メリウェザーの試みは、ふたつの好環境に恵まれなければ、間違いなく失敗に終わっていた。
裁定機会がたっぷりあった。デリバティブなど新しい市場では特にそうだ。教授たちはこれを機会といわず、”非効率性”と言
った。1980年代初め、デリバティブの一種で比較的新しい商品だったスワップのスプレッドは、2%だった。最終的には
0.25ポイントまで下がった。こういう取引をウォール街ではどこでもやっていて、次第に慎重姿勢を強めてきたコーツ率いる
ソロモン米国債部門もその点変わりは無かった。違いはメリウェザーのアービトラージ部門がこれを桁違いの金額で実行した
ことだった。
もう一つの好環境は、教授連中を社内の政治力学から守り、トレーディング資本を調達してくる保護者がいたことだ。教授
連中は、ひと口に言って、場違いもいいところだった。ヒリブランドは、アル・ゴア副大統領が学者になったところを想像させた。
人付き合いが下手で、ごく簡単と思える質問にすら、味も素っ気も無い専門的な、ただし数学的には正確な、答えを返した。
アービトラージとは別の部門のトレーダーがやってきて、ある一組の証券の取引について質問をぶつけた。ヒリブランドは、学生
に個別指導でもする調子で、こう答えた。「しかし、その価格水準は、きわめて醜悪だね」
トレーディング・フロアでやりとりされる野卑な冗談に慣れている目の前の男は、こう返した。
「わたしもちょうど同じように考えてたんですよ。醜悪だってね!」
お財布の規模が世界の富の50%を超えていたら、このスプレッド取引は、どんなに拡大しても怖くないだろうなぁ。
>ごく簡単と思える質問にすら、味も素っ気も無い専門的な、ただし数学的には正確な、答え
ヒリブランド君。君の気持ち、よくわかるよ。ある男が挨拶代わりに俺にこう問うた。
「シンガポール人と、香港人、どっちが可愛い?」
「あんた・・・インデックス的統計が取れるほどの女性を知っているというのか? 残念ながら俺はそこまでもてないし時間も無い
からあくまで自分が知っている極小数のサンプルから導かれる個別的な案件について主観的に語ることしかできない。」
ある女が、調子を合わせたのか、気を使ったのか、俺にこう問うた。
「どんな食べ物が好き?」
その時、幸運にもメリウェザーに相当する俺の上司が、俺を助けて、こう言った。
「そういうシンプルな質問は彼には難しい。このデリバティブはいくらの価値なのか? どんなリスクを持ち、どのようにヘッジする
のか? と聞けば、誰よりもすばやく答えるだろう。」
メリウェザーは彼らが力を発揮できるよう、安全で隔離された場所を用意した。アービトラージ部門を謹んで別世界に仕立
てたのだ。グループがグループで過ごす時間の中心には、ギャンブルがあった。アービトラージャーたちは週末のゴルフの勝敗
をめぐって手の込んだトトカルチョを組んだ。馬にも賭けたし、よく連れ立ってアトランティック・シティーまで日帰りのカジノ・ツ
アーにも出かけた。選挙の結果にも賭けた。オッズへの情熱をそそられるものであれば何でも賭ける。スポーツの話題にの
ぼるとすれば、論じているのは試合の内容ではなくスプレッド
だった。
良いなァ・・・。俺なんか、なんとか”トトカルチョ”ってタイトルでメール送ったら、「会社のメールでそういった内容の話は止めて
下さい」って上司に怒られた
ことあるよ。それ以来、たかがマージャンの誘いですら、”中国文化研究会のお誘い”になった。
FXというか紙幣のMMもメールでやって怒られたなぁ・・・。「あんまり大々的にやってもらっちゃ困るよ。個別にやってくれ。」って。
にしても、長慶マンションより狭いスプレッドでどう儲けるか? うーん、そりゃ企業秘密だよ。
有効期限付昼飯バウチャー券のMarket Makeしているヤツが居たなぁ・・・債券フロアだったが・・・
Physical Settleで基本DiscountなMarket。Delta OneなのにTime Valueがあって、
有効期限が近づいてくるとドーッと下がるわけ。
俺はそこにオプションを導入してMarket MakeとArbitrageしたかったんだが、周りがついて来れなかった・・・。
どうしてか? それを象徴するのが、飲み会でのイベント 100円じゃんけんだった。大体50~100人くらいの参加者かな。
全員立って、一人100円持って、隣の人とじゃんけんする。勝った人に100円上げて、負けたら座る。
最後、一人になるまでそれを続けて、勝った人が5000円から10000円を手にできるというシンプルな仕組みだ。
そこで、敗者復活戦があり、1000円で優勝者と対戦できるというありえない設定だ。
手をあげたのは俺一人・・・、実際には他にも数人いたのだが事前に仕込んであるサクラで、実態は俺一人だったそうな。
株のトレーディングフロアの飲み会だよな!!
1000円失って5000円もらえるという期待正のアービトラージ機会を狙って、参加者全員が一斉に手をあげ、また同じ
ことが繰り返されるのが、常識じゃないか??

しかし、常識と思っているのは俺だけだったようで、そういう連中は精々、バウチャー券の先物でもやってくれや。
【楽しいオフィス】
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2010.06.21: 上司に恵まれている男
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2009.07.09: お昼休みの一時 ~Pietrasanta
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2009.03.31: 新社会人の平均家賃額
2009.03.06: 電話におけるSpell確認方法
2008.08.28: Elevator Algorithm
2008.07.31: 体感時間 時差と経度
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