バミューダン・オプションにおける最適行使判断を行うプロセスについてBinomial Treeを用いて解説していこう。最適行使判断とは
行使することで得られるイントリンシック・バリュー=S-X
行使しない=継続価値=タイム・バリューも含めたオプション価値
のどちらが大きいか判断して行使するかしないか決めることである。アメリカン・オプションの早期行使 において既に述べたことではあるのだが、配当がある株式の場合、オプション保有していても得ることができない配当のため、配当落ちによって継続価値が下がる。十分にインザマネーでタイムバリューがかなり小さい状態だと、行使して配当受給権を得た方が得という場合が、行使するケースに相当する。
ある時刻τにおける株価がわかっていれば、イントリンシック・バリューはMax(S(τ)-X,0)で即座に求まる。それともう一つ、最適行使判断に必要なのは、ある時刻τにある株価S(τ)だった時のオプションの継続価値、オプション・バリューが必要で、数式で書くとMax(Max(S(τ)-X,0),Max(S(T)-X,0)=Max(イントリンシック・バリュー,オプション・バリュー)=Max(行使価値、継続価値)で、行使価格>継続価格であれば行使し、行使価格<継続価格であれば行使しないというだけのことなのである。
この考え方はデリバティブだけでなく、広範囲に応用でき、世に聞くリアル・オプションはこのバリュエーションで行動するという考えである。その他にも、私がよく言っている買い物には、直接費用+維持費用があるというのも、ここからヒントを得た考え方であり、このリアル・オプションの行使 or Not、つまり、買うの?買わないの? を判断するわけであるが、いわゆる消費活動、小売店では行使されることは皆無である。多少後ろ向きな話ではあるが、Min(慰謝料,婚姻維持費用)の最適行使をすると、今度は逆に多くの場合、即行使して慰謝料を払う方が賢明であることが多い。私も、もう少し経験を積んで、その前の段階で、Max(奥さん、愛人)=Max(結婚、うやむや)が最適行使されていれば、大きな問題にはならないのであるが・・・。
Binomialでバミューダンをバリュエーションする時、満期における最適行使判断はヨーロピアンと全く同じである。もう一点の時刻τでの行使判断をバリュエーションに加える必要がある。まず、時刻τでの株価の状態を考えよう。ここでは面倒なので現在t=0からτまでをm回均等分割、そしてτから満期Tまでも同様にk回均等分割するとしよう。よって、途中τ時点でm+1個の株価が発生しており、満期T時点ではm+k+1個の株価が発生しているはずである。
Bermudan-Optimal-Exercise.jpg
満期T時点でのm+k+1個の状態は、途中τ時点で通過するm+1個の全ての株価から派生している。逆にいえば、m+k+1個の状態さえ作っておけば、τ時点でのm+1個の状態から満期までの全ての状態を網羅しているので、図中の緑の三角形は、τ上のm+1個の起点どこからでも引くことができる。τを過ぎた時点で、途中の権利行使時点はないので、ヨーロピアンになる。すなわち、図中のk+1個の将来時点の株価と確率を使えば、τ時点でのヨーロピアンの価値=オプション・バリュー=継続価値の計算ができる
満期の時点の株価をもって、その前の状態τでの最適行使判断をして・・・という時間軸を満期から遡って現在価値に戻していく方法をバックワード・インダクションと呼ぶ。満期時点の株価の分布を使って計算された継続価値とτ時点でのイントリンシック・バリューを比較して大きい方を選択する。その後は、τ時点での各株価における確率が求まっているので、同様に期待値計算をすればバミューダンの価値が求まる。
なんてことを、インドネシアのキャバ嬢とSMSしながら書いてしまう俺に酔ってしまうな。
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