知「デリバティブって全然わからないのですが、デリバティブってそもそも何なんですか?」
株屋に勤める知り合い(26)が私に問うた。
貴様・・・株はわかったとでも言いたげだな・・・小僧・・・。デリバティブだと? 10年早いわ。ボケが。
という言葉を飲み込みながらこう答えた。
俺「デリバティブは何かという問に対する答えを私は持っていますが、その答えは話す人の知識レベル
 によって変わるものです
。ですから、ご専門であられる株についてお伺いしたいのですが、株とは何か?
 を私に説明していただけますか?」
知「企業が株を発行して、株を売ることでお金を・・・
俺「話の途中ですいません。株とは何かという説明の中で、株という言葉を使うべきではないと思います。
  もう一度お願いできますか?」
知「・・・。株とは、企業に資金を調達するためのものです。」
ピキピキピキ。
貴様・・・発言の一つ一つが、俺のいびりたい精神を向上させるぞ。豊子風に表現するなれば
自らの仕事にプライドと疑問を持たない者の軽薄さが、喋れば喋るほど露わになる』 だ。
俺「セカンダリーに従事する人間として、その説明はふさわしくないと思います。
 私の言葉で言わせて頂くならば、
株とは企業のオーナーシップ、株式の売買は、議決権の争奪戦です!
ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・
【一般読者のための解説】
知:株のセールス(26)。
 ちょうどわかった気になってくる年頃なので、叩きがいは無いが、最も叩く所が目に付く年齢でもある。
セカンダリー:(株の)売買・流通市場。
 一般にエクイティセールスもしくはトレーダーという類の職種は、委託(顧客勘定の売買)であろうが、自己
 (バランスシートを使う売買)であろうが、全てセカンダリーの範疇になる。
 対義語として、色々な部署名・職種・呼び方があるが、株の発行に関する仕事をプライマリーと呼ばれる。
ピキピキピキ:サディズムの芽生え
 株は通常、取引所で売買するが、1000円で10万株を買ったとしたら、その購入金額の1億円は、企業に
 渡るわけではなく、旧株主に渡るだけである。つまり、取引所取引の際の資金シフトは株主同士間で起こる
 だけであり、株の発行企業に対し、何の資金シフトも起こさない。
 
 改めて断っておくが、株とは企業の資金調達の手段であるという答えは、何ら間違っていない。資金調達こそ
 が株の発生起源であり、社会的大義名分であることは全く否定するつもりは無い。
  しかし、セカンダリーに従事する人間が、株の資金調達に焦点を当てているとは何事か。
 株が企業の資金調達であるというならば、自らの仕事=セカンダリー業務は株の本義・本質的な部分とは関
 係ない仕事だと思っているかのような発言に聞こえる。 一体何を見て、毎日仕事をしているのか甚だ疑問だ。
 教科書でも読んでるかのごとくの言葉に、私は何の重みも感じない。そのような発言をする者のキャリアは、
 文字と数値のみで株を理解した気になっている素人の感覚と何ら変わらないということを示唆している。
【セクショナリズム全開系関連記事】
2009.09.22: 休日出勤は株屋としての誇り
2009.09.08: 俺の嫉妬心
2009.05.12: FX Optionの 25Deltaって?
2009.03.18: 歯磨き粉の買い物と債券Arbitrage
2009.03.04: オタク適正テスト
2009.01.15: 株投資家から見たインフレ連動債TIPS
2008.01.31: ガンマ無き者はデリバティブに非ず
2007.12.17: 債券市場参加者の世界観 ~ 儲け=売値ー買値では無い