シャープ「液晶敗戦の教訓」 1/3~すり合わせ不要のモジュール化

ものづくりには、個別企業の経営戦略、経営者の経営判断とともに、その国の経済を形成する各種産業の比重や仕組や関係、つまり「産業構造」の変化が大きく影響する。産業構造からみた、日本のものづくりの強みは、よく言われているように「すり合わせ」にある。すり合わせとは、企業間でお互いに技術を共有して相手の状況を読みながら微調整を繰り返す方法だ。日本企業は、このすり合わせにより、高度・高品質な技術を取り込んだ製品を市場に次々に投入して、事業を拡大してきた。そして、それによって、数多くの成功体験が蓄積された。
ところが、このやり方が時代に合わなくなった。本書中で詳しく述べるが、「すり合わせ」をしなくても完成品がつくれる「モジュール化」の時代が到来したのに、日本の電機産業はその対応に遅れてしまった。国内ですり合わせをやりすぎて国内市場に過剰適応してしまった結果、ものづくりが「ガラパゴス化」してしまった。「良い製品を作れば売れる」という時代は終わった。技術をとことん追求し、それを過度に崇拝するだけでは、グローバル競争に勝てない。結果的に、日本市場だけを相手にして、グローバル市場を目指す韓国、台湾、中国などの企業に勝てなくなってしまった。つまり、一言で言うと、「急速な産業構造の変化に日本企業は対応できなかった」ということが、日本の「ものづくり崩壊」の原因である。
モジュール化により日本勢の優位は崩れた
米国グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」と、スマホの基本機能を満たす1個の半導体、液晶パネルを組み合わせれば、スマートフォンはできあがる。アンドロイドはグーグルによって主に携帯情報端末向けに開発されたOSである。ライセンスフリーといって、だれでも自由に使用できる。このためアンドロイド搭載機種は、2014年、世界シェアの85%に達して圧倒的な勝利を収め、いまや世界標準となっている。基幹部品のような一つのまとまりを、経営学では「モジュール」と呼んでいる。こうしたモジュールを組み合わせれば、スマホなどの機器は誰でも生産できる。いま世界のものづくりはモジュール化へと大きく変化した。
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そこで多くの人が疑問を抱くのは、「シャオミのスマホは安かろう悪かろうではないのか?」ということだ。しかし、そうではない。優秀なエンジニアたちが、深い技術知識を基に、自ら必要な最先端部品を調達している。シャオミは、アップル、サムスンより規模が小さいため、部品量も少なくてよく、小回りが利き最先端部品を調達できている。また驚くべきことに、主要部品をすべて公開している。顧客に情報公開することにより、最先端部品を使用していることをわかってもらい、顧客に安心感と他社より価格が安いことをアピールしている。サムスンと同等の仕様でサムスンの半値という、コストパフォーマンスの高さを誇っている。古い体質の企業は、こうした情報を企業秘密として扱うので、シャオミのやり方についていけない。


日本の技術の原点は「模倣」にある
技術流出は必ず起きる。そのためには、常に一歩先の技術を開発しなければならない。これは、大変なことである。ただし、一歩先の技術と言っても、まったくのオリジナルである必要はない。日本企業は絶えず「他がまねる技術」を開発してきたのではない。「他がまねる」前に自らも「他をまねる」ことをしてきたのである。つまり、多くの日本の技術は「模倣」しながら発展してきている。例えば、国産テレビ量産第一号を発売したのはシャープである。早川徳次社長(当時)は、研究部長らを伴って、米国のRCA(ラジオコーポレーション・オブ・アメリカ)を訪問し、1952年に技術援助契約を締結した。早川一行は、その後約2か月にわたって全米各地を巡り、テレビ市場をはじめ、有力メーカーなどを視察した。機械設備を最大限に利用した、効率的なテレビの量産を目の当たりにした早川一行は、清算に必要な最新鋭の機械や研究計器類を大量に購入し帰国の途についた。
独自技術でテレビの試作には成功したが、それを量産するには量産するための特許が必要だった。ところが、特許の使用を許可するライセンス契約は、技術指導を含んでいない。特許許諾だけであっても、量産はできないのである。そのため、早川氏らは生産に必要な機械や研究計器類を大量に購入したのだ。そして、これを参考に「他をまねた」のである。「独創」(オリジナル)と「特許」(ライセンス)と「まね」(コピー)の組み合わせである。これが、日本の技術の原点、ものづくりの原点である。
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