バートン・マルキールを読めば、インデックス投資の魅力については理解したと思うが、私がインデックス投資をしない理由は、つまらないというだけではない。それを説明しようとした文章を書いているので、余裕資金をインデックスにぶち込もうとする気持ち、ちょっと待ってね。
>いやいや、今のところインデックス投資をするつもりはないのでご心配なく。
>エキゾさんが昔おれにそれらの商品は詐欺に近いからやめとけーって忠告してくれたので、それからはまったく見てません。
あー、あれは日経平均連動”ワラント”。日経平均連動が詐欺なのではなく、”ワラントが詐欺”なので誤解ないように。
SPYDERやETFは健全な商品なのでご推奨銘柄。
一方、ワラントは、買っちゃいけない3商品に入っているくらい醜悪

富くじ、ワラント、ダイヤモンド。
インデックス投資=パッシブ運用は、バートン・マルキールの言うように信託報酬やノーロード(初回手数料無料)というコスト面で最強の投資ツールで、特にETFは、時価の透明性という意味でもリアルタイムで、株と同じ感覚で取引できる。そしてスパイダー(SPY US、S&P500の上場投信)の運用規模は世界最大で、かかるコスト・トラッキングエラー(インデックスの動きとの乖離)も極小にまで抑えられ、流動性(売買代金・Ask/Bid Spread)も十分で、Arbitrageが効いているので、リアルタイムの取引においても現物・先物と乖離することがない。
ではその盤石の体制であるインデックス投資に私が投資しない理由は何か? インデックスと全く同じパフォーマンスなので、みんなと同じなので面白くないというのもあるが、投資したくない理由がもう一つある。
時代の流れとともに発生する企業の興隆、新しい産業の台頭、そして消えてなくなっていく産業もある中、企業の寿命というのは永遠ではない。そうするとインデックス、例えばS&P500ならアメリカでもっとも勢いのある会社500社をS&P社が独断と偏見で選ぶというプロセスが介在し、そのBest500をメインテナンスする、銘柄入替というイベントが不可避である。この銘柄入替というのがインデックス=パッシブ運用の隠れたコストになっており、かつまたそれを利用して儲けた経験があったりすると、インデックス投資に積極的になれないのである。
インデックスの銘柄入替というイベントにおいて、インデックスファンドの行動はどうなるであろうか?
インデックスを作っている会社、例えばS&P、ダウ・ジョーンズ、日経新聞社が構成銘柄の変更を発表。
そしてETFの運用会社、バンガードや野村アセットマネジメントが、計算開始日にその会社の株を買います。
身近な例として日経平均と日経新聞社の関係を具体的に見てみましょう。
日経平均の30銘柄の大入れ替えの発表があったのは、2000年4月15日(土)午後3時のことです。
週明けの17日(月)から21日(金)までの5営業日を告知期間として、21日の終値を基準に入れ替えを行う。
15日に発表して、インデックス組入れ=計算開始日=21日です。21日になったら新規採用銘柄を買ってくるヤツがいる。そして除外銘柄を売ってくるヤツがいるということを知ったら、みんなは何をしますかね?
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17日と21日合わせて10%くらい指数が下がってますね。
17日に除外される銘柄を先んじて売り、新規に採用される銘柄を先んじて買ったのです。新規に採用される銘柄は17日に上がったと思いますが日経平均にはまだ採用されていないので、日経平均は大きく値を下げるということになります。
新規採用銘柄は買占めを行い、不当に値段をつり上げます。21日からはチキンレース。21日引けにはインデックスファンドが買ってきて、その後の特需はありません。でもとにかく21日にインデックスファンドに高値掴みをさせ、誰よりも早く売り抜ければ勝ち。
インデックスファンドは、みんなに先回りされて売買しても、インデックスには完璧に連動しています。彼らの仕事は連動することであって、儲けることではない。そこに目をつけてカモりにいくのが我々プロの仕事です。
昔聞いてきたね。「俺みたいな素人がカモなんですか?」と。違う。プロこそがカモなんだ。これはその一例。
ちなみに日経平均というのは株価の単純平均で計算するもっともクラシカルなインデックスで、その後、時価総額加重、時価総額加重+浮動株比率考慮と商品開発が進み、このような銘柄入替による株価操作がしにくくなっています。日経平均もこれにこりて30銘柄同時入替とかアホなことはやらなくなっていますし、S&PやTOPIXに関しては、このような株価操作による影響は非常に軽微(0.1%未満)なものとなっています。(但し0ではない)
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