日本取引所の独占者利益はあるか?

FIAに参加し、取引所と話す時間を取ってもらったのだが、今このタイミングでの、私の関心事は取引所のVolumeや新商品の話ではない。東証と大証の経営統合により、独占者利益が発生するかどうかである。先日調べてわかったように、NYSEを差し置いて香港取引所(ちなみに取引量はNYSEの1/10)が世界一の時価総額をほこることの意味は何か?取引所の時価総額=取引所の利益は、市場規模と取引量には関係なく、独占の度合いで決まる。独占に関与する民間企業は特別に、NTT法、JT法、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律、電気事業法などのシバリを受けている。しかし、証券取引法はあるが、”証券取引所法”なる法律はぐぐっても出てこない有様である。であるから、現在は、公正取引委員会の下で東証・大証統合案を押し進めているようだ。
東証が株式の90%以上のシェアを持ち、事実上の独占状態が放置されている中、今更何を・・・という話ではあるが、今までは、東証の株主が証券会社であり、東証の客でもあったわけで、公の機関としての立場であったわけであるが、仮に私が50%以上の議決権を取ったならば、東証の時価総額はおそらく1兆円は越える(現在3000億円)ことになるだろう。
ここで、東証の磐石な体制を改めて見つめてみよう。上場審査、取引、デリバティブ、クリアリング、この全てにおいてほぼ100%のシェアを持つことになる。クリアリングは日本証券クリアリング機構(JSCC)という別会社だが、
http://www.jscc.co.jp/kaisya/gaiyou.html
によれば
発行済株式の総数 42,543株
 うちA種類株式 33,543株
   B種類株式  9,000株
総株主の議決権の数 42,543個
株主(持株比率)
●A種類株式
・(株)東京証券取引所グループ (87.7%)
・(株)大阪証券取引所 (11.5%)
・(株)名古屋証券取引所 (0.6%)
・証券会員制法人 福岡証券取引所 (0.04%)
・証券会員制法人 札幌証券取引所 (0.04%)
●B種類株式
・(株)東京証券取引所グループ (100.0%)
東証が事実上90%、大証が10%というほぼ100%日本取引所の持分と言えるのである。いわゆる製造・物流・販売までの一貫体制で独占が発生している。海外の取引所との競争? そんなもんは意識しなくて良い。会計基準から会社法まで日本とは違うところで上場するとなると大変な手間である。ファッションでNY上場してしまった日本の会社は、えらく苦労し無駄な費用を使っているはずだ。それに日本株は日本人によって愛されている。株のローカル性を考えれば、海外の取引所との競争など、取引所は憂慮する必要は全く無い。
むしろ敵は国内にある。PTS(Proprietary Trading System:私設取引所)の台頭で取引がそちらに逃げることの方が確率が高いだろう。しかし、SBI証券がSOR(smart order routing:最良執行)などでがんばっているものの、ほとんど存在感はない。実は、PTSは、数%のシェア(これは実はすごいこと)まで急速に伸びているのだが、その背景には、JSCCがPTS取引も清算対象にしたことが市場拡大のきっかけであり、クリアリングまで含めて強い信頼を勝ち得ているPTSは日本には存在しないということを証明している。
JASDAQで取引されているが、時価総額ベースでは世界最大の香港はおろかSGXよりも安い水準である。これだけの強い独占状態のポテンシャルを持っている大証株=日本取引所株は、割安か?
ここまで扇動的に書いておきながら、私の答えは否である。(ちょっと怒った??)
事業会社(存続して上場するならば上場会社)としての利潤の追求は当たり前なのであるが、日本の土壌・世論はそれを認めていないというのが非常に大きな弊害になると踏んでいる。理由としてくだらないと思うかもしれないが、これは日本の最大の”カントリーリスク”として私は見ている。
例えば、取引時間の変更、11月に午前中の取引時間が30分延長され、11:30まで取引できるようになった。しかし、いわゆるグローバルスタンダードでは取引時間は連続的で、昼休みがある市場は、香港と中国(上海・シンセン)の2つしかない。大証の先物は昼休みもなくし、取引時間も延長し、24時間取引に近づいてきている。どうせ変更するならば一気に一場制に移行するのが経営効率を考慮した経営判断であるはずなのだが、廃止論者と抵抗勢力の間を取り、とりあえず、ちょっと変えてみる。多数決の論理でパタンと返すということはせず、和をもって尊しとするという1000年以上に上る日本人の歴史が合理性の追求を阻んでいる。全会一致、みんなの言うことを聞こうとするという世論が東証の経営にも影響してしまう一例なのである。
【胴元・市場創生者】
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