P102 新株予約権付社債の理論価格
株価がゼロに近づくと、社債価値もゼロに落ちていく様子が、グラフで描かれています。
おっと、先生らしくないな。教科書的に書くなら、株価がゼロ=社債価値がゼロではないだろう。
ただ、CBを出している会社は総じて資金繰りに苦しんでいて、金利すら払えないからCBを発行しているわけで、
デフォルト時にはCBの価値はゼロというのは結果的には正しいと思う。ただ資本構造的に、CBは株より優先な
ので社債価値はゼロ以上ということに含みを持たせるのが教科書的であり、キャピタルストラクチャーアーブに
つながる書き方でもある。
P113 CBのアセットスワップ
これ・・・飛躍しすぎじゃねーか? 素人向けだろ? この本・・・、絶対関係ない世界のような気が・・・。
主たるデリバティブプレーヤーの一つである富裕層が、主に取引しているのは信用管理が不要な仕組債であり、
OTCでオプション売買することすら、かなり稀だと思うぞ・・・。アセットスワップなんかやるかね?
クレジットスプレッドは社債発行体の通常のクレジットスプレッドより少し高い水準になる理由としてコーラブル性を説明
しているが、CBは劣後だからってのもあるな。
P132 優先株
タイトルは面白い優先株とすべきだろう。優先株やCBは実に多彩で、優先株とはこのようなものであると規定することは
できない
。呼び名のバリエーションも多く、非常に難しいが、大きく分けて
1. Risk Reversal型(Call Buy) 仮称Participating Equity Preferred Stock (PEPS)
2. Put Short型、Preference Equity Redemption Cumulative Stock (PERCS)
3. 永久債型 Perpetual Bond 償還期限と株式強制転換条項の無い債券型で”再建”を目指す。
の三種類がある。
この本に記述があるのは、1のPEPS型である。
PEPS型、あるいはPut Short型優先株に内包されるPut売り、ガンマショートが株式市場に与えるインパクトというのが確
かに面白い部分ではあるのだが。
CB(新株予約権付社債)と優先株は似ていて違うということに対する補足的な説明を加えると、優先株は資本性を持って
いることが規制で求められる
ことが多いため、債務性の象徴である返済の義務が無いのが望ましい。よって株式への強
制転換や償還期限が無い永久債型を有していることが多いのがCBとの根本的な違い
である。また単なる資金繰りニー
ズの場合は、Debtで調達しようが、Equityで調達しようがどちらでも同じだが、自己資本規制がある金融業界は、自己資
本に組み入れられる資本調達の必要に迫られ優先株を発行する傾向が強いことも付け加えておくべきだろう。
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