう少し落ち着きを見せていて、それでも年初来リターン24~25%とS&P500を8~9%上回る”アベノミクス効果”が観測されていたわけだ。それが27日には、S&P500とほぼ同じ水準に戻っている。「政治と株価は直接は関係ない、あくまでも企業収益(=純利益)と株価が関係する。」、「アメリカが世界の中心であり、S&P500が上げているならば、日本の株価も上がるし、S&P500が大崩れすれば、日本の株価も下がる。」、というアベノミクスに否定的な私の立場が、ようやく実現した。After5月23日は、調子に乗っていた個人やアベノミクス論者が静かになっていて、少し気分が良い。わずか3営業日で消えたアベノミクス効果と言えるだろう。
それにしても世界第2位、第3位の規模である日本株式市場が、規模の小さな新興国・新興市場のような、あまりにもハイベータ(対S&P500)で振舞うのは、いただけない。株式市場としての風格が疑われてしまうような、動き(Volatility)である。
2.値上がり・値下がり率ランキングの上位銘柄
これはもともと、低位株(1カイ2ヤリ系)が常連の下品なランキングではあるのだが、最近はマザーズ・ジャスダック銘柄オンパレードで、マザーズ・ジャスダックで時価総額が大きめの会社も入ってきている。また、売買代金ランキングにおいても、名前を口にするのも恥ずかしいような個人投資家銘柄が、流動性を伴って入ってきている。要は、ガンホー、ユーグレナ、コロプラ、オークファンなどの新興企業であるが、時価総額と流動性という観点だけで言うならば、これらの銘柄を煙たがるという”古き固定観念”は捨てなければならない。純利益もある程度伴っていてPERも異様に高いわけではない場合もあるので、やはり私が古い固定観念に取り付かれていてなかなか捨てきれない性質なのか、どうしても買う気が起こらない。
新興企業が名を連ねているのはまだしも、かなり気まぐれというか、いいかげんなノリとも思える、超短期の循環物色が、目障りである。安倍首相の発言を受けて、TPP関連、農業支援と言ったから「農業関連株」といって翌日買われ、値上がり率ランキングに登場したかと思えば、後日、値下がり率ランキングに再度登場という落ち着きの無い値動きが、”目障り”なのである。個人投資家が売買代金の7割を占める市場なので、”ノリ”で反応するのは理解できなくもないが、市場の品位に関わる問題で、ある程度の時価総額と流動性を伴っているので、プロ・機関投資家諸君らも無視せず、しっかりとしたバリュエーションがなされるよう積極的に市場参加して欲しいところである。
3.投資部門別売買動向
先ほども少し言及したが、東証1部以外の市場は、国内個人投資家の存在感が極めて大きい市場である。流動性に問題がある銘柄が多いので、機関投資家には取り難いリスクではあると思う。値上がり・値下がり率ランキングの上位にマザーズ・ジャスダック銘柄が並び、その乱高下を引き起こしている犯人は個人投資家と言っていいだろう。しかし、東証1部においても、TOPIXや日経平均の乱高下は、海外ヘッジファンドではなく、個人投資家によって引き起こされていると言えるであろう。当然のことながら外国人投資家は引き続き東証1部のトップの売買主体であるが、2012年の委託のシェア(自己のシェア18%)は法人10%、個人20%、海外68%、証券2%である。ところが5月中旬の委託のシェア(自己12%)は、法人7%、個人35%、海外55%、証券3%となっている。売買代金も昨年1年間の平均1兆円+程度から5月中旬は平均4兆円と膨れ上がっているのが、いずれにしてもシェアは個人が倍増していて、この相場を主導していたと言えるであろう。
5月23日以降の投資部門別売買動向はまだ見れないが、あの下落相場において、証券自己部門が”権威” (w) を取り戻していると期待したい。私が「お下品極まりない株式市場」と表現した相場展開の主要因は個人投資家にあろう。売買代金の急増で、暴れる個人投資家を抑えるのが大変だった、証券自己・機関投資家諸君らの事情もわからなくも無いが、市場の品位を保つことは、我々プロの義務であり、個人投資家にその責はない。秩序ある市場形成(あえて効率的市場とか低ボラティリティの安定した市場という言葉は使わないが)は機関投資家の義務であり、その自覚と自負を持って取引・商品企画に望んでもらいたい。
23日以降、少しは静かになっただろうが、マザーズ・ジャスダックの主要銘柄見てる限り、個人投資家まだまだ元気で、お下品相場は続きそうだな。(5/28記)
6/4現在、大分静かになってきたな。おしおしwww
【市場概観】
2013.03.01 貿易収支の見方
2013.01.04 世界の株式市場・指数2012年
2012.09.07 金融崩壊 昭和経済恐慌からのメッセージ 1/4~1910年大戦景気
2011.01.25|政治と株価 総理就任期間と株価の相対パフォーマンス
2010.09.21: 株メール Q8.レバレッジの効用と弊害
2010.05.12: 中国株先物が取引が開始
2010.03.30: 日経平均配当指数 そもそも日経平均が変な指数
2009.12.14: HとAどっち?
2008.10.15: 製造業至上主義的産業構造分析
2008.07.17: 車業界勢力図
2008.06.19: 原油先物の取引高
2008.01.14: またも出た 異なる時価総額ランキング
2007.12.29: 時価総額の計算方法
2007.12.21: 小型株は一部割安感有り
2007.11.30: 中国株はチキンレース